36 / 60
35 捕獲
しおりを挟む
「何ですの貴方達は?」
サーシャの質問を一顧だにせず、黒装束が飛びかかってくる。その手には短剣。
「気をつけろよ。毒が塗ってあるぞ」
「忠告するならせめて起きたらどうですの?」
サーシャは枕の下に潜ませていた短剣を足で掬って空中に浮かすと、抜刀と同時に黒装束の胸に突き刺した。そのままナイフを起点に投げを放つ。加害者と被害者の重みでベッドがギシギシと揺れた。
「貴方、一体何をやらかしたんですの?」
襲撃者の胸に突き刺さっている短剣が上下に激しく動く。すると男の体がビクンビクンと激しく震えて、やがて動かなくなった。
「狙いはお前かもしれないだろ」
「それは……まぁ、なくはないですけれど」
男に馬なりになっている女の無防備な背中に別の黒装束が迫るが、飛来したククリ刀がそんな男の頭部を切断する。
「はて、何処かで見たような連中でありますな」
吹き出す鮮血が白いシーツと女戦士の肢体を赤く染めた。
刃が歪曲した刀を持つラーミアの腕から上がる炎。あれが賊の首を飛ばす程の投擲速度を生み出したのだろう。
「なっ!? お、お前は?」
黒装束の一人が声を上げた。
「ん? 俺か?」
剣王国の将軍であるラーミアか剣聖とやらの弟子のサーシャなら分かるが、何で俺に反応するんだ?
とういうかこの黒装束、どこかで見た気がする。
「……ああ。お前ひょっとして馬車を襲ってた奴か?」
「貴様がグロウ? 撤退。撤退しろ」
黒装束の女が指示を出すと、生き残ってる残りの二人が窓の外へと飛び出した。女もそれに続こうとするがーー
「その女だけは捕らえろ」
「了解であります。てか、お前。あの時はよくも私を殺してくれやがりましたね」
「なんだかよくわからないけど、分かりましたわ」
怒りに燃えるラーミアとすっ裸のサーシャが同時に黒装束の女へと攻撃を仕掛けた。
「……仕方あるまい」
賊が素早く何かを取り出したーーので俺はそれを没収した。
「なっ!?」
「転移の魔術が込められた石……いや、これは呪術か。ということはお前魔女なのか」
黒装束の女は手の中にあったはずの脱出手段が失われていたことに大いに戸惑ったが、そんな心境でも二人の攻撃を紙一重で回避して見せた。だがその際に顔を隠していた布に剣先がかすめて素顔が顕になる。
褐色の肌に燃えるような深紅の瞳。そして特徴的な尖った耳。
「ダークエルフですの!?」
「これは珍しいでありますな」
「貴様、一体何者だ?」
黒装束の女が睨むのは向き合う二人ではなく俺。
「冒険者だ」
「ふざけるな。貴様のようーーがぁ!?」
メイドの振るったククリ刀がダークエルフの足を切り裂いた。咄嗟に避けなければ刀はダークエルフの足を切断していただろう。
「私を前によそ見とは余裕であるな」
自分を殺した相手なのだから当然かもしれないが、繰り出されるラーミアの攻撃にはどれも殺意が込められている。
「まったく後でちゃんと説明してくださいな」
サーシャ(素っ裸)がそんなラーミアの攻撃に続く。ダークエルフも地上レベルで見れば決して弱くはないが、人間の中では上位に位置する女達の連携に抵抗虚しく、ついには捕獲された。
サーシャの質問を一顧だにせず、黒装束が飛びかかってくる。その手には短剣。
「気をつけろよ。毒が塗ってあるぞ」
「忠告するならせめて起きたらどうですの?」
サーシャは枕の下に潜ませていた短剣を足で掬って空中に浮かすと、抜刀と同時に黒装束の胸に突き刺した。そのままナイフを起点に投げを放つ。加害者と被害者の重みでベッドがギシギシと揺れた。
「貴方、一体何をやらかしたんですの?」
襲撃者の胸に突き刺さっている短剣が上下に激しく動く。すると男の体がビクンビクンと激しく震えて、やがて動かなくなった。
「狙いはお前かもしれないだろ」
「それは……まぁ、なくはないですけれど」
男に馬なりになっている女の無防備な背中に別の黒装束が迫るが、飛来したククリ刀がそんな男の頭部を切断する。
「はて、何処かで見たような連中でありますな」
吹き出す鮮血が白いシーツと女戦士の肢体を赤く染めた。
刃が歪曲した刀を持つラーミアの腕から上がる炎。あれが賊の首を飛ばす程の投擲速度を生み出したのだろう。
「なっ!? お、お前は?」
黒装束の一人が声を上げた。
「ん? 俺か?」
剣王国の将軍であるラーミアか剣聖とやらの弟子のサーシャなら分かるが、何で俺に反応するんだ?
とういうかこの黒装束、どこかで見た気がする。
「……ああ。お前ひょっとして馬車を襲ってた奴か?」
「貴様がグロウ? 撤退。撤退しろ」
黒装束の女が指示を出すと、生き残ってる残りの二人が窓の外へと飛び出した。女もそれに続こうとするがーー
「その女だけは捕らえろ」
「了解であります。てか、お前。あの時はよくも私を殺してくれやがりましたね」
「なんだかよくわからないけど、分かりましたわ」
怒りに燃えるラーミアとすっ裸のサーシャが同時に黒装束の女へと攻撃を仕掛けた。
「……仕方あるまい」
賊が素早く何かを取り出したーーので俺はそれを没収した。
「なっ!?」
「転移の魔術が込められた石……いや、これは呪術か。ということはお前魔女なのか」
黒装束の女は手の中にあったはずの脱出手段が失われていたことに大いに戸惑ったが、そんな心境でも二人の攻撃を紙一重で回避して見せた。だがその際に顔を隠していた布に剣先がかすめて素顔が顕になる。
褐色の肌に燃えるような深紅の瞳。そして特徴的な尖った耳。
「ダークエルフですの!?」
「これは珍しいでありますな」
「貴様、一体何者だ?」
黒装束の女が睨むのは向き合う二人ではなく俺。
「冒険者だ」
「ふざけるな。貴様のようーーがぁ!?」
メイドの振るったククリ刀がダークエルフの足を切り裂いた。咄嗟に避けなければ刀はダークエルフの足を切断していただろう。
「私を前によそ見とは余裕であるな」
自分を殺した相手なのだから当然かもしれないが、繰り出されるラーミアの攻撃にはどれも殺意が込められている。
「まったく後でちゃんと説明してくださいな」
サーシャ(素っ裸)がそんなラーミアの攻撃に続く。ダークエルフも地上レベルで見れば決して弱くはないが、人間の中では上位に位置する女達の連携に抵抗虚しく、ついには捕獲された。
0
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる