拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多

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呪い

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「代わりに、この呪いを受ければ、私に関しては話そうとしても言葉が出なくなり、紙にも書けなくなる」

 自分の存在を明かされたくないブロンにも、王家や公爵家にとっても、こんなに安全な呪いはないだろう。
 それでも一週間様子を見るのは……。

(事情を知る使用人を使って、人間性を見るため?)

 なんらかの方法で、情報を外に伝えようとする人はいるはずだ。お金に釣られたり、家族の情に負けたり、色々考えられる。

 さてどちらがいいだろう。
 考えていると、シルヴェストが言った。

「怖いならやめてもいい。過去には、この呪いを受けたはいいものの、外の人間と会うのが嫌になってひきこもった人間も多いと聞いている」

(……この人は、私を心配してくれているのかしら)

 ただ妻が欲しいだけなら、引きこもっていても問題ないはずだ。
 むしろすぐにでも、言ったり書いたりして秘密を漏らすことのない妻が必要だろうに。

(でも、それならいいかもしれない)

 心配してくれる人なら、そうしていい気がした。何か困ったことがあっても、話せば配慮してくれるかもしれない。
 だからエミリアは言った。

「手っ取り早く、呪いつきのほうでお願いします」

「ほぅ、いいのか?」

 確認されて、エミリアはうなずいた。

「……こんなに即決した人間は珍しいな。恐ろしくはないのか?」

「はい。貧乏でずっと田舎に引っ込んで暮らしていたので、私を知っている貴族令嬢はほとんどいません。髪の色が変わっても、弁解する必要がありそうなのは両親ぐらいです。それに、自分でもうっかり言ってしまうのが一番怖いですから。恩を返したいのに、秘密を明かして仇となるのは嫌なので」

 エミリアの理由に、ブロンはニヤッと笑う。

「よし。そこまで言うのならいいだろう」

 そうしてブロンが、ふわふわとした毛の生えた手の指を鳴らした。

 パチン。

 エミリアの周囲が、暖かい空気に包まれる。
 それがすぅっと手や口へ吸い込まれるような錯覚を感じた後、ふいになくなる。

「どうだ。私のことをしゃべってみろ」

 ブロンに言われて、エミリアは言おうとする。

「ブロン様は……」

 魔物です、と言おうとして声が出なくなる。

「これが、魔法ですか」

「そうだ。髪の色も見事に変わったな」

 いわれて髪を一筋手繰り寄せてみれば、ピンクブロンドと言っていい色になった髪が見えた。
 確かにすごく変わってしまった。少しだけ、目立つ色のような気がして、それだけが少し不安だ。目立つのは好きではないから。

 そしてシルヴェストが、ものすごく目を見開いていた。こんなに変わるとは思わなかったのかもしれない。
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