まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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まさか「好き」とは思うまい

4.「いや……あんた何なんだよ」

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 それからはなんか、日常会話? 挨拶? を彼とするようになった。
 相変わらず舌打ちするし「うざい」と言われるけど、普通の人の「こんにちは」だと思えば挨拶されてるな、くらいにしか思わなかった。

 いつも通りコンビニに行くと、レジには恰幅のいいおばさんが居た。
 深夜なのに女性がいるなんて珍しい。そんな事を思ったが、昨日この店の店員の性別がどっちだったかなんて覚えてない。
 単純に今日は不良店員くんが居る日曜日だったから気付いただけだ。

「いらっしゃいませ~。レジ袋ご利用になりますか?」
「あ、お願いします」
「412円になります」

 レジに缶チューハイとおにぎりを出すと、おばさんがにこやかに会計をしてくれる。

「あ……の、いつもの茶髪の店員さんは…?」
「あれ? もしかして各務かがみくんのお友達?」
「え? あ、いえ友達というか……」
「あらそう良かった! 夕飯取りにいらっしゃいって言ったのに来なくて心配してたのよ。ちょっと見てきてくれる?」
「あの、だから、友達とかではなくて、どこに住んでるかとかも知らないし」
「各務くんちはここの隣の「ゆかり荘」の二階の一番奥よ」
「いや、あの、個人情報ですよそれ…」
「ごめんなさいね、今日人手が無くて私は店から出れないのよ。次の方どうぞ―。じゃあよろしくね」

 おばさんはにこやかに言うと、勝手に個人情報まで提供して次のお客さんの会計を始めている。
 え……これは無視して帰って……いいやつだよな?
 俺はさすがにどうしたらいいかわからず、レジの客が切れるのを待って、おばさんにきちんと話した。
 俺はただの客で、彼とは挨拶する程度の関係で、知り合いとも言えない程度の間柄で、そんな奴がいきなり家に来たら不審者で通報されると。

「あらまあ、今どきの子は色々面倒なこと考えるのね。じゃあ、私が電話しとくから、夕飯持っていってちょうだい」

 俺の説明はむなしく、おばさんに押し切られた。夕飯と言うかもはや夜食だ。

 コンビニの隣のアパートが「ゆかり荘」なんて名前なことを初めて知った。おばさんが家から作ってきたという弁当包みを持ち、俺は階段を上る。
 表札は出てなかったけど電気もついているし、間違いないだろうとノックすれば、不良店員くんが出て来た。えっと、カガミクンだ。
 
「これ、頼まれて……」
「……断れよ」
「まあ、うん、そうなんだけどね」

 弁当包みを差し出せば、億劫そうに受け取る。受け取る為にドアを自分の体で開けてるのは、さっきからずっと片手で自分の腹を押さえているからだ。
 心なしか、呼吸も荒いし顔色も悪い。というか冬の深夜なのに額には汗が浮かんでいる。

「もしかして具合悪いの?」
「……腹が痛ぇ」

 ああ、それで今日は休みなのか。

「病院は?」
「行ってない」
「いつから痛いの?」
「あ?……昨日? わかんねぇ」
「えっと、良くはなってる……んだよね?」
「今、一番いてぇ」

 よし、これは救急車だ。

「きみ、盲腸やってないでしょ?」
「は?」
「そこ押さえてるとこ、盲腸だと思う。ご家族は?」
「家、遠いから……」
「わかった、俺が一緒に行くから、とりあえずコートとスマホと保険証は準備して」
「いや……あんた何なんだよ」

 そういえば俺は名乗りもしてないし、いきなりこんな事されて不安だよな。俺は財布に入れてあった自分の名刺を取り出して彼に渡す。
 俺は道で倒れている人が居たら同じようにするし、これは人道的行動だ。

 その後、救急車を呼んで病院に一緒に行った。診察している間にコンビニのおばさんがやってきて、付き添いを代わるというので俺は帰宅することにした。
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