マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴

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第一章

対価

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「…えっ?…えっ…?」


 一瞬で景色が変わったものだから非常に驚いてる天音の知り合いの女の子。


「こ、こういうのワープって言うんでしたかね?いえ、転移ですかね???」


 うん。最近見た光景だね。なんかデジャブを感じるよな。

「それ私もやったよ?」

「やったよじゃありませんよ天音先輩!?ウチは初めてこういう経験するんですからね!?」

 この子一人称は私って言ってなかったっけ?もしかして素はウチなのか…?

 まあ、いいか。それよりも…


「──まず君は誰かという事を聞いても?天音の後輩っていうのはなんとな~く話の流れで分かるんだけど…」

「う、ウチを知らないっ!?こ、コレでも結構頑張ってるんだけどなぁ…さ、最近は少しずつですけどメディア出演も雑誌の取材なんかも増えて人気も出てきている筈…なんですけど…」

 言葉が段々尻すぼみになり落ち込む天音の後輩。おおぅ…これってやっぱり彼女を知らない俺が悪いのか?それともそんな俺でも知ってる天音が凄いのか?どっちなんだい!?

 
「い、いえ…こ、これくらいの事でウチはへこたれる訳にはいきません!アイドルは根性なのです!」

 おおっ…思わず拍手したくなった。自分で自分を鼓舞して立ち直るとはな。やるな、天音の後輩。

「あ、改めまして…ウチ…いえ、私はホロホロスターズという五人組のアイドルユニットの一人、春日野優花かすがのゆうかといいます。《以後どうか宜しくお願いします》》!」


「これはご丁寧にどうも…」


「………」
「………」

 訪れるは暫しの静寂…

「──って、いやいや!?そこは自己紹介し返して下さいよぅ!?話が進まないじゃないですか!?」

「いや、さっきも言ったけどめんどいからいいかなぁって…」

「めんどいっ!?まためんどいって言いましたよこの人っ!?」

 いや、だってねぇ…どう考えても俺に何かして欲しい事があるとしか思えないしな…。


「──ったく、豊和ときたら…。それじゃあ彼女が言うように話が進まないでしょう?もう少しちゃんと話を聞いてあげなさいよ」

「す、救いの手を差し出してくれるとは…あ、あなた様は女神様かなにかですか!?」

 彼女には美樹子の言葉がそう聞こえたんだろう。

「め、女神なんて大げさよ。私はその馬鹿の幼馴染の爪先美樹子。宜しくね」

 美樹子は女神と言われて顔が綻んでいるし。

「宜しくお願いします!んっ…?爪先…?あ、あれ?…そのお顔…も、もしかして…あのモデルの爪先美樹子さんじゃあないですか!?」

「え、ええ」

「う、ウチ大ファンなんです!どうかサイン下さい!」

 
 ええと…俺は帰っていいかな?いいよな?彼女は美樹子に夢中だし…後は美樹子に任せて…

「──ちょっと!?あんたはどこに行くつもりよ?」

「…トイレ?」

「なんで疑問系なのよ…。絶対トイレじゃないでしょ?」


 くっ…そうは問屋が卸さないか…。


 まあ、天音にもさっき頼まれたし、その天音はというと成り行きを見守ってる感じだし、ザッと話だけは聞いてみるか。
 

 パチン! と、指を鳴らし俺と春日野さん以外の時間を止める。


「あれ?つ、爪先さん!?ど、どうしました!?あっ、天音先輩も全然反応がない!?」

「ああ~ 悪いけど俺と春日野さん以外の時間は止めさせてもらったよ」

「な、なるほど…それでお二人はこんな状態に…。助けていただいたあの時と同じというわけですね…」

「そういうこと…。で、春日野さんは俺に何か頼みたい事があるんだよね?だから記憶を消して欲しくなかったし、俺達についてきた…であってるかな?」

「…は、はい。その通りです」

「じゃあ一応聞こうか」

「…そ、その前に…ひ、一つだけ質問してもいいですか?」

「いいよ」

「つ、爪先さんとは幼馴染という事は先程聞いたので関係性は分かるんですが、天音先輩とはどういう関係なのでしょうか?」

「オーナーと借主だね。今俺達が居るこの場所は、俺が所有するマンションの屋上テラスなんだ。んで、このマンションの特別室の一室を借りてるのが天音というわけ。特別室について簡単に説明すると、そうだなぁ…年収の半分を対価に、契約している間は借主をどんな事からも護る部屋という認識でもしてくれたらいいかな」

「…どんな事からも護る…。だからあの時、借主である天音先輩の危機に駆けつけた…と、いうわけですか」

「うん、そうだよ」

 俺のその言葉に彼女の表情には焦りが見える。彼女は賢い。だから思考を懸命に働かせているんだろう。

 俺にして欲しい事をしてもらう為に。


「と、特別室はまだ開いてるんですか?」

「美樹子と天音以外借りてないから絶賛開いてるねぇ…」

 特別室は年収の半分だからなぁ…。余程の事がない限り借りる人はいないんじゃあないかな。自分で決めておいてなんだけど…。

「でしたら…まず特別室を一室借りたい…です」

「いいよ。さっきも言ったけど、その分かなりお高くなってるけどね。でも…それは俺に頼みたい事じゃないよね?」

「…は、母を…母の病気を治して欲しいんです」

 なるほどね…。お母さんが病気なわけか…。

「あ、あなたのその不思議な力なら…不治の病でも…な、治せますよね?」

「治せるね…」

「で、でしたら…母の病気を治して下さい!その分の対価は払います!ウチが対価としてなんでも支払いますので!」


 可愛い女の子のなんでもをいただいてしまったな…。そういう事を男に言っちゃあいけないんだけどな…。

 さて…どうするかな。俺は彼女に一つ聞きたい事があったので、聞いてみる事にした。





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