異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第7部

第124話

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「引っ越すか」

「それがいいかもな。ミュオンのやつ、だいぶ気分が滅入ってるみたいだし、場所が変われば、少しは楽になるかもよ」

 ハイロとキールの会話に、亮介とコリスもうなずいて「そうしよう!」と声をあげた。

「ここは住みやすくて大切な場所だけど、クマさんとキツネさんがまたミュオンさんを襲うかもしれないし、今のうちに安全なところに移ったほうが、いいと思う」

「うんうん、ぼくもリョースケくんの意見に賛成~。あのきれいな精霊さんが、いつ赤ちゃんを産むかわからないままだし、動けるうちに引っ越したほうがいいよ~」

 朝、庭の畑に集まって今後の話をしていると、森から帰ってきたノネコが合流した。

「おや、みなさん。そろってなんのお話ですか」

「ハイロのおっさんが、引っ越そうってさ」

 歩み寄ってたずねるノネコに、キールが答える。「ほう」と相槌を返すノネコは、ちらッと亮介を見て、すぐに視線をハイロへ変えた。

「ハイロさんは、どこかほかに、いい場所を知っているのかい?」

「ああ。山の向こうに人間が建てたと思われる小屋を見つけた。だいぶ朽ちているが、手直しをすれば暮らせるだろう」

「おいおい、ハイロのおっさん、正気かよ。山の向こうは肉食獣がうろつく範囲だぞ。そんなところに、リョースケや小動物コリスを連れていこうってのか?」

 予想外の提案に、ぎょっとなるキールだが、亮介は「それ、いいかも」と即座に同意した。

「は? なんでだよ。やい、リョースケ、肉食獣は危険なんだぞ。おまえなんか、骨も残さず食われちまうぞ」

「でも、ハイロさんもいるし、肉食獣さんたちだって、話せばわかってくれるかもよ。ほら、精霊のミュオンさんもいっしょだから、めずらしがって、逆に警戒されないかも……」

「あのなぁ、ミュオンは今、ほぼ無力なんだぞ。ハイロのおっさんだって人型だし、群れで襲われたら、こっちが不利だろーが」

 キールは呆れ顔をしてみせるが、ハイロが「それならば問題ない」といって、おもむろに深呼吸をすると、亮介たちの目の前で灰色大熊の姿にもどって見せた。長らく忘れていたが、ハイロは体長2メートルほどの肉食獣で、[森の王獣]の血統である。

「う、うわ、すごい迫力……」

 改めて、野生動物としての灰色大熊を近くで見た亮介は、いくらか腰が引けた。それにしても、なぜ自由自在に半獣の姿にもどることができるのか、亮介は首をかしげた。

「ハイロさん、いつからその姿になれたの?」

「わからん。数日前、突然もどれるようになっていた。正直、おれも驚いている」

「それって、もしかして、ミュオンさんの力が弱まってることと、関係あるのかな……」

 亮介はそう言いながら、丸太小屋のほうへ視線を向けた。現在、ミュオンの腹部は誰がみてもわかるていどに、膨らみ始めていた。しかし、精霊は人間とも半獣とも異なる性質をもつため、産月うみづきを予測することは不可能である。ゆえに、ミュオンは安静第一とし、のんびり過ごしていたが、見るたびに顔色が青ざめており、亮介たちは具合を心配していた。

「ノネコさんは、どう思う?」と、亮介は賢者に意見を求めた。ノネコは「そうだねえ」と小さくつぶやくと、キールやコリスの顔を順番に見据えた。

「わたしの考えは、参考にしないほうがいいかもしれないね。どうあっても、リョウスケくんの未来を、過去の事例となぞらえてしまうからさ」

 ノネコは、いつもなにかを言いよどむため、歯がゆく感じた。いつか、すべてを打ち明けてくれるはずだと仲間を信じ、今は受け流しておく。

「それじゃあ、引っ越し決定。みんなで新しい家をつくろう!」

 亮介は、明るい声で宣言した。
 

★つづく
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