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目覚め
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「いたっ」
美夏は首を襲った突然の衝撃と耐えられない痛みで目を覚ました。
最初に見えたのは彼女が全く、知らない天井だった。
(ここはどこ? 病院?)
それにしてはおかしいと美夏は思った。
病院にしてはえらくお金がかかっていて、まるでドラマに出てくるお屋敷のようだとさえ思った。
何とか、様子を確かめようと体を起こそうとしたが力が入らない。
美夏は諦めた。
諦めの早さは彼女の利点であり、欠点でもある。
今回はいい方に傾いた。
どうにか動かすことができる目で確認できるところだけでもどうにかしようと美夏が視線を動かした。
「あっ……」
「お?」
視線に入ったのは美夏の方を見て、目を丸くしている女性の姿だった。
(え? メイドさんみたいじゃない?)
美夏がそう考えるのも仕方なかった。
女性が身に着けているのは洒落っ気のない丈が長いスカートのメイド服だ。
「お、お、お嬢様があああああ」
女性というよりもまだ、少女といった年齢がふさわしいメイド姿の人物は鼓膜が破れるような大きな声を上げるとバタバタと足音を立て、部屋から出て行った。
「な、何なの? どうなってるのよ」
一人残された美夏の声に応じる者は誰もいない。
美夏が目を覚ましてから、三日。
彼女が自分なりに考えをまとめるには十分な時間だった。
(つまり、これって……異世界転生したってことよね? それとも異世界憑依? どっちにしても勝ち確じゃん。やったー)
身体が動かなかったのは元の体の持ち主が謎の病で倒れ、意識不明の状態になってから、一週間経過していたからだ。
満足に体を動かせる状態になかったのに無理に美夏が動かそうとしたので動けなかっただけに過ぎない。
むしろ元の持ち主の意識が戻ったと思われたことで屋敷内が騒ぎになっていた。
しかし、美夏はそれよりも元の持ち主の家族と思われる人々から、深い愛情を感じられる視線を向けられたことでかなり満足していた。
両親と思われる人物は取り立てて、美しいというほどではないが整った顔立ちをしていた。
何よりも人の良さと品の良さを感じさせる雰囲気は、美夏が求めても得られなかったものだ。
がさつでデリカシーのない父親。
子供よりも男を選んだ母親。
事あるごとに嫌がらせをしてくる兄。
思い出しても腹立たしい家族しかいなかった美夏にとって、見た目だけでも優しそうに見える家族は理想そのものだったのである。
そして、鏡を見て、美夏は確信した。
(めっちゃヒロインじゃん!)
鏡に映った自分の姿に美夏は驚くと共に喜んだ。
絵に描いたようなお姫様がそこに映っていたからだ。
きめ細かく透き通るような白い肌は美しく、腰まである長く伸びた髪は銀糸に薄らと朱をまぶしたような神秘的な色合い――ストロベリーブロンドだった。
顔の造形も黄金比で整っており、完璧に近い美の具現者がまさにそこにいた。
まるでサファイアのように透き通った青い瞳と長い睫毛はこの世のものと思えない。
(神様って、本当にいるんだ?)
しかし、美夏はふと不思議に思う。
神を信じていたかと言えば、そうではない。
大概の日本人と同様に都合のいい時だけ、神はいると考える程度だ。
特別、信心深かった訳ではない。
むしろ神はいないと悪態をついていた。
だが美夏はあまり深く考えるのが得意ではなく、好きでもなかった。
なるようになるだろうと半ば、諦観を抱き、毎日を送っていたのも悪い方に働いた。
ありえないことが我が身に起きているにも関わらず、どうにかなるだろうと楽観視したのである。
美夏は首を襲った突然の衝撃と耐えられない痛みで目を覚ました。
最初に見えたのは彼女が全く、知らない天井だった。
(ここはどこ? 病院?)
それにしてはおかしいと美夏は思った。
病院にしてはえらくお金がかかっていて、まるでドラマに出てくるお屋敷のようだとさえ思った。
何とか、様子を確かめようと体を起こそうとしたが力が入らない。
美夏は諦めた。
諦めの早さは彼女の利点であり、欠点でもある。
今回はいい方に傾いた。
どうにか動かすことができる目で確認できるところだけでもどうにかしようと美夏が視線を動かした。
「あっ……」
「お?」
視線に入ったのは美夏の方を見て、目を丸くしている女性の姿だった。
(え? メイドさんみたいじゃない?)
美夏がそう考えるのも仕方なかった。
女性が身に着けているのは洒落っ気のない丈が長いスカートのメイド服だ。
「お、お、お嬢様があああああ」
女性というよりもまだ、少女といった年齢がふさわしいメイド姿の人物は鼓膜が破れるような大きな声を上げるとバタバタと足音を立て、部屋から出て行った。
「な、何なの? どうなってるのよ」
一人残された美夏の声に応じる者は誰もいない。
美夏が目を覚ましてから、三日。
彼女が自分なりに考えをまとめるには十分な時間だった。
(つまり、これって……異世界転生したってことよね? それとも異世界憑依? どっちにしても勝ち確じゃん。やったー)
身体が動かなかったのは元の体の持ち主が謎の病で倒れ、意識不明の状態になってから、一週間経過していたからだ。
満足に体を動かせる状態になかったのに無理に美夏が動かそうとしたので動けなかっただけに過ぎない。
むしろ元の持ち主の意識が戻ったと思われたことで屋敷内が騒ぎになっていた。
しかし、美夏はそれよりも元の持ち主の家族と思われる人々から、深い愛情を感じられる視線を向けられたことでかなり満足していた。
両親と思われる人物は取り立てて、美しいというほどではないが整った顔立ちをしていた。
何よりも人の良さと品の良さを感じさせる雰囲気は、美夏が求めても得られなかったものだ。
がさつでデリカシーのない父親。
子供よりも男を選んだ母親。
事あるごとに嫌がらせをしてくる兄。
思い出しても腹立たしい家族しかいなかった美夏にとって、見た目だけでも優しそうに見える家族は理想そのものだったのである。
そして、鏡を見て、美夏は確信した。
(めっちゃヒロインじゃん!)
鏡に映った自分の姿に美夏は驚くと共に喜んだ。
絵に描いたようなお姫様がそこに映っていたからだ。
きめ細かく透き通るような白い肌は美しく、腰まである長く伸びた髪は銀糸に薄らと朱をまぶしたような神秘的な色合い――ストロベリーブロンドだった。
顔の造形も黄金比で整っており、完璧に近い美の具現者がまさにそこにいた。
まるでサファイアのように透き通った青い瞳と長い睫毛はこの世のものと思えない。
(神様って、本当にいるんだ?)
しかし、美夏はふと不思議に思う。
神を信じていたかと言えば、そうではない。
大概の日本人と同様に都合のいい時だけ、神はいると考える程度だ。
特別、信心深かった訳ではない。
むしろ神はいないと悪態をついていた。
だが美夏はあまり深く考えるのが得意ではなく、好きでもなかった。
なるようになるだろうと半ば、諦観を抱き、毎日を送っていたのも悪い方に働いた。
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