家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈

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(13)目が覚めると

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 目が覚めると、見知らぬ場所にいた。
 一瞬、頭が混乱する。でも眠っている間は落ち着いていたはずだ。だから、全くの見知らぬ場所ではないはず。

 そう考えて、ここがギーズの家であることを思い出した。
 そして今横になっているのは、ギーズのベッド。
 シーツは洗っていると言っていたけど、何となく落ち着くのはギーズの匂いがわずかに残っているからかもしれない。

 僕は起き上がった。
 窓の鎧戸は閉めたままだけど、隙間からほのかな明るさが入って来ていて、部屋の中は薄暗い程度。
 まぶしい太陽の光ではないから、まだ日の出の前か、日が昇ってまもない頃だろう。

 貴族としては、起床には早すぎる時間だ。
 でも僕は身支度を自分ですることが多いから、明るくなる頃には目覚めることが多い。今日もいつも通りに早く目が覚めたようだ。

 ベッドのそばにはまだ椅子があるけど、そこには誰もいない。ベッドから降りて座面や背もたれに触ってみてもひんやりと冷え切っている。
 昨夜、僕が寝入るまではここにギーズがいてくれた。
 いつからいなくなったんだろう。
 がらんとした部屋が急に寒々しく感じ、僕は腕をそっと擦ってみた。

 今、僕が着ているのはギーズのシャツだ。
 ベッドに入る時は寝間着か裸が普通だ。だから裸になろうとしたら、このシャツを無言で押し付けられた。
 でも、洗いざらした布は肌触りがいい。
 肉の薄い僕がギーズのシャツを羽織ると、ゆったりとしたガウンのように見えなくもない。
 足も腿まで隠れるし、なかなか快適だった。
 でも、日中もこのままというわけにはいかない。と言っても着替えの服なんてないから、昨日の服を……とテーブルを見て、僕は目を見開いた。

「……これを着ていい、のかな」

 テーブルの上にあるのは、ギーズの服だろう。
 でもこちらは新しい。
 厚手のシャツは仕立て上がってそのままの状態だ。ズボンはどちらかといえば室内用の柔らかい素材で、裾に紐がついている。革製のベルトも余計なシワが入っていないから、一度も使っていないと思う。
 全てが大きい。でもシャツはチュニックのようにも見えるし、袖や裾は折ったり紐を絞ったりベルトをぎゅっと閉めたりすれば調整が効く。

 とりあえず、それっぽく着て鏡を見てみる。
 子供の仮装のようになったかと思ったけど、それほどおかしくはなかった。書物で見たロム地方の民族衣装のようだ。
 ゆったりとしているのは悪くない。
 それに、温かい。

 一緒に置いてあった肩掛けは女物だったけど、恋人用にしては渋い色合いだから、たぶんリザ用に用意していたんだと思う。
 リザは昔から渋好みで、ギーズは母親に優しいんだ。
 全て着ると、体が暖かくなったこともあって、気分も上がった。
 よし。
 気合も入ったところで、部屋から出ることにした。



 居間にも誰もいなかった。
 でも、テーブルの上に紙袋があって、手紙もあった。
 少し硬くて癖の強い文字だ。

 紙袋の中にあるのが朝食と昼食で、ギーズはもう仕事に向かったらしい。
 袋の中を覗き込むと、パンに味付けした細切れの肉を挟んだものが入っている。りんごもある。
 手に取ると、挟んでいる肉はほんのりと暖かかった。
 どうやら朝一番に買ってきてくれたもののようだ。

「……あれ? もしかしてギーズは朝までこの家にいてくれたのかな?」

 寝入ったら兵舎に戻ると言っていたのに。
 僕が一人で眠るのが苦手と知っているから、家の中にはいてくれたようだ。
 でも、どこで寝たんだろう。
 居間を見回すと、ソファーの上に雑に畳んだ外套があった。
 どうやら、ここで休ませてしまったらしい。

 眠るまでいてくれと無理を言って、着替えを用意してもらって、食事を買って着てもらって、ここまでしてもらっているのにソファーで眠らせてしまったなんて。
 やっぱり申し訳ないことをした。ギーズは騎士なのに。ゆっくり休めただろうか。
 早速、ギーズに迷惑をかけてしまった僕は、少し落ち込んだ。


 と、その時。
 外がなんだか騒がしくなった。

 まだ朝の時間だから。ギーズではないだろう。
 声は二人分。どちらも男性のようだ。
 どうやら玄関へと向かっているようだ。やがて玄関扉に鍵を差し込む音がして、当たり前のように扉が開いた。

「いや、本当にすみません。ロベルト殿まで荷物を運んでもらって」

「構わん。どうせ帰宅途中だ。クロン君一人に任せるのも不安だからちょうどいい」

「えっ、不安ですか? まあ俺も不安なんですけどね。なぜ俺がわざわざ指名されたんでしょうか。確かに俺は夜勤明けでこれから休みですが……え?」

 入ってきたのは、若い男だった。
 年頃は僕より少し上くらいか。すらっとしているのによく見るとがっちりしていて、昨日のギーズと同じ制服を着ていた。
 彼も黒狼騎士団の騎士なのだろう。
 誰もいないと思っていたようで、廊下に立っている僕と目が合うと、ぴたりと足を止めてしまった。
 もう一人、こちらは私服の男性がいて……でもじっくり観察する前に、どさり、と若い騎士の手から袋が落ちた。

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