3 / 22
2
しおりを挟む
「よくやった」
公爵邸へと戻るとすぐさま父の部屋へ通された。父は満足げに頷いていた。この人が私の事を褒めたのはこれが初めてだった。
それから、愛子の懐に入り込めとも言われたが、多分それが1番言いたかった事だろう。くれぐれも機嫌を損ねるな、と。
後日、ルビーは王に呼び出された。
「精霊の愛子がお前に会いたがっている」
そう告げられたことを父へと報告すれば父は舞い上がって喜んだ。これで公爵家は盤石だと。事実、最近は戦争もなく手柄を立てることが減ったがために収入も減少していた。それが挽回できるチャンスなのだ。
こうして、私はルビーの元へ通い。話し相手になったり時には礼儀作法やこの国の常識などを教えていった。しかし、常に護衛が張り付いており、前のように話すことはおろか気を抜くことさえもできなかった。
愛子の触れたものは全て精霊の加護が宿る。ソッと、バレないように回収して国のために使用するのだ。最近では、皇子までもがアキの元へと通っているらしい。
「あのね、フェン皇子が呼び捨てで構わないと言うの。だけど黒いモヤがあるし、嫌なの。ルーお姉ちゃんの婚約者でしょ? なんでこっちに来るの?」
ルーお姉ちゃんといればいいのに……、と不満そうに顔を歪ませるアキに護衛達は焦っているようだ。そのすぐ後に、殿下からアキとの仲を取り持ってほしいと通達が来た時は笑った。
「いいじゃないか。お前は殿下の側室となれば良い。愛子様と一緒に国をお支えするのだ」
父は上機嫌に頷いていた。なにも殿下のことは好きではなかったが、これには流石に失望した。
「かしこまりました……」
なんとか絞り出した言葉。ぎゅうぎゅうと喉の奥を絞られるような感覚になりながら、礼をとって部屋を出たあと、声を押し殺して泣いた。
『お前は皇妃となるのだ。私がお前を認めるのはそれしかない。私に恥をかかせるなよ』
その言葉通りに努力してやっと婚約者までなれたのに、あっさりと父はルビーが血反吐を吐くほど努力して手に入れた功績を放った。
「ふふふ……」
アキが悪いわけじゃないのは分かっている。
『ルーお姉ちゃん……ルーお姉ちゃんは凄いよ! そんなクソ親父の言葉なんて聞かなくていい! 私はルーお姉ちゃんのお婿さんになる!!!!』
何もかも投げやりになりそうになった時、アキの気遣わしげな声と見当違いな励ましががルビーの脳内に響いた。
「え⁉︎」
パッと顔をあげても、誰もいない。
「アキ様?」
訝しげに問えば、アキの元気な返事が返ってきた。
『そう! なんかルーお姉ちゃんと話したい! って念じたら通じたの‼︎ ルーお姉ちゃんも心の中で私に話してみて!』
(アキ様)
『はぁーい!』
「っ!?」
あり得ない。アキがやっていることはもはや愛子から外れた偉業だった。そう、精霊ではないもっと上位の存在から施された加護。
「まさか、女神の……?」
『なに~?』
(アキ様、この加護のことは誰にもお話しされていませんわよね?)
『ん! 私、ちゃんとルーお姉ちゃんの言うこと守ってるからね。それに、だんだんこの世界について分かってきたから』
そう言うアキの声はどこか悲しげだった。自分がどういった存在なのか察したのだろう。
『ね、ルーお姉ちゃん。私に出来ることはない? ルーお姉ちゃんには助けてもらったし、私もお返ししたいなぁなんて……』
(アキ様の真名が知りたいですわ)
冗談のつもりだった。しかし、ほんの少しの本音も入っていた。
『ルーお姉ちゃんならいいよ! 私の名前は秋宮 凛。で、あだ名がアキってこと!』
告げられた瞬間、ルビーの中に不思議な力が流れ込んでくる。
使役とは違う、直感でそう感じた。
『ルーお姉ちゃんの名前は?』
(ビオラですわ)
『あれ? 結構違うね』
(そうでしょうか?)
