異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第8部

第149話

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 午後になり、ミュオンのようすを見にきたハイロは、思わず、ぎょっとした。溜池に裸身で浮かぶ水の精霊は、まぶたを閉じていたが、近づく足音と気配を感じ取っていた。

「ミュオン」

 一瞬、死んでいるのではないかと疑ったハイロは、バシャッと水のなかに足を踏みこんだが、ミュオンはすぐに起きあがり、ハイロと正面から向きあった。

『心配無用です。……ほら、わたしのおなか、ずいぶん大きくなったでしょう。あと何日かすれば、この子、、、に逢えますよ』

「……具合は」

『問題ありません。ときどき、頭がクラクラするくらいです』

「そうか。なにか変化があれば呼べよ。ぜったいに、ひとりで産もうとするな。かならず、おれを呼んでくれ」

『承知しました。……あなたには、リョウスケくんからいただいた大事な名前がありますからね。……いざ、そのときになれば、呼んでさしあげましょう。ですから、どうか、わたしの子を頼みましたよ、あなた、、、

 そういって微笑ほほえむミュオンは、ハイロを見つめているようで、どこか遠くに意識を向けていた。ハイロは衣服が濡れるのもかまわずミュオンに接近すると、細い腰を引き寄せた。

「……おまえさんこそ、おれの知らぬ間に消えるなよ。生まれてくる子どもを、いっしょに育てよう」

『……そうですね。できればわたしも、そうしたいのですが、すっかり霊力が薄れているため、残された時間は、そう長くはないかも知れません』

「ならば受けとれ」

 ハイロはミュオンの口唇くちびるを塞ぎ、自分のなかに残留する精気を口移しで流しこんだ。互いに咽喉のどが灼けるように息苦しくなり、口づけたまま溜池の底へ沈んでゆく。ミュオンは水中でも呼吸できたが、ハイロは異なる。心臓が破れそうなほど痛みを感じたが、それでも、ミュオンとの口づけを続行した。ハイロの強引な接吻に驚いたミュオンは、その意図を察し、浮上した。

『あ、あなたという半獣ひとは、なんて愚かな真似を……!』

「なんとでも……言え……、おまえさんを失うわけには……いかん……」

『黙りなさい。戯言たわごとなら、呼吸がおちついてから聞きます』

 体力のないミュオンだが、必死にハイロの腕を引いて草地まで運ぶと、からだに張りつく衣服のまえをひらき、呼吸を楽にさせた。気力が弱まったハイロは、半獣属(灰色大熊)の姿にもどってしまった。水の精霊と共に生きる未来を望むハイロだが、ミュオンにとって分化は避けられない現実だった。

『わたしだって、リョウスケくんや子どもを残して、消えたくはありません……。ですが、わたしは精霊なのです。自然界にりつづけるために、すべての記憶を捨てなければなりません。……あなたと愛しあった時間を忘れることで、ふたたび形づくることはできます。ですから、もう、わたしの気持ちに期待しないでください。次に生まれてくる水の精霊ミューオンは、まったく別の個体となるのです……』

 ミュオンは、灰色大熊の大きな口に接吻をした。どれほど惹かれあって求めに応じたところで、ふたりの関係は永遠に変わらない。かならず、別離という運命に悩まされた。過去にとらわれて涙するほど、現状を悲観してはいないミュオンだが、人型のハイロを見ていると切なくなった。

『これでいいのです。あなたは、ムッツリ大熊の姿にもどってください。人間のふりをする必要などありません。これまでのように、自由に生きてください……』

 ハイロの呼吸を見まもるミュオンは、急激な腹痛に襲われ、その場にうずくまった。ハイロとつながった開口部の内側が収縮し、ドロッとした体液が勢いよく飛びだしてきた。


★つづく
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