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第81話【隷属の首輪と旅立ちの準備】
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「まず単刀直入にお聞きしますが『隷属の首輪』について何か知っている事はありませんか?」
僕がザッハにそう問うと彼は苦々しい表情をして「私もそこまで詳しくはないのだが」と前置きをして話し始めた。
「我が王国の隣にあるアランガスタの国に魔道具を専門に扱う村がある。
我が王国でもある程度の魔道具を作る職人は居るが、本当に高度なもののほとんどはその村の職人が手掛けているらしくそれこそギルド便を支えるゴーレム伝書鳩もこの村の職人が発明したものだ。
隷属の首輪ほどの魔道具となるとこの村の職人が手掛けている可能性が高いと思う」
「そこへ行けば首輪の解除方法が分かるのでしょうか?」
「正直それは分からない。
だが、今の時点で私が知っている情報ではそれが一番有力だと言える。
だが、この村はアランガスタでも特別地区に指定されていて人の出入りに特に厳しいと言われている」
「その村に行くにはどうしたら良いのですか?」
僕はザッハの言葉に躊躇なくそう問いかける。
「全く方法がない訳ではないが、かなり厳しい条件がある。
まず、アランガスタの王都へ行きそこでギルドに登録して身分証明書をつくるのだが我が国の斡旋ギルドのように簡単に登録出来る事はない」
「どういうことですか?」
「アランガスタのギルドは基本的に商業ギルドしかない。
もともとその国に産まれた者は自動的に戸籍を得るがそうでない国外から来た者は商業ギルドに登録して身分証明書を発行してもらわなければ街に滞在することが出来ないそうだ。
つまり、我々がアランガスタで活動するには何か商売をする目的で行くしかないと言うことだ。
せめて君に商人スキルでもあれば問題なかったかもしれないが……」
「商売……ですか」
僕は少し考えてザッハに言った。
「僕には物を売る商売は出来ませんが、この町のギルドでお世話になった仕事があります」
「うちのギルドで受けた仕事?」
「はい。
僕はカード収納スキルを使った運送業をやろうと思います。
個人でやるので『運び屋』としてですが、それを仕事として活動をすれば商業ギルドに登録出来ると思いませんか?」
「運び屋か……。
確かにそれならば商人スキルがなくとも出来るだろう。
だが、くれぐれもやりすぎには注意しろよ。
今の君のスキル全開でやってしまうと直ぐに目をつけられて見動きが取れなくなるのは間違いないからな。
ましてやアランガスタは国外になるから私みたいな地方のギルドマスター程度ではなんの力にもなれない事は理解してくれよ」
ザッハはそう言うと一通の手紙を見せてくれた。
「今回の研修に来ていたロセリからの手紙だ。
彼女はノーズの町に帰って今は運送部門で頑張っているそうだ。
これは昨日ギルド便にて届いたのだが内容をみるとどうやらレベルがあがりそうなので君に会いたいとあった。
だが、ノーズの町はロギナスの町から王都経由で15日はかかる距離にあるので簡単には向かわせる訳にはいかないと考えていたのだ」
「そのお話とアランガスタとどういった関係が?」
「ああ、ミナトはこの辺りの地理に詳しくないから分からないだろうが我が国からアランガスタの国への移動手段はノーズの町から出る馬車便しかないのだよ。
ただ、馬車便とは言っても観光客などを受け入れている訳ではないので基本的に旅商人の馬車か商隊の馬車に乗せてもらうしかない。
しかしアランガスタへの商隊馬車は全てテンマ運送が仕切っているので今回はやめたほうが良いだろう。
もしこの件が発覚したら即拘束されるのは間違いないからな。
となると後は旅商人となるが都合良くそんな者がいるとは思えない」
「では、どうすれば……」
僕の当然の質問にザッハは「ううむ」と唸りながらため息をひとつついてから話を切り出した。
「実はひとりだけ『あて』があるのだが……。
いや、しかし……ううむ」
ザッハはそう言ってまた唸りながら考え始めた。
「どうしたのですか?
なにかその人は問題でもあるのでしょうか?」
「問題……。
そうだな、そいつは能力的には私が信用におけるレベルの人物ではある……あるのだか少々見た目と性格がな……」
「その人がどのような人であれ、アランガスタへ行くのにそれが最善ならば受け入れてうまくやりますので紹介をしてくれませんか?」
悩むザッハに僕ははっきりとそう告げる。
「そうか、確かにそれが最善かもしれないな。
よし、わかった。
今からその人物を呼んでやるから自分で口説き落としてみろ」
ザッハはそう言うと一度部屋を出て行き職員に指示を出すとまた部屋に戻ってきた。
「いま呼びに行ってもらったから暫くすれば来ることだろう。
そちらの方はそれでいいとしてこちらの後始末をどうするか決めておかなければならないな。
ザガンとその取り巻きについては王都を出てロギナスに向かうことはおそらく父親か誰かに伝えているだろう。
あとはロギナスに正規の方法で入ったかどうかだが、君の話を聞いているとどうも怪しい気がするんだ」
「それは何故ですか?」
「ザガンの奴がノエル嬢を無理やり連れて行こうとしていたからだ。
ただ彼女に会いに来ただけならば正規の手続きで町に入った方が当然いいのだが、もしはじめから拐うつもりだったならばロギナスの町に入った記録は無いほうが後で惚けられるからな」
「なるほど、アイツの考えそうな事ですね。
それは門兵の詰め所で分かるものなんですか?」
「そうだな。
君のような一般人が聞いても教えてくれないだろうがギルドから問い合わせれば調べてはくれるだろう。
だが今はやめておいた方がいいだろう」
「それは何故ですか?」
「いくらギルドといえどもなんの容疑もない者の情報を開示するように強制は出来ないのだよ。
それにもし今、彼の事を調べればこの町でなにかトラブルがあったと知れ渡って君の動きがとりにくくなる恐れがあるからだ。
少なくとも君が王国を出るまで……とは言わないがせめてノーズの町までたどり着くまでは他の者に悟られない方がいいだろう」
「わかりました。
しかし、ザガンとその取り巻きはそれで良いですがノエル雑貨店はどうするのですか?
ノエルさんが居なければ当然休むしかないけれど2~3日ならばともかく半月以上休むとなると常連客も噂話をするでしょうし、王都からもどんどん荷物が届いてしまうと思うのですが……」
「まあ、それは私に任せてもらえるか?
数日間休んでから週に2~3日ほど職員を派遣して店番をさせようと思う。
客に聞かれたら『自分で商品を仕入れに行っている』とでも答えておくさ」
「……それはありがたいのですが、それが嘘だとばれたらあなたの立場があぶないのではないですか?」
「なあに、ちょっとばかし依頼書を偽造してやれば言い訳はなんとでもなるさ」
「それは、ギルドマスターの発言としてはマズイのでは?」
「ははは。確かにそうだな。
まあ、聞かなかったことにしてくれ。
私も人間なんでね。
犯罪者を擁護するつもりはないし、世話になった者が困っている時には手を差し伸べるのが人情ってやつだろう?」
ザッハはそう言ってニカッと笑った。
――コンコン。
その時、入口のドアがノックされ先ほど呼んだ人物が到着したことを知らせてくれた。
「おう、来たか。入っていいぞ」
ザッハが許可を出すと『カチャリ』とドアが開いた。
僕がザッハにそう問うと彼は苦々しい表情をして「私もそこまで詳しくはないのだが」と前置きをして話し始めた。
「我が王国の隣にあるアランガスタの国に魔道具を専門に扱う村がある。
我が王国でもある程度の魔道具を作る職人は居るが、本当に高度なもののほとんどはその村の職人が手掛けているらしくそれこそギルド便を支えるゴーレム伝書鳩もこの村の職人が発明したものだ。
隷属の首輪ほどの魔道具となるとこの村の職人が手掛けている可能性が高いと思う」
「そこへ行けば首輪の解除方法が分かるのでしょうか?」
「正直それは分からない。
だが、今の時点で私が知っている情報ではそれが一番有力だと言える。
だが、この村はアランガスタでも特別地区に指定されていて人の出入りに特に厳しいと言われている」
「その村に行くにはどうしたら良いのですか?」
僕はザッハの言葉に躊躇なくそう問いかける。
「全く方法がない訳ではないが、かなり厳しい条件がある。
まず、アランガスタの王都へ行きそこでギルドに登録して身分証明書をつくるのだが我が国の斡旋ギルドのように簡単に登録出来る事はない」
「どういうことですか?」
「アランガスタのギルドは基本的に商業ギルドしかない。
もともとその国に産まれた者は自動的に戸籍を得るがそうでない国外から来た者は商業ギルドに登録して身分証明書を発行してもらわなければ街に滞在することが出来ないそうだ。
つまり、我々がアランガスタで活動するには何か商売をする目的で行くしかないと言うことだ。
せめて君に商人スキルでもあれば問題なかったかもしれないが……」
「商売……ですか」
僕は少し考えてザッハに言った。
「僕には物を売る商売は出来ませんが、この町のギルドでお世話になった仕事があります」
「うちのギルドで受けた仕事?」
「はい。
僕はカード収納スキルを使った運送業をやろうと思います。
