11 / 38
7月1日月曜日【ディアファン】
しおりを挟む
まず先に言っておくよ。
ボクがキミの言葉に怒ることは無いし、気に障る事なんて全然ないから。
でも本当に良かった。
キミに気持ち悪いって言われるのは、本当に耐えられそうにないから。
今まで生きてきた中で、何度も何度も言われてきた言葉だし、そう言われることに耐性はついているつもりだけれど、傷つかないわけじゃないし、辛くないわけじゃないもの。
特にキミにそう言われると考えただけで、恐ろしくて消えてなくなりたくなる。
まあ、透明だから同じなんだけれど。
人って結局、自分の経験や知識の範疇でしか考えることはできない生き物なんだよね。
稀に「ひらめき」みたいなのを実現する天才もいるけれど、それはレアでしょ?
透明か透明じゃないかという違いだけで、キミとボクの間にはものすごく深い「未知」が存在するよね。
それを少しずつ、時間をかけて教え合いながら、距離が縮まると嬉しいな。
では胸のつかえが無くなったキミの質問に答えるね。
まずはキミたち「不透明人間」と、ボクたち「透明人間」の中間のような存在である「半透明人間」について。
それにしても俊逸な表現を思いついたねぇ、感心しました。
ボクたちという存在はかなり歴史を持っているという話はしたよね。
見えないボクたちはどんな学校にも行き放題だし、どんな場所でも(とはいっても絶対に入れないところもたくさんあるよ。それは物理的にね)行きたければ行けるんだよ。
ボクは「光」に興味を覚えたから、大学に行って何度も何度も同じ授業を受けた。
もう納得するまで何度もね。
いいなって思った? 確かに得だよね、授業料も要らないし、試験もない。
でも質問することはできないんだ。
何度聞いてもわからないところは、自分で調べるしかないんだよ。
だから図書館にも良く行く。
昼間ではなく夜中にね。
だって本が浮かんでいると怖いでしょ?
だから閉館時間前に入って、翌朝の開館時間に帰るんだ。
警備員さんの巡回時間も把握しているから、驚かしたり迷惑を掛けないように配慮すれば、
納得できるまで調べることができる。
絶対に内緒だけれど、気になる本を持ち帰ってじっくりと読んだりすることもあるよ。
誤解しないでね? 絶対に返却しているし破損もしてないから。
キミたちと同じで、ボクたちの中にもたまに天才的頭脳を持っている者が生まれたりする。
しかもボクたちは勉強し放題でしょ? タダで(笑)そりゃ伸びないほうがおかしいよね。
そんな天才の中の一人が「透明人間」の細胞の謎を解き明かし、それに着色をする方法を編み出したんだ。
でもその頃はまだ「透明人間」という存在は社会的に認知されていなかった。
彼は単独で研究をしていたから、治験は自分の体を使うしかないよね。
当然だけれど、失敗もあるし、予想外の出来事もあったんだ。
その結果「不透明が長続きはしない薬」まではできたんだ。
それがキミの見た「半透明人間」というわけさ。
その薬を飲んだら、ボクたちを形成している「透過メラニン」が不透過になるんだけれど、その効果は24時間しかもたないんだ。
開発者によると、ボクたちの体は驚くほど代謝が良いらしいよ。
その代謝によって、不透明が透明に戻る途中の状態、それが「半透明人間」だよ。
開発者に聞いたのだけれど、その薬に副作用は無いらしい。
というのも、薬品会社に忍び込んで……なんて、いくら何でも無理だし犯罪でしょ?
彼らはものすごく努力して自生している薬草だけで開発したんだ。
すごい根性だよね。
そして、開発者は世界に散らばっている同種族に、薬を無料配布すると宣言した。
凄い反響で、特にヨーロッパに定住している仲間からは、依頼が殺到した。
そして「透明人間保護法」が各国で広まっていったんだよ。
日本は遅い方だったんだ。
でもね、保護法が制定されたら、薬の依頼はほとんどこなくなった。
みんな「透明人間」の存在の認知は望んでいたけれど、「透明人間」が嫌だったわけではないということだよね。
ボクらにはボクらの文化がある。
そしてキミらにもキミらの文化があるよね。
どちらかに統一する必要は無いよねってことさ。
そこで絶対的に必要なのは「相互理解」だけれど、これがなかなか難しい。
最初の方に書いたけれど、人って結局のところ、自分の経験や知識の範疇でしか想像も妄想もできない生き物なんだよ。
悲観しているわけじゃなく、これが現実ということ。
まあ中には、キミみたいに好奇心旺盛な人もいるわけだしね。
さっきの薬のことだけれど、開発のきっかけは「恋」だったんだよ。
その天才科学者は「不透明人間」の女性に恋をした。
いつもきれいに着飾っているその女性の横にいるだけで幸せだったのに、ある日急に全裸でたっている自分に羞恥を覚えてしまったんだって。
聖書の中のアダムとイヴが、林檎を食べた時のような感じだって言ってた。
でもその考えは自分たちのアイデンティティの否定に繋がるだろ?
だからすごく悩んだみたい。
でも彼の恋心は消せなかった。
彼女に「自分の存在」を認識してほしいという一心で、世界中を旅して薬を開発したんだ。
なんでそれほど詳しいのかって?
その開発者がボクの叔父だからです。
その恋はどうなったか知りたいでしょう?
