拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多

文字の大きさ
10 / 12

上手くごまかしましょう

しおりを挟む
(無理をしてると思われたのかしら?)

 シルヴェストの望み通りにしても大丈夫だと伝えたのに、なぜシルヴェストは喜ばなかったのか。
 不思議に思いつつ、エミリアは久しぶりになる両親との再会に臨んだ。

 両親は応接室で待っていた。
 二人は茶や黒の地味ながらも、仕立てはしっかりとした衣服を着ていた。
 借金についてもシルヴェストが完済してくれたこともあり、元のつぎはぎをした衣服を着なくともよくなったようだ。

 シルヴェストはエミリアが呪いを受けてまで結婚を継続させようとしたことで、とても後ろめたくなったらしく、「これが代償になるかはわからないが……」と言って、そうしてくれたのだ。
 もちろんエミリアは嬉しかったし、両親が新たに誰かに借金をすることもなくなったこと、領地の再建についてめどをたてられることもあってほっとしたけれど、シルヴェストに悪いことをしたような気になったものだ。
 なにせエミリアは、それほど髪のことを気にしていなかったからだ。

 一方の両親は、公爵家に訪問するのに暗い色の衣服を着ていたので、やや結婚について大喜びしている感じではないようだ。結果的に娘を犠牲にしてしまったと感じているからだろうか。
 両親はエミリアの姿を見てほっとした表情をする。シルヴェストの死神公爵という話を耳にしていたせいかもしれない、とエミリアは思った。

 二人はまず、シルヴェストのほうに礼をつくした挨拶をした。

「この度は私共の娘を選んでくださっただけでなく、我が家を救済していただいたこと、改めてお礼申し上げます」

「いや、妻になる人がつつがなく過ごせるためにしたことなので、気にしないでほしい」

 シルヴェストがそう応じ、手で促されたので向かい合わせになったソファに全員が座る。
 そこで、ものすごく気になっていたのだろうことを、エミリアの父が訪ねた。

「それで、その……娘の髪は一体?」

 あきらかにおかしいエミリアの髪色の変化。言及せずにはいられなかったのだろう。
 シルヴェストは、エミリアに顔を向ける。
 どうするのかを観察したいのだろう。

(公爵夫人になるのなら、人前でもそれらしい対応ができるようになるべきだし、そういうのも含めて試験をしたいんでしょう)

 賢い判断、もしくは多少なりと機転が利く答えが出せることが望ましいはず。もし試験に合格できても公爵夫人としての受け答えに不安があれば、教師をつけるのか、なるべく交流はしなくても良い状態にするのだと思う。

 ただし、ブロンのことは口に出せないし、かかわりそうなことは質問された直後は声に出しにくい。
 そしてエミリアは、あらかじめ考えていた方法をとることにした。
 恥ずかしそうなふりをして、エミリアは口を開く。

「私、ロンザと結婚することになった時、一度だけ近くの貴族のパーティーに出席したでしょう? しかもロンザと同席で」

「え、ええ」

 母親が戸惑った声を出す。今どうしてあの時のことが関係あるのだろう? と思ったのだろう。
 でもこれは必要なのだ。

(なるべく別の話だ、と認識できる会話にしなくては)

 呪いは、そもそもエミリアの心に影響するものだ。だから別の話に一度変えることができれば、遠回しであれば言葉が出る。

「すぐに帰ってしまいましたけれど、商人に身売りしたはずの娘と、同一人物だと思われるのが嫌で……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

ロザリーの新婚生活

緑谷めい
恋愛
 主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。   アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。  このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。

処理中です...