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第33話 いつもにはもう戻れないんだから
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ビカン先生は知らないことをたくさん、知ってる。
何も分からなくて、霧の中にいるみたいだった。
段々と景色が見えてきた気がするのだ。
頭がよくて、勉強が出来るロビーとユリアンが先生の話についていけてるみたい。
あたしはあまり、理解出来た気がしない。
叔母様。
お兄様。
ベティ。
夢の中に出てこなかった彼らがいることで何かが変わってしまったのかしら?
話が白熱して、いつの間にか、お昼になっていた。
ビックリしたのはあの先生が、ランチを出してくれたことだろう。
それも手作りの!
「何を驚いた顔をしている? 私もご飯くらい食べるさ」と真顔で言ってたけど、随分と手慣れた手つきで用意したのだ。
干し肉と葉野菜をパンで挟んでフラスコに入った謎のソースをかけた簡単な物だったけれど、味は美味しかった。
謎のソースがずっと机の上にあった気がするんだけど、気にしたら、いけないのかもしれない。
結局、日が落ちるまであたし達の話し合いは続いた。
あたしとユリアンの夢の話の擦り合わせをして、おかしなところがないのかを検証するだけでも中々に大変だった。
ユリアンも夢で見たことが未来の出来事と信じてたらしい。
そうならないようにと考えた末にロビーとあたしが必要以上に親しくならないのが最善という結論に辿り着いた。
それでロビーはあたしと距離を置こうとして、ああいう態度や言動を取ったのだ。
ロビーにも何か、言いたくない事情があるのか、いつも朗らかな表情を絶やさない彼にしては珍しく、難しい顔をしてた。
そうとは分かってもあたしの心が受けた傷は浅くない。
あたしのことを考えて、心配して、ああいう行動をしていたんですね!
なんて、簡単に飲み込めるほど、あたしは大人でもない。
先生はユリアンにまだ、聞きたいことがあるということでユリアン一人を残して、ロビーと帰ることにした。
サーラがこれまで発現していなかった癒しの力を見せたことで色々と聞きたいらしい。
癒しの力は珍しいから、魔法に詳しい先生としてはアドバイスしたいことがたくさん、あるんだろう。
ロビーとカブリオレに乗ってると複雑な気分だ。
話し合いで知ってしまった真実で頭の中がこんがらがった毛糸のようになってる。
ロビーのことはずっと、好きだった。
身近にいる頼りになるお兄様でかっこよくて、優しくて、憧れの存在だったから。
でも、夢でこの好きは報われない好きだと気付いてしまった。
だから、諦めた。
それなのに夢は啓示だったと言われても訳が分かんない。
ロビーのことは嫌いじゃない。
でも、好きかと言われると分かんなくなっちゃった。
「僕も自分がやれることをやるよ」
「え?」
ロビーが呟くように不意に声を上げた。
力がない声なのに彼の決意が込められてるように感じられたのはなぜだろう。
「だから、もうちょっとだけ、待っていてくれないかな」
「ん? 何の話なの、ロビー」
「何だろうね。僕とエミーだけの秘密だよ」
そう言うと少し、悲しそうな顔をして薄っすらと笑みを浮かべたロビーは手綱を握ることに集中する。
ホントに何の話なんだろう。
待ってるとか、秘密とか。
「あれ? おかしいな。これは一雨くるかもしれない」
「珍しいね」
「そうだね」
そこから、サーラが待ってるポボルスキー邸に着くまで会話はなかった。
互いに口を開いてはいけないような不思議な空気があったから。
あたしが無駄に元気を振りまいて、話しかければ、いつもと同じに戻れたのかもしれない。
でも、そうしちゃいけない気がした。
だって、それではいつまで経ってもロビーは優しいお兄様で王子様で終わってしまう。
いつもにはもう戻れないんだから。
あたしもロビーも……。
いつもはきれいに見えてた夕焼けの空を黒い雲が覆っていた。
今夜は嵐が来るのかもしれない。
何も分からなくて、霧の中にいるみたいだった。
段々と景色が見えてきた気がするのだ。
頭がよくて、勉強が出来るロビーとユリアンが先生の話についていけてるみたい。
あたしはあまり、理解出来た気がしない。
叔母様。
お兄様。
ベティ。
夢の中に出てこなかった彼らがいることで何かが変わってしまったのかしら?
話が白熱して、いつの間にか、お昼になっていた。
ビックリしたのはあの先生が、ランチを出してくれたことだろう。
それも手作りの!
「何を驚いた顔をしている? 私もご飯くらい食べるさ」と真顔で言ってたけど、随分と手慣れた手つきで用意したのだ。
干し肉と葉野菜をパンで挟んでフラスコに入った謎のソースをかけた簡単な物だったけれど、味は美味しかった。
謎のソースがずっと机の上にあった気がするんだけど、気にしたら、いけないのかもしれない。
結局、日が落ちるまであたし達の話し合いは続いた。
あたしとユリアンの夢の話の擦り合わせをして、おかしなところがないのかを検証するだけでも中々に大変だった。
ユリアンも夢で見たことが未来の出来事と信じてたらしい。
そうならないようにと考えた末にロビーとあたしが必要以上に親しくならないのが最善という結論に辿り着いた。
それでロビーはあたしと距離を置こうとして、ああいう態度や言動を取ったのだ。
ロビーにも何か、言いたくない事情があるのか、いつも朗らかな表情を絶やさない彼にしては珍しく、難しい顔をしてた。
そうとは分かってもあたしの心が受けた傷は浅くない。
あたしのことを考えて、心配して、ああいう行動をしていたんですね!
なんて、簡単に飲み込めるほど、あたしは大人でもない。
先生はユリアンにまだ、聞きたいことがあるということでユリアン一人を残して、ロビーと帰ることにした。
サーラがこれまで発現していなかった癒しの力を見せたことで色々と聞きたいらしい。
癒しの力は珍しいから、魔法に詳しい先生としてはアドバイスしたいことがたくさん、あるんだろう。
ロビーとカブリオレに乗ってると複雑な気分だ。
話し合いで知ってしまった真実で頭の中がこんがらがった毛糸のようになってる。
ロビーのことはずっと、好きだった。
身近にいる頼りになるお兄様でかっこよくて、優しくて、憧れの存在だったから。
でも、夢でこの好きは報われない好きだと気付いてしまった。
だから、諦めた。
それなのに夢は啓示だったと言われても訳が分かんない。
ロビーのことは嫌いじゃない。
でも、好きかと言われると分かんなくなっちゃった。
「僕も自分がやれることをやるよ」
「え?」
ロビーが呟くように不意に声を上げた。
力がない声なのに彼の決意が込められてるように感じられたのはなぜだろう。
「だから、もうちょっとだけ、待っていてくれないかな」
「ん? 何の話なの、ロビー」
「何だろうね。僕とエミーだけの秘密だよ」
そう言うと少し、悲しそうな顔をして薄っすらと笑みを浮かべたロビーは手綱を握ることに集中する。
ホントに何の話なんだろう。
待ってるとか、秘密とか。
「あれ? おかしいな。これは一雨くるかもしれない」
「珍しいね」
「そうだね」
そこから、サーラが待ってるポボルスキー邸に着くまで会話はなかった。
互いに口を開いてはいけないような不思議な空気があったから。
あたしが無駄に元気を振りまいて、話しかければ、いつもと同じに戻れたのかもしれない。
でも、そうしちゃいけない気がした。
だって、それではいつまで経ってもロビーは優しいお兄様で王子様で終わってしまう。
いつもにはもう戻れないんだから。
あたしもロビーも……。
いつもはきれいに見えてた夕焼けの空を黒い雲が覆っていた。
今夜は嵐が来るのかもしれない。
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