それは次回のお楽しみに取っておきましょう。
そろそろ梅雨も終わるかな。
早く終わると嬉しいな。
ではまた。
ボクがキミの言葉に怒ることは無いし、気に障る事なんて全然ないから。
でも本当に良かった。
キミに気持ち悪いって言われるのは、本当に耐えられそうにないから。
今まで生きてきた中で、何度も何度も言われてきた言葉だし、そう言われることに耐性はついているつもりだけれど、傷つかないわけじゃないし、辛くないわけじゃないもの。
特にキミにそう言われると考えただけで、恐ろしくて消えてなくなりたくなる。
まあ、透明だから同じなんだけれど。
人って結局、自分の経験や知識の範疇でしか考えることはできない生き物なんだよね。
稀に「ひらめき」みたいなのを実現する天才もいるけれど、それはレアでしょ?
透明か透明じゃないかという違いだけで、キミとボクの間にはものすごく深い「未知」が存在するよね。
それを少しずつ、時間をかけて教え合いながら、距離が縮まると嬉しいな。
では胸のつかえが無くなったキミの質問に答えるね。
まずはキミたち「不透明人間」と、ボクたち「透明人間」の中間のような存在である「半透明人間」について。
それにしても俊逸な表現を思いついたねぇ、感心しました。
ボクたちという存在はかなり歴史を持っているという話はしたよね。
見えないボクたちはどんな学校にも行き放題だし、どんな場所でも(とはいっても絶対に入れないところもたくさんあるよ。それは物理的にね)行きたければ行けるんだよ。
ボクは「光」に興味を覚えたから、大学に行って何度も何度も同じ授業を受けた。
もう納得するまで何度もね。
いいなって思った? 確かに得だよね、授業料も要らないし、試験もない。
でも質問することはできないんだ。
何度聞いてもわからないところは、自分で調べるしかないんだよ。
だから図書館にも良く行く。
昼間ではなく夜中にね。
だって本が浮かんでいると怖いでしょ?
だから閉館時間前に入って、翌朝の開館時間に帰るんだ。
警備員さんの巡回時間も把握しているから、驚かしたり迷惑を掛けないように配慮すれば、
納得できるまで調べることができる。
絶対に内緒だけれど、気になる本を持ち帰ってじっくりと読んだりすることもあるよ。
誤解しないでね? 絶対に返却しているし破損もしてないから。
キミたちと同じで、ボクたちの中にもたまに天才的頭脳を持っている者が生まれたりする。
しかもボクたちは勉強し放題でしょ? タダで(笑)そりゃ伸びないほうがおかしいよね。
そんな天才の中の一人が「透明人間」の細胞の謎を解き明かし、それに着色をする方法を編み出したんだ。
でもその頃はまだ「透明人間」という存在は社会的に認知されていなかった。
彼は単独で研究をしていたから、治験は自分の体を使うしかないよね。
当然だけれど、失敗もあるし、予想外の出来事もあったんだ。
その結果「不透明が長続きはしない薬」まではできたんだ。
それがキミの見た「半透明人間」というわけさ。
その薬を飲んだら、ボクたちを形成している「透過メラニン」が不透過になるんだけれど、その効果は24時間しかもたないんだ。
開発者によると、ボクたちの体は驚くほど代謝が良いらしいよ。
その代謝によって、不透明が透明に戻る途中の状態、それが「半透明人間」だよ。
開発者に聞いたのだけれど、その薬に副作用は無いらしい。
というのも、薬品会社に忍び込んで……なんて、いくら何でも無理だし犯罪でしょ?
彼らはものすごく努力して自生している薬草だけで開発したんだ。
すごい根性だよね。
そして、開発者は世界に散らばっている同種族に、薬を無料配布すると宣言した。
凄い反響で、特にヨーロッパに定住している仲間からは、依頼が殺到した。
そして「透明人間保護法」が各国で広まっていったんだよ。
日本は遅い方だったんだ。
でもね、保護法が制定されたら、薬の依頼はほとんどこなくなった。
みんな「透明人間」の存在の認知は望んでいたけれど、「透明人間」が嫌だったわけではないということだよね。
ボクらにはボクらの文化がある。
そしてキミらにもキミらの文化があるよね。
どちらかに統一する必要は無いよねってことさ。
そこで絶対的に必要なのは「相互理解」だけれど、これがなかなか難しい。
最初の方に書いたけれど、人って結局のところ、自分の経験や知識の範疇でしか想像も妄想もできない生き物なんだよ。
悲観しているわけじゃなく、これが現実ということ。
まあ中には、キミみたいに好奇心旺盛な人もいるわけだしね。
さっきの薬のことだけれど、開発のきっかけは「恋」だったんだよ。
その天才科学者は「不透明人間」の女性に恋をした。
いつもきれいに着飾っているその女性の横にいるだけで幸せだったのに、ある日急に全裸でたっている自分に羞恥を覚えてしまったんだって。
聖書の中のアダムとイヴが、林檎を食べた時のような感じだって言ってた。
でもその考えは自分たちのアイデンティティの否定に繋がるだろ?
だからすごく悩んだみたい。
でも彼の恋心は消せなかった。
彼女に「自分の存在」を認識してほしいという一心で、世界中を旅して薬を開発したんだ。
なんでそれほど詳しいのかって?
その開発者がボクの叔父だからです。
その恋はどうなったか知りたいでしょう?
それは次回のお楽しみに取っておきましょう。
そろそろ梅雨も終わるかな。
早く終わると嬉しいな。
ではまた。
2
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる