異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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幕開け

第19話

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 キスとは、一方的な感情で強行されては、勘違いや誤解をまねく行為こういである。

 ハイロと土を耕していた亮介は、ミュオンから口唇をふさがれ、生まれて初めて男とキスをした。しかも長い。あまりにも予想外の展開につき、声をあげることさえできなかった。ミュオンにとっては、精気の回復に必要な結果だとしても、ハイロやキールとちがい、背中の羽さえなければ、人間と変わらない姿をしているため、気恥ずかしさがまさった亮介は、相手の顔を直視できず、とっさに俯向うつむいた。

「やい、リョースケとミュオン。さっき、キスしてただろ。遠くから見えたぞ!」

 湧水を汲んでもどったキールは、なんの遠慮もなしに言及げんきゅうしてくる。

「精霊って、人間が好きなのか?」

『リョウスケくんは、とくべつです』

「リョースケの気持ちは、どうなんだ……って、な、なんだおまえ! 誰だ!?」

 科白せりふの途中で、キールは威嚇モードに変わった。さらに、「いつからそこにいた!?」と、不審者に向かって叫ぶ。ミュオンとのキスで思考が停止中だった亮介は、状況判断に遅れた。のろのろと顔をあげた視線の先に、ツンツン頭の番長が立っている。

「ハ……、ハイロさん……?」

 夢でみた、体格のよい男が全裸で佇んでいた。本人にあせるようすはなく、洗濯して干してあったニッシュのタオルを腰に巻きつけると、手首や指の関節をパキッと鳴らした。

「ハイロだって? おいおい、どっからどう見ても、こいつは人間の男じゃないか。油断するなよ。やい、そこのおまえ、いつ、森に侵入した!?」

 今にも飛びかかりそうな勢いのイタチだが、野生の特徴に気づいてハッと目を見張った。

「な、なんだ、このにおい、、、……。これ、ハイロのおっさんと同じだぞ!? どうなってんだ? さっきからおっさんの姿も見えないし……、そこの人間は、いったい何者だ?」

 頭が混乱するキールに向かって、男は「大熊オオクマだ」と名乗った。その低い声を耳にした亮介は、目の前の人物は、やはりハイロだと直感した。

「キール、半獣属は人間の姿になれたりするの?」

「ばか、そんなわけあるか。半獣は半獣のままだ。人間になんか、なりたくもないしな」

「でも、あのひとはハイロさんだ」

「においを真似して、おいらたちを安心させる手かもしれない。見るからに強面こわもてだし、なにをたくらんでいるか、まだわからないぞ」

 イタチは警戒心が強い。人型になったハイロとの間に立って亮介を守ろうとしたが、『コホンッ』とミュオンが咳払せきばらいをして、険悪な雰囲気を打開した。

『キールよ、おちつきなさい。そこにいる人間は、まちがいなく大熊です。彼は、わたしが霊力を放出したさい、偶然近くにいました。よって、細胞が活性化し、先祖がえりを遂げたのでしょう』

「先祖がえり? 意味わかンねーよ。ハイロのおっさんは、このまま人間として生きていくってこと?」

『それは、わたしにも不明です。ひとまず、本人へ確認してみましょうか』

 ミュオンは大熊を見据え、『ご感想は?』とく。筋肉質な腕や、たくましい胸板、鍛えたような胴まわりなど、細身のミュオンとはまるで異なる肉体に、いちいち目が留まる精霊は、わざとらしく顔をしかめ、不機嫌をあらわにした。どんなときも冷静に対処するハイロは、「それほど悪くない」と、いつもの無表情で答える。

『では、まずは着るものを用意しなければなりませんね。そのようないかめしい、、、、、姿で、リョウスケくんのそばをうろつかれては、品性に欠けます』

(すごい。夢でみたとおりのハイロさんが、目の前にいる!!)
 

★つづく
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