『うん、全く。でも、しっくり来る。それからね? なんか不思議な力が流れ込んでくるんだけどなんでかな?』
今や、ルビーに流れ込んでくる力は先程よりももっと強力なものになっている。
(不思議ですわね。私もですのよ)
『もしかして、チート?』
(さあ……)
前例にないこの事例をどう説明すればよいのか。ルビーは流れ込んでくる力にそろそろ耐えられなくなりそうだった。ふらふらしながらやっとのことで自室へ戻る。
「アキ様……」
『なぁに?』
「もう、無理ですわ……」
『え!?』
驚いたアキの声を最後に、ルビーは寝台に倒れ込んで意識を失ったのだった。
公爵邸へと戻るとすぐさま父の部屋へ通された。父は満足げに頷いていた。この人が私の事を褒めたのはこれが初めてだった。
それから、愛子の懐に入り込めとも言われたが、多分それが1番言いたかった事だろう。くれぐれも機嫌を損ねるな、と。
後日、ルビーは王に呼び出された。
「精霊の愛子がお前に会いたがっている」
そう告げられたことを父へと報告すれば父は舞い上がって喜んだ。これで公爵家は盤石だと。事実、最近は戦争もなく手柄を立てることが減ったがために収入も減少していた。それが挽回できるチャンスなのだ。
こうして、私はルビーの元へ通い。話し相手になったり時には礼儀作法やこの国の常識などを教えていった。しかし、常に護衛が張り付いており、前のように話すことはおろか気を抜くことさえもできなかった。
愛子の触れたものは全て精霊の加護が宿る。ソッと、バレないように回収して国のために使用するのだ。最近では、皇子までもがアキの元へと通っているらしい。
「あのね、フェン皇子が呼び捨てで構わないと言うの。だけど黒いモヤがあるし、嫌なの。ルーお姉ちゃんの婚約者でしょ? なんでこっちに来るの?」
ルーお姉ちゃんといればいいのに……、と不満そうに顔を歪ませるアキに護衛達は焦っているようだ。そのすぐ後に、殿下からアキとの仲を取り持ってほしいと通達が来た時は笑った。
「いいじゃないか。お前は殿下の側室となれば良い。愛子様と一緒に国をお支えするのだ」
父は上機嫌に頷いていた。なにも殿下のことは好きではなかったが、これには流石に失望した。
「かしこまりました……」
なんとか絞り出した言葉。ぎゅうぎゅうと喉の奥を絞られるような感覚になりながら、礼をとって部屋を出たあと、声を押し殺して泣いた。
『お前は皇妃となるのだ。私がお前を認めるのはそれしかない。私に恥をかかせるなよ』
その言葉通りに努力してやっと婚約者までなれたのに、あっさりと父はルビーが血反吐を吐くほど努力して手に入れた功績を放った。
「ふふふ……」
アキが悪いわけじゃないのは分かっている。
『ルーお姉ちゃん……ルーお姉ちゃんは凄いよ! そんなクソ親父の言葉なんて聞かなくていい! 私はルーお姉ちゃんのお婿さんになる!!!!』
何もかも投げやりになりそうになった時、アキの気遣わしげな声と見当違いな励ましががルビーの脳内に響いた。
「え⁉︎」
パッと顔をあげても、誰もいない。
「アキ様?」
訝しげに問えば、アキの元気な返事が返ってきた。
『そう! なんかルーお姉ちゃんと話したい! って念じたら通じたの‼︎ ルーお姉ちゃんも心の中で私に話してみて!』
(アキ様)
『はぁーい!』
「っ!?」
あり得ない。アキがやっていることはもはや愛子から外れた偉業だった。そう、精霊ではないもっと上位の存在から施された加護。
「まさか、女神の……?」
『なに~?』
(アキ様、この加護のことは誰にもお話しされていませんわよね?)
『ん! 私、ちゃんとルーお姉ちゃんの言うこと守ってるからね。それに、だんだんこの世界について分かってきたから』
そう言うアキの声はどこか悲しげだった。自分がどういった存在なのか察したのだろう。
『ね、ルーお姉ちゃん。私に出来ることはない? ルーお姉ちゃんには助けてもらったし、私もお返ししたいなぁなんて……』
(アキ様の真名が知りたいですわ)
冗談のつもりだった。しかし、ほんの少しの本音も入っていた。
『ルーお姉ちゃんならいいよ! 私の名前は秋宮 凛。で、あだ名がアキってこと!』
告げられた瞬間、ルビーの中に不思議な力が流れ込んでくる。
使役とは違う、直感でそう感じた。
『ルーお姉ちゃんの名前は?』
(ビオラですわ)
『あれ? 結構違うね』
(そうでしょうか?)
『うん、全く。でも、しっくり来る。それからね? なんか不思議な力が流れ込んでくるんだけどなんでかな?』
今や、ルビーに流れ込んでくる力は先程よりももっと強力なものになっている。
(不思議ですわね。私もですのよ)
『もしかして、チート?』
(さあ……)
前例にないこの事例をどう説明すればよいのか。ルビーは流れ込んでくる力にそろそろ耐えられなくなりそうだった。ふらふらしながらやっとのことで自室へ戻る。
「アキ様……」
『なぁに?』
「もう、無理ですわ……」
『え!?』
驚いたアキの声を最後に、ルビーは寝台に倒れ込んで意識を失ったのだった。
27
あなたにおすすめの小説
病弱な従妹を理由に婚約者がデートをドタキャンするので、全力で治療に協力します!
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
ピルチャー伯爵令嬢カトレアは、アンダーソン伯爵令息リードと二ヶ月前に婚約したばかり。
今日は五回目のデートだが、リードは同居している彼の従妹ミミーの具合が悪いから延期してくれという。
五回のデートで、ドタキャンは五回目。
しかし、カトレアは抗議もせずに心底心配してリードにこう提案した。
「わたくしが全力でミミー様のお身体を治してさしあげますわ!」
だってカトレアは、聖女クラスの治癒魔法術師なのだから!
※10話で終わる予定です。
※タイトル変更しました。
赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました
桜桃-サクランボ-
恋愛
赤い瞳を持ち生まれた桔梗家次女、桔梗美月。
母と姉に虐げられていた美月は、ひょんなことから冷酷無情と呼ばれ、恐怖の的となっている鬼神家の若当主、鬼神雅に嫁ぐこととなった。
無礼を働けば切り捨てられる。
そう思い、緊張の面持ちで鬼神家へ行く美月。
だが、待ち受けていたのは、思ってもいない溺愛される日々。
口数が少ない雅との、溺愛ストーリー!!
※カクヨム&エブリスタで公開中
※ ※がタイトルにある話は挿絵あり
※挿絵は、清見こうじさん
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
なんでもいいけど、実家の連中なんとかしてくれません?-虐げられたお姫様、宗主国の皇帝陛下に拾われたついでに復讐する-
下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…かなり苦労した可愛い可哀想な幼子である。ざまぁもあるよ。
エルネスティーヌはお姫様。しかし恵まれない人生を送ってきた。そんなエルネスティーヌは宗主国の皇帝陛下に拾われた。エルネスティーヌの幸せな人生がここから始まる。復讐の味は、エルネスティーヌにとっては蜜のようであった。
小説家になろう様でも投稿しています。
処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話
真理亜
恋愛
公爵令嬢のイライザには夢という形で未来を予知する能力があった。その夢の中でイライザは冤罪を着せられ処刑されてしまう。そんな未来を絶対に回避したいイライザは、予知能力を使って未来を変えようと奮闘する。それに対して、男爵令嬢であるエミリアは絶対にイライザを処刑しようと画策する。実は彼女にも譲れない理由があって...
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです
珠宮さくら
恋愛
厄介なんて言葉で片付けられない幼なじみが、侯爵令嬢のヴィディヤ・カムダールにはいた。
その人物に散々なまでに振り回されて、他の者たちに頼られていたことで、すっかり疲弊していたが頼りになる従兄が助けてくれてりしていた。
だが、自己中すぎる幼なじみは、誰もが知っている彼女の母親すらとっくに越えていたようだ。
それだけでなく、ヴィディヤの周りには幼なじみによって、そこまでではないと思われてしまいがちな人たちがいたようで……。
一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】
私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……?
*短編です。あっさり終わります
*他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる