【完結】悪役令嬢が起こした奇跡〜追放されたのに皆様がわたくしを探しているらしいですわ〜

ウミ

文字の大きさ
14 / 22

殿下の嘆き

しおりを挟む
 気づけば、毎日そばにいたはずのルビーがいない事が寂しく感じるようになってしまった。

「ルビーを……あぁ、そうだ。いないのだな」 

「はい……」

 気遣わしげに向けられる従者の視線に耐えかねて、いつものように外へ出た。

 いつもならば、呼べばすぐ来る婚約者。しかし、今はいない。

 ルビーは悪魔に憑かれた。そして、精霊の愛子をこの世から消してしまったのだ。それはとても重い罪になる。

『あなた方は私の努力を認めてくださったかしら?』

 しかし、皇子にはルビーのその一言がいつの間にかシコリのようになって頭の中に残っていた。たしかに、ルビーには何一つ労いの言葉を言ったことがない。

 この国の皇子たる私の妻となるのだから、当たり前のことだ。そう思い込んでいたし、周りもそう思っていた。

 それに、ルビーも求められたことはそつなくこなしていたから、大丈夫だと思ったのだ。

 だが、言われてみれば私はよく教師に褒められていたし、王である父にも「よくやった」と言われることは常日頃あった。

「いったいどうしてこうなったのだろうな」

 バルコニーでつぶやいた皇子の言葉は、誰に訊かれることもなく消えた。

 いくら教育を受けているとはいえ、蝶よ花よと育てられた公爵令嬢は過酷な環境で生きていくことなど出来はしないだろう。

 今回の騒動のきっかけである、精霊の愛子はとても愛らしかった。たしかに、あの力と媒体を取り入れるために近づきはしたが……

「決してルビーを見捨てるわけじゃなかったんだ」

 懺悔のように紡がれる自身の口から出た言葉に、皇子は呆然した。

 これでは、私がルビーを愛していたようではないか、と。

「違う。ルビーとはそもそも政略結婚で……だが……ルビーは……」

 そこまで言って皇子は力なく項垂れた。そうだ、認めるしかない。自分はルビーの事が好きだったのだ、と。

 まだ、間に合うだろうか?

「ヴェンヒル」

「はい」

「ルビーが生きているかどうか確認してくれないか」

「御意」

 ハハッと乾いた笑いが漏れる。悪魔に憑かれたというのに、探すなど常軌を逸している。だが、もしかするとーー

「そうだ、追放を言い渡す時ルビーは静かだったらしい」

 最後の最後で愛子によって悪魔が祓われたのではないだろうか?

 ついこの前、神々の祝福が起こったばかりだ。

「ヴェンヒル、悪魔がついているかどうかも確認してくれ」

「はっ」

 見つけた後どうするのか? というのは今の皇子の中にはなかった。ただ、ルビーが生きているのか知りたい。ただ、ただ、それだけが彼の胸の内には存在していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

病弱な従妹を理由に婚約者がデートをドタキャンするので、全力で治療に協力します!

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
ピルチャー伯爵令嬢カトレアは、アンダーソン伯爵令息リードと二ヶ月前に婚約したばかり。 今日は五回目のデートだが、リードは同居している彼の従妹ミミーの具合が悪いから延期してくれという。 五回のデートで、ドタキャンは五回目。 しかし、カトレアは抗議もせずに心底心配してリードにこう提案した。 「わたくしが全力でミミー様のお身体を治してさしあげますわ!」 だってカトレアは、聖女クラスの治癒魔法術師なのだから! ※10話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-
恋愛
赤い瞳を持ち生まれた桔梗家次女、桔梗美月。 母と姉に虐げられていた美月は、ひょんなことから冷酷無情と呼ばれ、恐怖の的となっている鬼神家の若当主、鬼神雅に嫁ぐこととなった。 無礼を働けば切り捨てられる。 そう思い、緊張の面持ちで鬼神家へ行く美月。 だが、待ち受けていたのは、思ってもいない溺愛される日々。 口数が少ない雅との、溺愛ストーリー!! ※カクヨム&エブリスタで公開中 ※ ※がタイトルにある話は挿絵あり  ※挿絵は、清見こうじさん

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

なんでもいいけど、実家の連中なんとかしてくれません?-虐げられたお姫様、宗主国の皇帝陛下に拾われたついでに復讐する-

下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…かなり苦労した可愛い可哀想な幼子である。ざまぁもあるよ。 エルネスティーヌはお姫様。しかし恵まれない人生を送ってきた。そんなエルネスティーヌは宗主国の皇帝陛下に拾われた。エルネスティーヌの幸せな人生がここから始まる。復讐の味は、エルネスティーヌにとっては蜜のようであった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜
恋愛
公爵令嬢のイライザには夢という形で未来を予知する能力があった。その夢の中でイライザは冤罪を着せられ処刑されてしまう。そんな未来を絶対に回避したいイライザは、予知能力を使って未来を変えようと奮闘する。それに対して、男爵令嬢であるエミリアは絶対にイライザを処刑しようと画策する。実は彼女にも譲れない理由があって...

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです

珠宮さくら
恋愛
厄介なんて言葉で片付けられない幼なじみが、侯爵令嬢のヴィディヤ・カムダールにはいた。 その人物に散々なまでに振り回されて、他の者たちに頼られていたことで、すっかり疲弊していたが頼りになる従兄が助けてくれてりしていた。 だが、自己中すぎる幼なじみは、誰もが知っている彼女の母親すらとっくに越えていたようだ。 それだけでなく、ヴィディヤの周りには幼なじみによって、そこまでではないと思われてしまいがちな人たちがいたようで……。

一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】 私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……? *短編です。あっさり終わります *他サイトでも投稿中

処理中です...