荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第12話【レベル7の新項目はナマモノ?】

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「――今日はこの依頼をお願いします」

 ノエル雑貨店での買い物をした次の日から僕はノエルが選んでくれたウエストポーチを腰につけて町を走り回っていた。

「ミナトさんのおかげでギルドで不人気だった配達も順調に捌けて私の評価も良くなりました。
 お礼に今度お食事でもご一緒しませんか?」

 僕が依頼を窓口に持っていったらサーシャから食事のお誘いを受けた。

「お誘いは嬉しいですけどサーシャさんはギルドの受付嬢をされているので仕事中のそういった話は逆に評価をさげてしまいますよ」

「ゔっ……。そうですね」

 僕の正論にサーシャは同意してしゅんとなる。

「ですので、そういったお話はお仕事が終わった後でお聞きしたいと思います。
 夕の鐘がなる頃にまた来てみますのでその時にでもお願いします。
 では、この配達依頼を完了させてきますね」

 僕はサーシャにそう伝えると荷物を手早くカード化してウエストポーチに仕舞って配達先へと走って行った。

(サーシャさんも仕事がうまくまわるようになって楽しいんだろうな。
 そうだ、せっかくだから鑑定スキルについて話を聞いてみたいな)

「――すみません。
 ギルドの依頼で荷物の配達に来ました」

「おう! ミナトか、荷物はそこの台の上に置いといてくれ!
 いやあ、おまえさんが運んでくれるようになって配達遅延がなくなったおかげで仕事が予定どおりに進んで助かってるよ」

 鍛冶屋のおやじがハンマーを片手にニカリと口元を緩ませてお礼を言ってくる。

「いえいえ、僕の方こそ皆さんが配達依頼を出してくれるおかげでこうやって仕事にありつけているんですからお互い様ですよ」

 僕がウエストポーチから荷物のカードを取り出して台の上に並べて順番にカード化を解いていく。

 たちまち台の上には鍛冶で使うインゴットが山になった。

「正直いってこれだけのインゴットを同時に運べるやつなんてミナトの他にはいないんじゃないのか?
 まあ、町の中を走り回るだけの仕事じゃ、充実感や達成感は少ないかもしれんが少なくとも俺らみたいに材料の運搬をギルドに頼む連中は感謝しきれないと思うぜ。
 まあ、これからも頼むぜ。ありがとよ」

 鍛冶屋のおやじは完了報告書にサインをすると笑顔で僕を見送ってくれた。

(荷物配達でこんなに感謝されるとは思ってなかったな。
 鍛冶屋のおやじさんはああ言ってたけど結構充実感はあるんだけどな)

 僕がそう考えながら飲み物のカードを取り出して開放した時、頭の中でレベルアップのアナウンスが発生した。

【カード収納スキルレベルが1つ上がりました。
 現在レベル7です。
 このレベルアップによりカード化出来る種類が増えます】

「おっ!? やった!
 今度のスキル補正はなにかな?」

【新たにカード化出来るものは……『生物』です】

「生物……ナマモノ?
 ナマモノってなんだよ。
 お刺身とか傷みやすいものがカード化出来るって事か?
 でも、レベル6になったときからカード化中の時間停止は出来るようになっていたはず。
 ナマモノだろうが何だろうが関係ないと思うんだけどな。
 前だってボアもカード化出来てたし……って、もしかして『ナマモノ』じゃなくて『セイブツ……いきもの』なのか?
 まさかとは思うけど『生きたままカード化出来る』という事なのか?」

 僕はそう呟きながら自分の手のひらをジッとみつめて「何が出来て何が出来ないかの検証が必要だな」と手を握りしめた。

(まずは魚かなにかで試してみたいが……となると森の湖か川になるからまた護衛を頼まないといけないな)

 僕はそんな事を考えながら配達の完了報告書を持って斡旋ギルドへと向った。

――からんからん。

 斡旋業者のドアをあけていつもの受付へと向かうとサーシャが笑顔で対応してくれる。

「ミナトさん、お疲れ様でした。
 完了報告ですか?」

「はい、お願いします。
 あと、個人的に調べたい事があり東の森にある湖に行きたいと考えてるので護衛を斡旋して貰えると助かります。
 依頼料はあまり多くは出せないですけど知ってる人の方がやりやすいので前に一緒に依頼を受けたダランさんとかの都合がつけばなお良いかもしれないです」

「東の森の湖ですか?
 それならば確か……ああ、やっぱりありました」

「やっぱりあった?」

「はい。東の森の湖に生えているミナモソウの採取依頼です。
 以前のミズトギソウのように判断が難しい薬草ではないので依頼料は高くありませんが湖まで行かれるのでしたらついでに受けて行かれたら護衛代くらいにはなると思いますよ」

「本当ですか?
 それならば是非受けたいと思います」

「では、ダランさんには連絡を入れてみますので最短でいつから行けるかを確認しておきますね。
 あと、もう1時間もしたら仕事は終わりますので表の噴水広場で待ってて頂けますか?」

「はい、もちろん大丈夫ですよ。
 では依頼の件はお願いしますね」

 僕はそう言うと配達の報酬を受け取り軽く依頼ボードを眺めてからギルドを後にした。

「しかし、運良く湖に行く依頼があってラッキーだったな。
 採取依頼は僕にとって1番確実にこなせる鉄板依頼だから心配ごとがひとつ減ったと言える。
 後はダランさん達が引き受けてくれるかどうかといったところだろう」

 待ちあわせまで時間のあった僕はこれからの行動について、いくつかの仮説を考えてカード収納の検証をすると決めていった。

・生きている生物をカード化することが出来るのか?
 出来たならばその時の特徴は?

・カード化されている間は時間経過も止まっているとされているが本来は生命維持に必要な呼吸も止まっていても大丈夫なのか?

・術者への負担はどうか?
 普通の荷物のように重量や体積に比例して負荷がかかるだけなのか、それとも特別に加算されるのか?

 考えだしたら調べておきたい事が次々と浮かんできて僕はメモをどんどんとっていった。

「何をそんなに熱心に書いてるのですか?」

 メモをとるのに集中していた僕は声をかけられるまで彼女が来ている事に全く気がつかなかった。
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