異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

文字の大きさ
79 / 171
第5部

第79話

しおりを挟む

 かつて、半獣属の血を引く人間とのあいだに子をもうけた精霊が、この森に存在した。人間とも半獣ともちがう、不完全な精霊の子が誕生したことになるが、新たな個体の生活ぶりや、成長後の行方を知るものは、ひとりもいなかった。森の記憶は、重要な部分が消えている。まるで、誰かが意図して断片を抜きとったかのように、真相を語るものは、長らくあらわれていない。


 うす暗い閉鎖林を北に進むハイロとノネコを、背後から見つめる影があった。鼻がく半獣属に気取られない理由は、影の存在が、人外の精霊だからである。地面まで届く長い髪は黒色で、うす茶色の肌をしていた。翡翠石のように輝く瞳に映りこむハイロの姿は、人型ではなく、2本足で歩く灰色大熊だった。その精霊は、先祖がえりした半獣属と出逢ったことはない。だが、そのまなざしは真実を見透かす力があった。

『……好いたる者が在りながら、あれほど健康的な肉体を持て余すとは、つまらんな。いっそのこと、われが、あいつの理性をこわしてやろうか』

 黒髪の人外は、四大元素霊の根源より派生した、地の形態素である。ミュオンとは異なる精気の集合体につき、見た目のあでやかさが大胆(全裸)かつ、快楽を産出する行為をしとみなす傾向にあった。人型の半獣属に興味を引かれた地の精霊グランドの〈ジェミャ〉は、自らの雄性器官に指をからめると、腰をふるわせて微笑した。精霊の多くは受け身であり、相手が性的欲望を満たすさまをたのしみながら、ゆるゆると精力を奪う。一気に吸い取らず、飽きるまで生かすことで、精霊側にも退屈せずにがれる利点があった。


『クククッ、ああ、いいぞ。わが身も興奮してきた。……あの灰色大熊は、われがもてあそんでやろう』


 ハイロの雄々しい肉体に目をつけたジェミャは、性行為の邪魔となるノネコを排除するため、精気を放出して地割れを起こした。


「な、なんだい、地震!?」


 突然、地面はバキバキッと音を立て、ハイロとノネコの足もとに亀裂が走った。数十センチほどの深さだが、とっさに後方へ飛び跳ねたノネコは、砂煙のせいでハイロの姿を見失ってしまう。


「こ、これは、自然現象ではないな。わたしとハイロさんを、引き離すことが目的だ!」


 さきほどまでと異なる、ヒリヒリとした空気が流れてくる。的確に状況を見極めたノネコは、ハイロの身を案じた。


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...