【完結】悪役令嬢が起こした奇跡〜追放されたのに皆様がわたくしを探しているらしいですわ〜

ウミ

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「よくやった」

 公爵邸へと戻るとすぐさま父の部屋へ通された。父は満足げに頷いていた。この人が私の事を褒めたのはこれが初めてだった。

 それから、愛子の懐に入り込めとも言われたが、多分それが1番言いたかった事だろう。くれぐれも機嫌を損ねるな、と。

 後日、ルビーは王に呼び出された。

「精霊の愛子がお前に会いたがっている」

 そう告げられたことを父へと報告すれば父は舞い上がって喜んだ。これで公爵家は盤石だと。事実、最近は戦争もなく手柄を立てることが減ったがために収入も減少していた。それが挽回できるチャンスなのだ。

 こうして、私はルビーの元へ通い。話し相手になったり時には礼儀作法やこの国の常識などを教えていった。しかし、常に護衛が張り付いており、前のように話すことはおろか気を抜くことさえもできなかった。

 愛子の触れたものは全て精霊の加護が宿る。ソッと、バレないように回収して国のために使用するのだ。最近では、皇子までもがアキの元へと通っているらしい。

「あのね、フェン皇子が呼び捨てで構わないと言うの。だけど黒いモヤがあるし、嫌なの。ルーお姉ちゃんの婚約者でしょ? なんでこっちに来るの?」

 ルーお姉ちゃんといればいいのに……、と不満そうに顔を歪ませるアキに護衛達は焦っているようだ。そのすぐ後に、殿下からアキとの仲を取り持ってほしいと通達が来た時は笑った。

「いいじゃないか。お前は殿下の側室となれば良い。愛子様と一緒に国をお支えするのだ」

 父は上機嫌に頷いていた。なにも殿下のことは好きではなかったが、これには流石に失望した。

「かしこまりました……」

 なんとか絞り出した言葉。ぎゅうぎゅうと喉の奥を絞られるような感覚になりながら、礼をとって部屋を出たあと、声を押し殺して泣いた。

『お前は皇妃となるのだ。私がお前を認めるのはそれしかない。私に恥をかかせるなよ』

 その言葉通りに努力してやっと婚約者までなれたのに、あっさりと父はルビーが血反吐を吐くほど努力して手に入れた功績を放った。

「ふふふ……」

 アキが悪いわけじゃないのは分かっている。

『ルーお姉ちゃん……ルーお姉ちゃんは凄いよ! そんなクソ親父の言葉なんて聞かなくていい! 私はルーお姉ちゃんのお婿さんになる!!!!』

 何もかも投げやりになりそうになった時、アキの気遣わしげな声と見当違いな励ましががルビーの脳内に響いた。

「え⁉︎」

 パッと顔をあげても、誰もいない。

「アキ様?」

 訝しげに問えば、アキの元気な返事が返ってきた。

『そう! なんかルーお姉ちゃんと話したい! って念じたら通じたの‼︎ ルーお姉ちゃんも心の中で私に話してみて!』

(アキ様)

『はぁーい!』

「っ!?」

 あり得ない。アキがやっていることはもはや愛子から外れた偉業だった。そう、精霊ではないもっと上位の存在から施された加護。

「まさか、女神の……?」

『なに~?』

(アキ様、この加護のことは誰にもお話しされていませんわよね?)

『ん! 私、ちゃんとルーお姉ちゃんの言うこと守ってるからね。それに、だんだんこの世界について分かってきたから』

 そう言うアキの声はどこか悲しげだった。自分がどういった存在なのか察したのだろう。

『ね、ルーお姉ちゃん。私に出来ることはない? ルーお姉ちゃんには助けてもらったし、私もお返ししたいなぁなんて……』

(アキ様の真名が知りたいですわ)

 冗談のつもりだった。しかし、ほんの少しの本音も入っていた。

『ルーお姉ちゃんならいいよ! 私の名前は秋宮 凛。で、あだ名がアキってこと!』

 告げられた瞬間、ルビーの中に不思議な力が流れ込んでくる。

 使役とは違う、直感でそう感じた。

『ルーお姉ちゃんの名前は?』

(ビオラですわ)

『あれ? 結構違うね』

(そうでしょうか?)

『うん、全く。でも、しっくり来る。それからね? なんか不思議な力が流れ込んでくるんだけどなんでかな?』

 今や、ルビーに流れ込んでくる力は先程よりももっと強力なものになっている。


(不思議ですわね。私もですのよ)

『もしかして、チート?』

(さあ……)

 前例にないこの事例をどう説明すればよいのか。ルビーは流れ込んでくる力にそろそろ耐えられなくなりそうだった。ふらふらしながらやっとのことで自室へ戻る。

「アキ様……」

『なぁに?』

「もう、無理ですわ……」

『え!?』

 驚いたアキの声を最後に、ルビーは寝台に倒れ込んで意識を失ったのだった。
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