マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴

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第一章

記憶映しのスキル

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「優花、悪いんだけど前髪を上げて額を出してくれるか?」

「? こう…ですか?」

 俺の言葉に自身の額に掛かる前髪を手でかきあげて押さえてくれる優花。

「うん、そうそう。そのまま動かないでくれる?」

「はい」

 露わになったその額に俺の額をピトっとつける。アイツとコレをした時は向こうからこうしてくれたんだっけ…。

「ふぁっ!?」
「なっ!?」
「ちょっ!?」

 優花が驚くのはまだ分かるけど、なんで美樹子と天音まで驚いてるんだよ…?

「しぇ、しぇんぱい…その…いきなりなんて…でも…しぇんぱい…なら……んっ…」

 か細い声でそう呟き瞳を閉じる優花…。キスする訳じゃないからな!?しぇんぱいならってなんだよ!?いや、お互いの吐息が掛かる距離だから恥ずかしくて目を閉じてテンパってるだけか?そういえば俺もアイツとこうした時は変に焦ってしまったし、俺も思わず目を瞑ってしまったな…。

 おっと…そんな事よりも早く終わらせてやらないとな。それになにやら美樹子達からは言い様のない圧みたいなモノを感じる気がするしな…。


 ──ほいっとな!


 お互いの額が一瞬だけ眩い光を放った。



「──どうだ??」

 俺はそう言って優花から距離をとる。

「…確かに…分かります…けど…」

「…だろ?それなのになんで優花は不満そうなんだ?」

 優花はものすごく口を尖らせていて、いかにもそれが分かるようにアピールしている気がする…。

「別に…先輩の馬鹿っ…鈍感、たらし」

「俺…優花の通う学校をどうにかしてあげて、尚且つ勉強で困らないようにその辺の記憶も分け与えたのになんで悪口言われてるんだ…」

「それはあんたが馬鹿だからでしょっ!?今のする必要あったのかしら!?普通にあんたなら魔法で解決できるんじゃないの?」

「いや…まあ、できるけど…」

「できるんじゃないのっ!!!優花と額をこすり合わせて優花の吐息を吸い込んで、隙あらば唇が偶然触れてしまったとかしたかっただけなんでしょっ!?」

 どうしてそうなる!?

「そ、それは違うって…ほ、ほら、アイツの事をつい思い出したからこんなスキルあったなぁ…みたいな?」

「みたいな?じゃないわよ!?それなら私にもそのスキルとかいうやつでアイツの事を教えなさいよ!!」

「あっ…豊和君」

 おっ…まさか天音はもしかして助け舟を出してくれようとしてんのか?普段残念なトップエロアイドルとか思ってすまなかった。

「私にもそのスキル使って豊和君がアイツって呼ぶ人の事教えてくれないかな!スキルにも興味あるし!」

 あ、うん。そうだよな?天音はそんな感じだよな?ラノベ脳なら一番スキルに興味あるのは仕方ないわな…。

「せ、先輩!アイツって人の事は後にして、そんな事より早く学校に向かいましょうよ!」

 ナイス助け舟だ、優花!

「そ、そうだな?優花はいい事を──」
「──時間は止めてる…そうよね?」 

 何故美樹子は分かったしっ!?

「そうよね?」

 これは有無を言わせない表情…。幼馴染だから分かる…。これは断ったら面倒なやつだ…。

「…はい。止めてます」

「で、でも…」

 まだ助け舟を出そうしてくれる優花。そんな優花の背後からポンと優しく肩の上に手を乗せる怪しいの姿が視界に入ってきた。

 天音だ…。いつの間に優花の背後に回ったんだ…!?

 天音は優花の耳元で何かを囁いている…。

「ねぇ、優花ちゃん?美味しい思いの一人占めは駄目だよ?それになによりスキルってどんな感じなのか味わいたい私の気持ちも分かってくれるわよね?」

「は、はひぃ…」

「うんうん…分かってくれたんだね?じゃあどうするか分かっているよね♪」

「も、勿論です…あ、天音先輩…」


 顔色悪いけど大丈夫か、優花…?悪いがこっちまでそっちの会話は聞こえないんだよ。ホント何を言われたらあんなに顔が引き攣るんだ?


「と、豊和先輩!」

「うん?」

「私を含めたに、その…スキルでアイツって人の事を今すぐ教えて下さい!」

 

 三人って…お前もかぁぁっ、ブ◯ータス!?しかも記憶移しのスキルを使ってだと…?なんでアイツの事がそんなに気になるんだよ!?

 まあ、天音はまだ分かるんだ…。天音の予想ではアイツっていうのが異世界人と予想がついているからだろう。美樹子と優花に関しては全く分からない…。いや…異世界人だからこそ興味がもしかしてあるのか?かの有名な映画ロード・オブ・ザ・リ◯グにも色んな種族が出てきていたからなぁ。


 そんな事を内心思っていると、その当の本人達は美樹子と天音はなにやら優花に向かって抜け目ないわねとか言っているし、それに対して優花は優花で負けるわけにはいきませんのでとか意味不明な事を言ってるし…。

 ホント分からんな?


「さて…分かってるわね、豊和?」
「豊和君?」
「と、豊和先輩?」

「……まあ、いいよ」


 そして俺は一人ずつ記憶移しのスキルを使ってアイツの事を伝える事にした。まあ、言うまでもない事だが…一番恥ずかしがったのは美樹子だという事をここに記しておこう。一発頭突きかまされたからな…。


 そして…アイツこと、リーンの事を知った三人はというと──


「──ど、どう思う…二人とも?あのリーンって人」

「何言ってんの美樹子?リーンさんはエルフだよ?間違えないようにね?それにしてもエルフっていいよねぇ♪想像通りだったよ♪えへへっ…」

「…天音先輩は相変わらず異世界脳ですね…。ウチの意見は美樹子先輩と同じです。リーンさんは間違いなくウチ達と同じ気持ちを抱いていると思いますよ?」

「やっぱり?」

「はい」

「ねぇねぇ!エルフってやっぱりエロフなのかな?」

「知らないわよ!?」
「知りませんよ!?」



 ──なにやら三人集まってコソコソ話をしていた…。

 いつになったら学校へ行くのだろうか…?


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