まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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まさか「好き」とは思うまい

10.「そっか。カニ好きなら良かった」

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 さすがロングセラーなだけあってチョコモナカアイスは美味い。

「は? 何食ってんだよ??」
「え? 食べちゃダメなの? 俺、本命チョコ貰ったの初めてだから嬉しいんだけど。食べないと溶けちゃうし」
「はぁ?」
「え、あれ? 違った? 今、告白されてるんだと思ってたんだけど、違ったら物凄く恥ずかしい…んだけど」
「……ちがくねぇ」

 それなら良かった。こういう勘違いは物凄く恥ずかしいからね。

「あんた、おかしいんじゃないのか? 普通こう、もっと、驚いたりとか……」

 各務くんが自分の気持ちにすごく驚いたんだろうな、となんとなく伝わる。
 誰かを好きになったりするのを「きもい」とか思う必要ないと思うんだけど。俺に迷惑をかけていたわけでもないし。

「うーん、驚くより嫌われてなくて良かったなとか、本命チョコ貰ってうれしいなとか、そういう風に思うけど、それがおかしいって言われたらそうなのかも。半分食べる?」

 各務くんが大人しく頷いたので、チョコモナカアイスを半分割って渡してあげる。

「とりあえずお返しにカニ鍋やりたいけど、どう?」
「は?」
「バレンタインのお返し。俺ここんとこ仕事しすぎてて、鍋とか誘える奴いなくなっててさ、みんな結婚したりしてるし。あ、もちろん嫌じゃなければだけど」
「……いやなわけねぇだろ」
「そっか。カニ好きなら良かった」

 いやほんと仕事ばっかだったからお金を使う余裕もなくて、ちょっと贅沢出来るくらい溜まったしお取り寄せとかしちゃおう。

「……好きなのは、カニじゃなくて、あんただよ」
「は? え?」
「あんたが好きだって言ってんだよ。解ってんだろ、聞き返すな!」
「え、あ、ごめん。解ってたけど……ちゃんと言われると、破壊力違うな……はは、えっと、ありがとう。えっと、なんか暑くなってきたね。窓開けようか」

 俺が提案すれば各務くんが窓を開けてくれた。

 その後、ホワイトデーにカニ鍋をした。もはや贅沢にしすぎて海鮮鍋になったけど。
 各務くんとは相変わらずコンビニで挨拶をする。
 俺と会っても「キモイ」とか言わなくなった。それがちょっと寂しいと言ったら「あんたマゾか?」と冷たい目で言われたけど、あの時はその罵倒じみた言葉すらも俺を救ってくれていたのだと各務くんに言えば、珍しく照れていた。

 新人が育って仕事の就業時間が安定した俺は、たまに夕飯を各務くんと食べる。今となると缶チューハイとおにぎりが夕飯だった生活を思い出せない。
 来週は映画に行く約束もしている。
 恋人と言えば恋人だし、仲がいい友達と言えばそんな感じの関係だ。

 今、各務くんと過ごすのがとても楽しいので、これ以上、関係がどうこうなるというのなら、またその時に考えようと思う。


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