個人でやるので『運び屋』としてですが、それを仕事として活動をすれば商業ギルドに登録出来ると思いませんか?」
「運び屋か……。
確かにそれならば商人スキルがなくとも出来るだろう。
だが、くれぐれもやりすぎには注意しろよ。
今の君のスキル全開でやってしまうと直ぐに目をつけられて見動きが取れなくなるのは間違いないからな。
ましてやアランガスタは国外になるから私みたいな地方のギルドマスター程度ではなんの力にもなれない事は理解してくれよ」
ザッハはそう言うと一通の手紙を見せてくれた。
「今回の研修に来ていたロセリからの手紙だ。
彼女はノーズの町に帰って今は運送部門で頑張っているそうだ。
これは昨日ギルド便にて届いたのだが内容をみるとどうやらレベルがあがりそうなので君に会いたいとあった。
だが、ノーズの町はロギナスの町から王都経由で15日はかかる距離にあるので簡単には向かわせる訳にはいかないと考えていたのだ」
「そのお話とアランガスタとどういった関係が?」
「ああ、ミナトはこの辺りの地理に詳しくないから分からないだろうが我が国からアランガスタの国への移動手段はノーズの町から出る馬車便しかないのだよ。
ただ、馬車便とは言っても観光客などを受け入れている訳ではないので基本的に旅商人の馬車か商隊の馬車に乗せてもらうしかない。
しかしアランガスタへの商隊馬車は全てテンマ運送が仕切っているので今回はやめたほうが良いだろう。
もしこの件が発覚したら即拘束されるのは間違いないからな。
となると後は旅商人となるが都合良くそんな者がいるとは思えない」
「では、どうすれば……」
僕の当然の質問にザッハは「ううむ」と唸りながらため息をひとつついてから話を切り出した。
「実はひとりだけ『あて』があるのだが……。
いや、しかし……ううむ」
ザッハはそう言ってまた唸りながら考え始めた。
「どうしたのですか?
なにかその人は問題でもあるのでしょうか?」
「問題……。
そうだな、そいつは能力的には私が信用におけるレベルの人物ではある……あるのだか少々見た目と性格がな……」
「その人がどのような人であれ、アランガスタへ行くのにそれが最善ならば受け入れてうまくやりますので紹介をしてくれませんか?」
悩むザッハに僕ははっきりとそう告げる。
「そうか、確かにそれが最善かもしれないな。
よし、わかった。
今からその人物を呼んでやるから自分で口説き落としてみろ」
ザッハはそう言うと一度部屋を出て行き職員に指示を出すとまた部屋に戻ってきた。
「いま呼びに行ってもらったから暫くすれば来ることだろう。
そちらの方はそれでいいとしてこちらの後始末をどうするか決めておかなければならないな。
ザガンとその取り巻きについては王都を出てロギナスに向かうことはおそらく父親か誰かに伝えているだろう。
あとはロギナスに正規の方法で入ったかどうかだが、君の話を聞いているとどうも怪しい気がするんだ」
「それは何故ですか?」
「ザガンの奴がノエル嬢を無理やり連れて行こうとしていたからだ。
ただ彼女に会いに来ただけならば正規の手続きで町に入った方が当然いいのだが、もしはじめから拐うつもりだったならばロギナスの町に入った記録は無いほうが後で惚けられるからな」
「なるほど、アイツの考えそうな事ですね。
それは門兵の詰め所で分かるものなんですか?」
「そうだな。
君のような一般人が聞いても教えてくれないだろうがギルドから問い合わせれば調べてはくれるだろう。
だが今はやめておいた方がいいだろう」
「それは何故ですか?」
「いくらギルドといえどもなんの容疑もない者の情報を開示するように強制は出来ないのだよ。
それにもし今、彼の事を調べればこの町でなにかトラブルがあったと知れ渡って君の動きがとりにくくなる恐れがあるからだ。
少なくとも君が王国を出るまで……とは言わないがせめてノーズの町までたどり着くまでは他の者に悟られない方がいいだろう」
「わかりました。
しかし、ザガンとその取り巻きはそれで良いですがノエル雑貨店はどうするのですか?
ノエルさんが居なければ当然休むしかないけれど2~3日ならばともかく半月以上休むとなると常連客も噂話をするでしょうし、王都からもどんどん荷物が届いてしまうと思うのですが……」
「まあ、それは私に任せてもらえるか?
数日間休んでから週に2~3日ほど職員を派遣して店番をさせようと思う。
客に聞かれたら『自分で商品を仕入れに行っている』とでも答えておくさ」
「……それはありがたいのですが、それが嘘だとばれたらあなたの立場があぶないのではないですか?」
「なあに、ちょっとばかし依頼書を偽造してやれば言い訳はなんとでもなるさ」
「それは、ギルドマスターの発言としてはマズイのでは?」
「ははは。確かにそうだな。
まあ、聞かなかったことにしてくれ。
私も人間なんでね。
犯罪者を擁護するつもりはないし、世話になった者が困っている時には手を差し伸べるのが人情ってやつだろう?」
ザッハはそう言ってニカッと笑った。
――コンコン。
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