わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜

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18 闇の中

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「闇の中でよく動く。しかしやはり本来の力は出しきれんようじゃな。ほれ、隙だらけじゃ。『ダーク•エクスプロージョン』」
「ぐぁああ!?」
「ぬぉおお!!」

 帰ろうと思ったら大剣がこっちに飛んできた。

「おいおい」

 回転して向かってくる剣の柄を掴んで止める。見れば剣士と魔術師が地面に倒れ伏していた。

「まったく。ここに置いとくぞ」

 床に剣を突き刺す。

「カラカラ。カラカラ。これで二人脱落、いや、勝負ありじゃな」
「そ、そんな!? 私の盾……じゃなくて、よくも二人を。許しません。出直してきますので、次会う時まで首を洗って待っておいて……きゃっ!?」

 闇の中で生まれた鎖が栗色の髪の女を縛り上げた。

「やぁああ!? なんですかこれ? 放してください! エッチ! 変態!」
「騒ぐでない。儂の興味を惹くような武具は持っておらんようだから、戦利品としてお主をもらうだけの話よ。良さそうな骨をしておるし、棚に並べるのが楽しみじゃ。いや、何なら我が主の献上品にしても良いかもしれんな」
「献上品! 絶対献上品の方がいいと思います」
「クリスティナ。何をバカなこと言ってますの」

 黒髪の女が闇の中、声を頼りにリッチへと切り掛かるが、ダメージのせいで動きが鈍く、こちらも鎖に囚われる。

「む? こっちの方がいい骨しておるな。主への献上品はこっちにするか」
「何言ってるんですか!? サーシャさんよりも私の方が主さんも絶対喜びますよ」
「くっ。放しなさいな! 離せ!!」

 黒髪の女は鎖を引きちぎろうと暴れるが、魔術で生み出された鎖は女の動きを完全に封じたままビクともしない。

「どれ、どちらが献上品に相応しいか調べてみるかの。順番が来るまでお主はその辺に転がっておれ」
「きゃ!?」

 何故さっきから俺の方に投げて来るんだ?

 疑問に思いつつもリッチに放られた女をキャッチする。俺の腕の中で栗色の髪の女が目を瞬いた。

「へ? え!? だ、誰ですか? 何故こんなところに」
「冒険者だ。ここには仕事できた」
「まさか貴方も行方不明者事件の解明を?」
「ん? いや、薬草採取だ」
「はい? え? 薬草?」
「薬草」
「……えっと、あれ? この声? すみません。私たちどこかで会ったことありませんか?」

 この女、ほんの数日前のことをもう忘れているのだろうか? ああいや、リッチの魔術のせいで俺の顔が見えていないのか。

「ああ。ギルドでーー」
「なっ!? 何をするんですの?」

 その大声が気になって見てみれば、鎖で手足を拘束された女がリッチに防具を破壊されるところだった。

「騒ぐでない。我が主は生娘を好む。お主がそうであるかを調べるだけよ」
「ふ、ふざけないでくださいまし! このサーシャ様にそんなことしてただで済むと思っているんですの? このエロ骸骨が」
「カラカラ。カラカラ。儂は骨にしか興味ない。だからお主が我が主に気に入られなければ、お主の骨は儂のものよ」
「ヒー!? こいつマジでド変態ですわ。クリスティナさん……はどうせ逃げますわよね。ゴラルドさん。助けてくださいまし! 私の命と貞操が大ピンチですわ」
「サーシャャさん。ああ、なんてことなの。薬草採取が目的ということは、貴方戦闘が苦手な方ですよね。ここは危険です。安全なところまで私が護衛しますので逃げましょう。さぁ。どこから入ってきたんですか。教えてください。早く。早く」

 栗色の髪の女がメッチャ俺の服を揺らしてくる。リッチが黒髪の女の服を脱がし始めた。

「アレはお前の仲間だろ。助けなくていいのか?」

 倒れてる男二人も結構重症だ。あのまま放っておいたら死ぬだろう。

「私の仲間は皆覚悟ができています。もちろん私もですが無関係の貴方を私たちのクエストに巻き込んで死なせては、死んでも死に切れません。そういうわけですから、ほら早く。出口はどこですか?」

 暗闇の中、女の血走った瞳が俺を睨みつけて来る。本当に見えてないのか問いたくなる眼力だ。

 俺はため息を一つついた。

「助けてやろうか?」
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