38 / 56
第38話 それがあひるさん部隊だったのだ
しおりを挟む
コラー伯爵家のお屋敷が全焼した。
ダニエル叔父様との思い出は両手の指で間に合うくらいしかない。
それでもよく覚えてる。
背が高くて、陰気な印象を受けるけど、優しい。
見た目で誤解されるだけで心の温かい人だった。
あたしはお父様がどんな顔をしているのか、よく知らない。
だから、叔父様にお父様の面影をどこか、探してたのかもしれない。
火事の原因は落雷だったと言われてるけど、まるで狙って落ちたように邸宅を直撃したという話らしい。
天の怒り。
神様が裁きを下したなんて、言われてもいるようだ。
ジャネタ叔母様は留守で不在だったから、災難を免れた。
犠牲になったのは在宅してた叔父様ただ一人みたい。
でも、叔父様の遺体は見つかっていない。
近衛騎士団まで動いて、捜査が行われてるようだ。
これだけ、衝撃的な事件が起きたのにあたしの目の前の世界は何事もなかったように……
「エミー。どうしたの?」
「ううん。何でもない」
叔父様の訃報があって、そして、色々と分かってきたことがある。
正確にはあたしはほとんど、分かってなかったりする。
セバスさんがもたらしてくれた情報を基にして、ビカン先生を中心にロビーとユリアンが知恵を出し合った。
浮かび上がった事実と対処しなければいけない危機が迫ってるらしい。
エヴァは何となく、理解してるようだけど、あたしとサーラはほぼ分かってない。
理解しなければいけない事実が重すぎて、理解したくないというのも大きいんだと思う。
「これで出来上がりよ」
あひるさんにつぶらな瞳を丁寧に描き上げて、仕上げるとあたしの魔力で次々に具現化されていく。
一羽、二羽……合計五羽のあひるさんだ。
リーダー格のあひるさんの頭には目印として、赤い羽毛の三角帽子を被せてるから、分かりやすい。
家出の際にエヴァと二人で乗られる大きなあひるさんを描いたことで魔力切れを起こした。
あのような失敗は二度としないようにあひるさん部隊は簡単に抱きかかえられる大きさにしてある。
「うわぁ。かわいい~」
かわいいものに目がないサーラはあひるさんにもう夢中。
あたしはそこもちゃんと考えて、描いてるのだ。
ふわふわとした黄色い羽毛。
つぶらな黒い瞳。
小さく頼りない翼と短い足。
よちよちと歩く姿に酷いことを出来る人なんて、いない……はず。
「これはすごいですよ」
ユリアンも誉めてくれるし、エヴァとサーラはあひるさん、まっしぐら。
あひるさん部隊はきっと、心強い味方になってくれる。
そう考えてるのはあたしだけなのかもしれないけど……。
そう。
今日はおじい様の離宮に全員が集まってるのだ。
おじい様はセバスさんやビカン先生。
それにロビーを加えて、難しい話をしてる。
あたしとサーラは庭先にテーブルセットを用意してもらい、一人で自由に歩けるようになったエヴァの快気祝いとかこつけたお茶会を開いたのだ。
ユリアンは難しい話に加えてもらえなかったようで居心地が悪そうに隅の方にいる。
このお茶会で満を持して、お披露目したのがかねてから、考えてた自衛手段を形にしたもの。
それがあひるさん部隊だったのだ。
難しい話が終わったのか、ロビーと先生もお茶会に合流した。
二人ともあひるさん部隊を目にすると一瞬、ギョッとした顔をしたけど、反応はまるで違う。
性格の違いが分かって、面白い。
ロビーは破顔して、あひるさんの一羽を抱きかかえて、もふもふを堪能してる。
先生は興味無さそうな顔をしながらも触りたいのを我慢してる様子が、まるで猫ちゃんみたい。
あのつぶらな瞳に見つめられて、結局は先生も負けたけど。
あの先生さえも屈服させたあひるさんはもう無敵と言っていいかもしれない。
「君達の食事に毒を混ぜていた犯人が分かった」
ひとしきり、もふもふを堪能した先生が、急に真顔に戻ったかと思うと言った。
それだけでも結構、衝撃的だったのに続いて出てきた先生の言葉にエヴァと顔を見合わせて、言葉を失ってしまう。
あまりにもショックだったから。
「黒幕はコラー家。いや……正確にはジャネタ・コラーが黒幕だ。屋敷の地下でベラドンナが栽培されていた。それだけではない。地下には大量の人造人間が廃棄されていたようだ。その特徴が証拠になった」
先生はそこで一旦、話を区切ると全員の顔を見回す。
それで大丈夫と判断したんだろう。
「アースアイだ」
叔母様やベティの瞳の色だった。
なぜ、叔母様がという疑問よりもきれいで親切な印象しかない叔母様に裏切られてたという悲しみの方が強かった。
