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いつでも「好き」が溢れてる
4.「諦め悪いな」
しおりを挟むちょうどクリスマスが土曜日だったので俺と各務くんのデートは土日になったのだが、一般的には前日のイブが大切らしい。そのためか、谷内くんは金曜のクリスマスイブに有給を取っていた。
いつも通り各務くんは深夜バイト明けなので、待ち合わせは昼過ぎである。
俺のデートプランではクリスマスプレゼントを探しつつ買い物をして、ちょっと高級なホテルでディナーを食べ、部屋へ行くというコースだ。翌日は近場のベイエリアや観光スポットなど周り、帰宅するというもの。
これなら今日プレゼントが買えなくても、明日また選ぶチャンスがある。
各務くんへのプレゼントはいくつか候補があるんだけど、欲を言えばそれら全部を贈りたい。
「……おはよ」
「おはよう、各務くん」
14時に待ち合わせ場所である駅で待っていれば、寝起きなのだろう少し気怠げな各務くんがやってきた。コートの前が開いているので装いが見える。今日のデートプランを伝えてあるからか、ジャケットを着用しズボンもジーンズではない。ピアスもいつもよりはだいぶシンプルで、パッと見ではつけてる数すら少なく見える。
眠そうではあるが、髪型はすっきりとセットされ、表情さえ見なければ寝起きのようには思えない。
「なんか、すごい、デートって感じの服だね……」
思わず見惚れて呟けば「あっ?」と不機嫌全開な各務くんに低い声で凄まれた。すみません。どんな格好してても各務くんは各務くんでした。
「馬鹿にしたわけじゃなくて、いつもみたいなカジュアルな服だったら、まず服を見に行ってもいいかなって思ってたんだよ」
「……まさか、一式買うとか言わないよな?」
「買いたかったけど、今日の各務くんすっごいカッコいいから着替えるなんて勿体ないし、今回は残念だけど諦める」
「いや、ずっと諦めてていいから」
正直に言えば、俺は着られればいいと思うタイプでおしゃれにはまったく興味がない。逆に各務くんはそれなりのこだわりはあるんだろう。だから突然服を贈るなんて出来ないけど、一緒に行けばプレゼント出来るかと思った。
「心配しなくても俺の趣味を押し付けたりはしないから。今度一緒に買いに行こうね」
「あんたの服を俺が買ってもいいなら考える」
うっ、各務くんに余計な物を買わせるなんて財政的な負担になることはさせられない。
「……各務くんの財力に余裕ができてからにする」
「ぶっ、諦め悪いな」
俺が大真面目に返事をしたというのに各務くんは吹き出して笑った。口は悪いが嫌がっているどころか嬉しそうな顔をしているので、迷惑ではないのだろう。今後の各務くんとのデートプランに、洋服を見に行くも追加しておくことにした。
昼過ぎからデートを始めた俺達は予定通りショッピングをしつつ、ホテルへ向かうことにした。
プレゼントプランにあった洋服が却下となったけど、今日の各務くんの装いに合わせてカシミアのマフラーを買った。スーツでも違和感なく使えるやつである。
「就活の時にこういうの一つあると便利だよ」
「嫌なこと思い出させるな……つか、その言い方、親戚のおじさんみたい」
各務くんの言葉に地味にショックを受けていれば、各務くんに連れられてネクタイコーナーへ移動する。
「こっちより、こっちのが似合うけど、あんたはどっちが好き?」
各務くんは俺を姿見の前に立たせると、手際よくいくつもネクタイを俺の首元にあてていく。
「え? あ、そうだな、そっちのグリーンの方が好きかな」
「ん、俺もそう思った」
そう言う店員さんにラッピングまで頼み、即座に購入している。
「ええ、待って各務くんは買わなくても……」
「何言ってんだよ。クリスマスプレゼント買うための買い物だろ。……俺だってあんたに贈りたいし。まあ、あんたよりだいぶ安くなるけど」
各務くんはそういうとちょっと照れくさそうに笑った。
ズギュン! となにかヤバいものが俺の心に打ち込まれた気がする。予定外の各務くんの優しさと格好良さと可愛さに、目眩を起こすかと思った。
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