【完結】悪役令嬢が起こした奇跡〜追放されたのに皆様がわたくしを探しているらしいですわ〜

ウミ

文字の大きさ
4 / 22

3

しおりを挟む
 次に目を覚ましたのは、殿下やら父やら神官やらが周りを取り囲んで口うるさく何かを喚いている時だった。

「いったい何があったのですか」

 ギシギシと鳴る体をやっとのことで起こしたルビーに、一斉に気味の悪い視線が送られる。

「ルビー、君の魔力が感じられなくなった。これはどういうことか」

「はあ……⁇」

 深刻そうな殿下の言葉に、ルビーは眉を顰めた。何故ならルビーの体の中には溢れんばかりの魔力があるからだ。

(……⁇ 違う、魔力じゃないわ。これは……神力?)

「まさか、悪魔と契約したのか!?」

『ルーお姉ちゃん、ごめんなさい。私が騒いだから、バレちゃったみたい』

(何をですの?)

『いや、あのだからね。ルーお姉ちゃんが無理って倒れたでしょ? 調子が悪くなったのかと思って……思わずルーお姉ちゃん大丈夫!? って声に出しちゃったの。そしたら、いつの間にか王様達がどういうことだって押しかけてきて……』

(ああ、そういえばアキ様は密かに監視いえ、護衛されていたわね)

『うん、で、なんか大変なことに……あとね、何故かルーお姉ちゃんの周りにみんないるのが見えるようになったの』

 どういうことかしら? そうルビーが疑問に思えば、パッとアキが寝台に寝そべって泣きそうになっている様子がルビーの脳裏に映し出される。どうやらこれも名を名乗りあった恩恵らしい。

「ルビー、まさか本当に悪魔と契約を……!?」

 スッと眉を顰め何も言わないルビーに殿下が顔色をなくす。実際は、アキのしょげた姿にどうやって慰めようかと悩んでいただけだ。

(アキ様、もういいですわ。過ぎたことはどうしようもありませんし、そもそもアキ様のせいではございませんもの。それから、アキ様に一つ提案が)

『どうしたの?』

(元の世界へ帰る方法があるとするならば、どういたしますか?)

『えっ!?』

 パッと寝台から飛び起きるアキの姿。嬉しそうな笑顔を一瞬浮かべ、そして複雑な顔になった。それを見て、ルビーは決心した。アキを元の世界へ還そうと。

 アキにはアキの生活があるのよ。

 もしかすると、精霊の愛子というのはこの世界の人間に力を与えるためのものなのかもしれない。そうして役目を終えれば元の世界へ帰れるようにする。本来のシステムはそういったものなのかもしれない。

 決心して、ルビーは口を開いた。

「ええ、私は悪魔と契約しましたの」

「なんと!!!! 今すぐ悪魔祓いを! 愛子の元へ連れていけ!」

 神官の言葉に、ルビーの唇が満足げに歪む。悪魔が苦手とするのは精霊だと太古の昔から言い伝えとしてあるからだ。

「お前はなんて事を‼︎」

 バシッと頬を打たれるが、ルビーは動じない。なんならニヤリと笑ってみせた。まるで悪魔に取り憑かれたかのように。

「あら、お父様。わたくしがどれだけ王太子の婚約者になるに努力したと思っているのです? 公爵家の娘だからといって、婚約者になるのは易しくはないのですよ? それを、愛子が現れたから側室になって殿下を支えろ? はっ、笑いが出てきますわね。わたくしはうんざりしましたわ。皆さま愛子愛子愛子愛子!!!! 誰1人として、わたくしの努力を認めてくださった方はいたかしら?」

 クルリと周りを見渡せば、怯えたような顔がルビーを取り巻いている。

『ルーお姉ちゃん……』

 アキだけがルビーを認めてくれた。ルビーはアキに救われたようなものだ。

「は、早く愛子の元へ。ルビーはこんなこと言わん! やはり悪魔に憑かれておる!!!!」

 顔を赤くして喚き出した父親に、ルビーは嘆息した。

『……ハゲ親父』

 ボソリと呟かれたアキの言葉。パッと父親を眺めたルビーはあさひを反射して輝いている父親の頭を見て吹き出してしまった。

「ふっ」

「何がおかしい‼︎」

「ふふ、いえ、なにも?」

(不思議ね、今まで偉大に見えていたお父様がこんなにも小さく見える)

 スッと表情を整えたルビーは、殿下達に連れられるままアキの元へと向かった。

『ねぇルーお姉ちゃん、私は帰らないよ。ルーお姉ちゃんと一緒にいるもん! 私の家族は多分大丈夫! 心配するかもしれないけど伝える手段がないわけじゃないんだから! 私はルーお姉ちゃんといる! ねぇ、ルーお姉ちゃん、一緒にどこか別の国に行こうよ! 旅一緒にするの! 私はルーお姉ちゃんと一緒にいたいから‼︎』

 その間も、アキからの好き好き攻撃がルビーへ行われていた。

(そう言ってくれるのは嬉しいわ。でもね、貴女はここに居てはいけないのよ。他の国でも変わらないわ。この国には魔法があるの。貴女のことを調べようとすれば簡単にできるのよ)

『やだ‼︎』

「っ!?」

 キィーンと大きなアキの大きな声がルビーの脳内に響く。と、アキが部屋から脱走しようとしているのが見えた。

「はぁ、あの方は……」

 そういえば、アキは今年で10歳になるらしい。それならば、このような言動は理解できる。
 
「あ!?」

 タイミングよく、アキのいた部屋の扉が開く。そこには、目を見開いたアキがいた。

「ルーお姉ちゃん‼︎」
 
 神官達に囲まれているルビーをみて、思わずと言ったように突進するアキ。ボスッとルビーのドレスに顔を埋めたアキに、ルビーは笑いかけた。

(アキ様、お役目お疲れ様でした)

  心の中でそう告げる。

「やだ‼︎」

(さぁ、お帰りください)

 そう心の中で言うと、ルビーはいつの間にか習得していた帰還魔法を展開した。

「な!?」

「なんだ!?」

「アキ様! 早くルビーの悪魔祓いを!」

 ざわめく周囲を放って、ルビーは抱きつくアキを離さないようにしっかりと抱き締める。

(少しの間でもリンのお姉様ができてよかったわ。わたくしは貴女の立派な姉になれていたかしら?)

「うん」

(ふふ、ありがとう。リン、さようなら)

「やだ!」

 完成した魔法陣へとリンを突き飛ばす。そして、ルビーはニヤリと悪い笑みを浮かべて高らかに告げた。

「あはははははは‼︎ 悪魔に油断するとは愚かですわね! お前の存在は我々悪魔にとってじゃまなの。消えてちょうだい!」

「なんだと!?」

「やめろ!」

「あぁ! 精霊の愛子が!!!!」

「悪魔め!」

『違う! 違うよ! ルーお姉ちゃん! なにしてるの!? 悪魔になんて憑かれてないもん! お姉ちゃんを悪者にしないで!』

 口をパクパクさせて何か言おうとしてるアキの姿がどんどん薄くなる。脳内に響くアキの悲鳴のような声に、ルビーはちょっと救われた気がした。

(さようなら)

 こうして、精霊の愛子は元の世界へ帰った。しかし、それを知っているのはルビー1人。他の貴族達はルビーに乗り移った悪魔がこの世から消し去ったと思い込んでいる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

病弱な従妹を理由に婚約者がデートをドタキャンするので、全力で治療に協力します!

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
ピルチャー伯爵令嬢カトレアは、アンダーソン伯爵令息リードと二ヶ月前に婚約したばかり。 今日は五回目のデートだが、リードは同居している彼の従妹ミミーの具合が悪いから延期してくれという。 五回のデートで、ドタキャンは五回目。 しかし、カトレアは抗議もせずに心底心配してリードにこう提案した。 「わたくしが全力でミミー様のお身体を治してさしあげますわ!」 だってカトレアは、聖女クラスの治癒魔法術師なのだから! ※10話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-
恋愛
赤い瞳を持ち生まれた桔梗家次女、桔梗美月。 母と姉に虐げられていた美月は、ひょんなことから冷酷無情と呼ばれ、恐怖の的となっている鬼神家の若当主、鬼神雅に嫁ぐこととなった。 無礼を働けば切り捨てられる。 そう思い、緊張の面持ちで鬼神家へ行く美月。 だが、待ち受けていたのは、思ってもいない溺愛される日々。 口数が少ない雅との、溺愛ストーリー!! ※カクヨム&エブリスタで公開中 ※ ※がタイトルにある話は挿絵あり  ※挿絵は、清見こうじさん

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

なんでもいいけど、実家の連中なんとかしてくれません?-虐げられたお姫様、宗主国の皇帝陛下に拾われたついでに復讐する-

下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…かなり苦労した可愛い可哀想な幼子である。ざまぁもあるよ。 エルネスティーヌはお姫様。しかし恵まれない人生を送ってきた。そんなエルネスティーヌは宗主国の皇帝陛下に拾われた。エルネスティーヌの幸せな人生がここから始まる。復讐の味は、エルネスティーヌにとっては蜜のようであった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜
恋愛
公爵令嬢のイライザには夢という形で未来を予知する能力があった。その夢の中でイライザは冤罪を着せられ処刑されてしまう。そんな未来を絶対に回避したいイライザは、予知能力を使って未来を変えようと奮闘する。それに対して、男爵令嬢であるエミリアは絶対にイライザを処刑しようと画策する。実は彼女にも譲れない理由があって...

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです

珠宮さくら
恋愛
厄介なんて言葉で片付けられない幼なじみが、侯爵令嬢のヴィディヤ・カムダールにはいた。 その人物に散々なまでに振り回されて、他の者たちに頼られていたことで、すっかり疲弊していたが頼りになる従兄が助けてくれてりしていた。 だが、自己中すぎる幼なじみは、誰もが知っている彼女の母親すらとっくに越えていたようだ。 それだけでなく、ヴィディヤの周りには幼なじみによって、そこまでではないと思われてしまいがちな人たちがいたようで……。

一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】 私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……? *短編です。あっさり終わります *他サイトでも投稿中

処理中です...