ダニエル叔父様との思い出は両手の指で間に合うくらいしかない。
それでもよく覚えてる。
背が高くて、陰気な印象を受けるけど、優しい。
見た目で誤解されるだけで心の温かい人だった。
あたしはお父様がどんな顔をしているのか、よく知らない。
だから、叔父様にお父様の面影をどこか、探してたのかもしれない。
火事の原因は落雷だったと言われてるけど、まるで狙って落ちたように邸宅を直撃したという話らしい。
天の怒り。
神様が裁きを下したなんて、言われてもいるようだ。
ジャネタ叔母様は留守で不在だったから、災難を免れた。
犠牲になったのは在宅してた叔父様ただ一人みたい。
でも、叔父様の遺体は見つかっていない。
近衛騎士団まで動いて、捜査が行われてるようだ。
これだけ、衝撃的な事件が起きたのにあたしの目の前の世界は何事もなかったように……
「エミー。どうしたの?」
「ううん。何でもない」
叔父様の訃報があって、そして、色々と分かってきたことがある。
正確にはあたしはほとんど、分かってなかったりする。
セバスさんがもたらしてくれた情報を基にして、ビカン先生を中心にロビーとユリアンが知恵を出し合った。
浮かび上がった事実と対処しなければいけない危機が迫ってるらしい。
エヴァは何となく、理解してるようだけど、あたしとサーラはほぼ分かってない。
理解しなければいけない事実が重すぎて、理解したくないというのも大きいんだと思う。
「これで出来上がりよ」
あひるさんにつぶらな瞳を丁寧に描き上げて、仕上げるとあたしの魔力で次々に具現化されていく。
一羽、二羽……合計五羽のあひるさんだ。
リーダー格のあひるさんの頭には目印として、赤い羽毛の三角帽子を被せてるから、分かりやすい。
家出の際にエヴァと二人で乗られる大きなあひるさんを描いたことで魔力切れを起こした。
あのような失敗は二度としないようにあひるさん部隊は簡単に抱きかかえられる大きさにしてある。
「うわぁ。かわいい~」
かわいいものに目がないサーラはあひるさんにもう夢中。
あたしはそこもちゃんと考えて、描いてるのだ。
ふわふわとした黄色い羽毛。
つぶらな黒い瞳。
小さく頼りない翼と短い足。
よちよちと歩く姿に酷いことを出来る人なんて、いない……はず。
「これはすごいですよ」
ユリアンも誉めてくれるし、エヴァとサーラはあひるさん、まっしぐら。
あひるさん部隊はきっと、心強い味方になってくれる。
そう考えてるのはあたしだけなのかもしれないけど……。
そう。
今日はおじい様の離宮に全員が集まってるのだ。
おじい様はセバスさんやビカン先生。
それにロビーを加えて、難しい話をしてる。
あたしとサーラは庭先にテーブルセットを用意してもらい、一人で自由に歩けるようになったエヴァの快気祝いとかこつけたお茶会を開いたのだ。
ユリアンは難しい話に加えてもらえなかったようで居心地が悪そうに隅の方にいる。
このお茶会で満を持して、お披露目したのがかねてから、考えてた自衛手段を形にしたもの。
それがあひるさん部隊だったのだ。
難しい話が終わったのか、ロビーと先生もお茶会に合流した。
二人ともあひるさん部隊を目にすると一瞬、ギョッとした顔をしたけど、反応はまるで違う。
性格の違いが分かって、面白い。
ロビーは破顔して、あひるさんの一羽を抱きかかえて、もふもふを堪能してる。
先生は興味無さそうな顔をしながらも触りたいのを我慢してる様子が、まるで猫ちゃんみたい。
あのつぶらな瞳に見つめられて、結局は先生も負けたけど。
あの先生さえも屈服させたあひるさんはもう無敵と言っていいかもしれない。
「君達の食事に毒を混ぜていた犯人が分かった」
ひとしきり、もふもふを堪能した先生が、急に真顔に戻ったかと思うと言った。
それだけでも結構、衝撃的だったのに続いて出てきた先生の言葉にエヴァと顔を見合わせて、言葉を失ってしまう。
あまりにもショックだったから。
「黒幕はコラー家。いや……正確にはジャネタ・コラーが黒幕だ。屋敷の地下でベラドンナが栽培されていた。それだけではない。地下には大量の人造人間が廃棄されていたようだ。その特徴が証拠になった」
先生はそこで一旦、話を区切ると全員の顔を見回す。
それで大丈夫と判断したんだろう。
「アースアイだ」
叔母様やベティの瞳の色だった。
なぜ、叔母様がという疑問よりもきれいで親切な印象しかない叔母様に裏切られてたという悲しみの方が強かった。
102
あなたにおすすめの小説
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる