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第52話【研修生は料理人?】
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「ふむ。
とりあえず我がギルドには収納スキル持ちは3人ほど居るようだな……。
すまないがすぐにこの3人を呼んで来てくれないか?」
「わかりました。
少しお待ちください」
指示を受けた職員はすぐに部屋から出て指定された3人を集めてくれた。
「どのような用件でしょうか?」
集められた3人には特に説明もなくギルマスが呼んでいるとだけ伝えられていたらしく何故自分達が呼ばれたのか分からないでいた。
「ああ、仕事中に集まってもらってすまない。
実は王都のギルドマスターからの依頼でこの度カード収納スキルを持つ者の研修を行うことになった。
そこで各ギルドから最低一人、メンバーを選出して欲しいとの依頼だ。
我がギルドではここに集まって貰った3名がその条件にあてはまるのだが誰か研修を受けても良い者は居るか?」
突然の事に呼ばれた3名は動揺した表情でお互いの顔を見る。
「その研修の内容を教えて貰えますか?」
呼ばれたメンバーのひとりが手を挙げてマグナムに問いかける。
「わたし自身も詳しい話はまだ聞いていないのだが、この書類によると研修場所はロギナスで研修期間は約1年。
研修期間中の生活は保証されるが報酬は決められた金額となる。
研修後は試験があり、合格すれば各ギルドの新しい部門の長として元のギルド勤務とするそうだ。
今の時点ではそれ以上の事は書かれていないな」
「……1年ですか。
それなりの長さですが合格さえすれば出世は間違いないですね」
ひとりがそう言うと別の者が意見を言う。
「これって『カード収納スキル』を持っていればもうひとつのスキルは何でも良いのですよね?」
「ああ、3人ともサブスキルがカード収納スキルだろうがメインスキルが特定のものでなければならないとは書いていないから大丈夫だろう」
マグナムはそう言って3人のスキル構成を確認して渋い顔をした。
「なんだ、ジグマとラミリアは替えの効かないスキル持ちじゃないか。
悪いがお前たちは駄目だ。
お前たちのどちらが行ってもこのギルド業務に支障が出ることになる。
新たな部門の責任者の席は魅力的かもしれんがお前たちならばすぐに今の部門の長になれるだろう。
となると……アーファ。
君のメインスキルは調理だからまだ替えはきく部門だ、せっかくのチャンスだから行って貰えるか?」
「えっ?
あの、その……」
アーファと呼ばれた女性は自分が選ばれたことに激しく動揺してうまく返事を返せない。
「ちぇっ、俺が行きたかったんだけどな。
こんなクズみたいなスキルをどうやって使えるようにするのか興味があったけど訳の分からない新部門よりも今の部門で出世したほうが確実だし今回は譲ってやるさ」
ジグマと呼ばれた青年はそう言ってパタパタと手を振る。
「まあ、ジグマの言うことも確かね。
せっかく今まで頑張ってきた部門を蹴ってどうなるか分からない部門の長になるなんてリスクは私には合いそうもないわ。
アーファはそういったしがらみも無いでしょうから丁度いいかもしれないわね。
ま、せいぜい頑張ってね」
ラミリアと呼ばれた女性もジグマと同様に要請を辞退する事を選択する。
「ならばアーファ一択だな。
すまないが宜しく頼んだぞ」
ギルマスのマグナムまでもアーファ本人の意思確認をしないまま決定事項として話し出した。
「アーファさん、宜しいですか?」
エルガー斡旋ギルドの人事に外部の僕が出来ることはそう聞くことだけだった。
「……はい。
でも、本当に私なんかで大丈夫なんでしょうか?
確かにサブスキルにカード収納は持ってますが、使えないスキルだと言われてレベルも1のままですよ?
実際のところ調理しか出来ない何処にでもいるただの料理人ですよ?」
「いえいえ、それで十分ですので一緒に頑張りましょう。
宜しくお願いしますね」
僕はそう言って彼女に笑いかけた。
「よし、ならばアーファは今日はもう帰っていいから明日までに準備をしてロギナス行きの馬車に同乗させてもらえ」
「ええっ!?
ちょっとそれは難しくないですか?
もうすぐ夕の鐘がなる頃だし、引っ越しだってそうすぐに出来るものじゃないですよね?」
マグナムの言葉に僕が驚いてそう聞くと『なんだそんな事か』とばかりにため息をついて説明してくれた。
「アーファはこのギルドに住み込みで働いている料理人なんだよ。
だから荷物も全てギルドに併設されている寮部屋にあるし、そのほとんどはギルドからの貸し出し品だから引っ越しの準備くらい数時間あれば十分出来る」
僕はそう言うマグナムからアーファを見ると小さな声で「はい」と答える。
「わかりました。
では明日の朝、ギルド前の広場に集合してください」
「はい。わかりました」
彼女のために別の馬車を準備するのが面倒なのか、いきなりの異動を言い渡してマグナムは執務室へジグマとラミリアも各自の持ち場へと解散していった。
* * *
――次の日の朝、ギルド前の広場でノエルと一緒にアーファを待っているとなぜかマリアーナがお供を連れて現れた。
「あれ?
マリアーナさんじゃないですか?
どうかされましたか?」
「どうかされましたか? じゃないわよ。
前回別れる時に『帰りにも寄りなさい』と言ったはずですよね?
どうして昨夜はノエルしか来なかったのですか!?」
現れたマリアーナは何故か激おこモードだった。
「えっ?
どうしてもなにも呼ばれてないのに行くのはおかしくないですか?」
僕の言葉にマリアーナは側にいたノエルに対して詰め寄った。
「のーえーるー。
あなた昨日は確かに彼に来るように伝えたけど、どうしても外せない用事があるから来られないって言ったわよね?
あれはどういうことなの?」
まくし立てるマリアーナに涼しい顔でノエルが答える。
「そんなの嘘に決まってますわ。
あなたのところにミナトさんを連れて行ったら絶対に好きになって私から奪おうとするに決まってますから絶対阻止で対応させて貰っただけですわ」
「きいいっ!
あなたって人は普段から人の良さそうな顔をしておきながらそんな度量の狭い女だったのですね!」
マリアーナはそう言うと口惜しそうにノエルを睨んだ。
「ま、まあそのくらいで……。
えっとマリアーナさん?
次にエルガーに来たときは是非話をしてみたいと思いますのでその時は宜しくお願いしますね」
僕の社交辞令にマリアーナの表情が一変して「是非ともそうしてくださいね」と言ってその場は収めてくれた。
とりあえず我がギルドには収納スキル持ちは3人ほど居るようだな……。
すまないがすぐにこの3人を呼んで来てくれないか?」
「わかりました。
少しお待ちください」
指示を受けた職員はすぐに部屋から出て指定された3人を集めてくれた。
「どのような用件でしょうか?」
集められた3人には特に説明もなくギルマスが呼んでいるとだけ伝えられていたらしく何故自分達が呼ばれたのか分からないでいた。
「ああ、仕事中に集まってもらってすまない。
実は王都のギルドマスターからの依頼でこの度カード収納スキルを持つ者の研修を行うことになった。
そこで各ギルドから最低一人、メンバーを選出して欲しいとの依頼だ。
我がギルドではここに集まって貰った3名がその条件にあてはまるのだが誰か研修を受けても良い者は居るか?」
突然の事に呼ばれた3名は動揺した表情でお互いの顔を見る。
「その研修の内容を教えて貰えますか?」
呼ばれたメンバーのひとりが手を挙げてマグナムに問いかける。
「わたし自身も詳しい話はまだ聞いていないのだが、この書類によると研修場所はロギナスで研修期間は約1年。
研修期間中の生活は保証されるが報酬は決められた金額となる。
研修後は試験があり、合格すれば各ギルドの新しい部門の長として元のギルド勤務とするそうだ。
今の時点ではそれ以上の事は書かれていないな」
「……1年ですか。
それなりの長さですが合格さえすれば出世は間違いないですね」
ひとりがそう言うと別の者が意見を言う。
「これって『カード収納スキル』を持っていればもうひとつのスキルは何でも良いのですよね?」
「ああ、3人ともサブスキルがカード収納スキルだろうがメインスキルが特定のものでなければならないとは書いていないから大丈夫だろう」
マグナムはそう言って3人のスキル構成を確認して渋い顔をした。
「なんだ、ジグマとラミリアは替えの効かないスキル持ちじゃないか。
悪いがお前たちは駄目だ。
お前たちのどちらが行ってもこのギルド業務に支障が出ることになる。
新たな部門の責任者の席は魅力的かもしれんがお前たちならばすぐに今の部門の長になれるだろう。
となると……アーファ。
君のメインスキルは調理だからまだ替えはきく部門だ、せっかくのチャンスだから行って貰えるか?」
「えっ?
あの、その……」
アーファと呼ばれた女性は自分が選ばれたことに激しく動揺してうまく返事を返せない。
「ちぇっ、俺が行きたかったんだけどな。
こんなクズみたいなスキルをどうやって使えるようにするのか興味があったけど訳の分からない新部門よりも今の部門で出世したほうが確実だし今回は譲ってやるさ」
ジグマと呼ばれた青年はそう言ってパタパタと手を振る。
「まあ、ジグマの言うことも確かね。
せっかく今まで頑張ってきた部門を蹴ってどうなるか分からない部門の長になるなんてリスクは私には合いそうもないわ。
アーファはそういったしがらみも無いでしょうから丁度いいかもしれないわね。
ま、せいぜい頑張ってね」
ラミリアと呼ばれた女性もジグマと同様に要請を辞退する事を選択する。
「ならばアーファ一択だな。
すまないが宜しく頼んだぞ」
ギルマスのマグナムまでもアーファ本人の意思確認をしないまま決定事項として話し出した。
「アーファさん、宜しいですか?」
エルガー斡旋ギルドの人事に外部の僕が出来ることはそう聞くことだけだった。
「……はい。
でも、本当に私なんかで大丈夫なんでしょうか?
確かにサブスキルにカード収納は持ってますが、使えないスキルだと言われてレベルも1のままですよ?
実際のところ調理しか出来ない何処にでもいるただの料理人ですよ?」
「いえいえ、それで十分ですので一緒に頑張りましょう。
宜しくお願いしますね」
僕はそう言って彼女に笑いかけた。
「よし、ならばアーファは今日はもう帰っていいから明日までに準備をしてロギナス行きの馬車に同乗させてもらえ」
「ええっ!?
ちょっとそれは難しくないですか?
もうすぐ夕の鐘がなる頃だし、引っ越しだってそうすぐに出来るものじゃないですよね?」
マグナムの言葉に僕が驚いてそう聞くと『なんだそんな事か』とばかりにため息をついて説明してくれた。
「アーファはこのギルドに住み込みで働いている料理人なんだよ。
だから荷物も全てギルドに併設されている寮部屋にあるし、そのほとんどはギルドからの貸し出し品だから引っ越しの準備くらい数時間あれば十分出来る」
僕はそう言うマグナムからアーファを見ると小さな声で「はい」と答える。
「わかりました。
では明日の朝、ギルド前の広場に集合してください」
「はい。わかりました」
彼女のために別の馬車を準備するのが面倒なのか、いきなりの異動を言い渡してマグナムは執務室へジグマとラミリアも各自の持ち場へと解散していった。
* * *
――次の日の朝、ギルド前の広場でノエルと一緒にアーファを待っているとなぜかマリアーナがお供を連れて現れた。
「あれ?
マリアーナさんじゃないですか?
どうかされましたか?」
「どうかされましたか? じゃないわよ。
前回別れる時に『帰りにも寄りなさい』と言ったはずですよね?
どうして昨夜はノエルしか来なかったのですか!?」
現れたマリアーナは何故か激おこモードだった。
「えっ?
どうしてもなにも呼ばれてないのに行くのはおかしくないですか?」
僕の言葉にマリアーナは側にいたノエルに対して詰め寄った。
「のーえーるー。
あなた昨日は確かに彼に来るように伝えたけど、どうしても外せない用事があるから来られないって言ったわよね?
あれはどういうことなの?」
まくし立てるマリアーナに涼しい顔でノエルが答える。
「そんなの嘘に決まってますわ。
あなたのところにミナトさんを連れて行ったら絶対に好きになって私から奪おうとするに決まってますから絶対阻止で対応させて貰っただけですわ」
「きいいっ!
あなたって人は普段から人の良さそうな顔をしておきながらそんな度量の狭い女だったのですね!」
マリアーナはそう言うと口惜しそうにノエルを睨んだ。
「ま、まあそのくらいで……。
えっとマリアーナさん?
次にエルガーに来たときは是非話をしてみたいと思いますのでその時は宜しくお願いしますね」
僕の社交辞令にマリアーナの表情が一変して「是非ともそうしてくださいね」と言ってその場は収めてくれた。
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※第○話:主人公視点
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