【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います

黒幸

文字の大きさ
49 / 56

第49話 善良王の悔悟

しおりを挟む
(三人称視点)

 事ここに至って、コンラート・チェフは己の考えが浅はかな物であったと認めざるを得なかった。

 後継者として国を任せたドミニクを頼りない王であると判断したこと自体、誤りであったのかもしれない。
 そう考え始めている。
 ドミニクを退位させ、然るべき者を戴冠させるという計画がそもそもの誤りだったとも……。

 唯一の王位継承者である王太子トマーシュは、血の気が多く、王としての資質に欠けている。
 第二王子ロベルトは優秀なだけではなく、王の資質を持っていたが本人にその気が全くない。
 そこで本来であれば、の身分にあったはずのペテル・マソプスト公子に白羽の矢が立った。
 だが、コンラートが王に相応しいと考えたロベルトとペテルは、王位に全く興味を示さないばかりか、自らが進むべき道へと歩み始めていた。



 ドミニクは早世した王妃ナターシャが残した唯一の王位継承者であり、彼以外に正当な血を引く者がいないとからこその譲位だった。
 このドミニクの治世において、国は良くも悪くも安定した時代が続いていた。

 ドミニクは確かに優れた王ではなかった。
 しかし、秀でた物がないと己を弁えている男であるのが幸いした。
 善良王と呼ばれた父コンラートと比べ、あまりにも自分には欠けている物が多い。
 そう考えたドミニクは優秀な人材に国の運営を委ねるという思い切った舵取りを行った。
 ドミニクは確かに暗愚な人物だったが、人を見る目はあったのが幸いした。

 コンラートは思った。
 ドミニクは王として、確かに立っていたのだ、と。
 戦乱で混迷の時代ではなく、平和で安定した時代に向いた君主だったに過ぎない。

 王太子トマーシュについてもコンラートは考えを改めていた。
 単なる噂に惑わされ、色眼鏡で彼を判断していた己の不明を恥じた。
 黒の甲冑を纏い、戦場を好む血狂いの黒太子。
 それは単なるレッテルに過ぎない。
 トマーシュが実際にはもっと広い視野で物事を捉えていることに気付いたのだ。

 確かに言動にやや横暴なところも見受けられる。
 だが、それすらもトマーシュの考えた自衛手段ではないのか。
 コンラートはそう考えてすらいた。

セバスセバスチアーン。年寄りはもう必要がないのかもしれんな」
「そうですな。老兵は死なずに消えるべきやもしれませんなあ」
「最後の一仕事を頼めるか?」
「何なりとお申し付けください。我が主よ」

 やがて、コンラートの意思を汲み取ったセバスチアーンは、既に離宮を発った若者らの後を追うのだった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...