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第6部
第100話
しおりを挟む亮介の住んでいた世界に、クローン技術というものがある。男女両性の関与なしに子孫を生みだす方法で、容姿や能力、特定の表現形質を意図的に作りだすことができるが、生まれてくる個体が安全に成長する保証はない。
(どんなにミュオンさんそっくりでも、僕は、今のミュオンさんが消えるなんて、絶対にいやだ!)
泣いてる場合ではない。亮介は涙を指でふりはらい、「コリスくん、どこ?」と、周囲を見まわした。
「出ておいで、丸太小屋に帰るよ!」
近くの木陰から、ひょこっと顔をだしたコリスは「えへへ~」と、申しわけなさそうに笑った。ジェミャとのやりとりを、こっそり見ていたようだ。亮介的には説明する手間が省けたので、コリスが肩へ飛び乗ると、ジェミャをふり向いて「行こう!」と声をかけた。
ハイロのためではなく、自分のために。ミュオンとの別れを阻止する必要がある。
『具体的には?』
「それはまだ考え中! でも、ミュオンさんに消えてほしくないから、早くなんとかしなくちゃ!」
ジェミャは亮介の思考を見透かしたような発言をしてくるが、いちいち抗議するほど、不快ではなかった。むしろ、頭のなかにあることばを勝手に拾ってもらえて、大助かりである。自分でも気がつかないうちに、足は走りだしていた。さらに、ジェミャに誘導されるかたちで、自己浄化をした川の上流へ到着した。
「あ、あれ? なんで? 丸太小屋に向かってたのに……」
『あ~、やっぱり~。ぼくも変だと思ってたよ~』
亮介とコリスは、ジェミャの魂胆を察して、うなずいた。
「禊をすれば、いいんだね!」
現在、ジェミャと協力関係にある亮介は、無意味な真似はしないはずだと思い、正しい判断をした。ジェミャはなにも答えず、先に水浴びをはじめた。亮介も衣服を脱ぎ、コリスを手のひらに乗せると浅瀬で自己浄化に集中した。たくさん走り、からだは汗で汚れていた。しっかり洗い流し、焦る気持ちをおちつかせると、ぬれた羽を乾かすため、低空飛行していたジェミャが、『フゥッ』と息を吐きかけてきた。一度目と同じように、それは強い風となって亮介の全身を吹き抜けていく。
「わっ、からだが乾いてる!」
ひと息で水滴を吹き飛ばしてもらい、川辺で衣服を着こむと、背後でバシャバシャ音がした。同時に、コリスが「ぎゃーっ」と悲鳴をあげる。
対岸より、いつぞやのクマとキツネが迫ってきた。
★つづく
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