22 / 38
8月25日日曜日 【はるか】
しおりを挟む
東京から戻ってきたはるかは、休暇の穴埋めなのか、連日出勤し仕事をこなしています。
お土産に配った東京銘菓の残りをつまみながら、自分で淹れたインスタントコーヒーを眺めて溜息を吐きました。
ちょっと彼女の思考の中に入ってみましょうか。
奈穂美、頑張ってたなぁ。
彼女一人に押し付けるのって、絶対に間違ってると思う。
そりゃ口ではフォローしたり励ましたりしてるみたいだけれど、それなら一緒に授業に出ろって感じだもん。
どうやったら透明な子達を認識することができるのかって悩んでたなぁ。
ディアファンさんを紹介するなんて言っちゃったけど、きっと嫌がるよね……
そもそもディアファンさんって目立つの嫌がる感じだし。
拙いことを約束しちゃったかも。
でも同じ教師として頑張っている奈穂美の力にもなりたいっていうのは本音だし、だからといってせっかく仲良くなれたディアファンさんと疎遠になるのは悲しい。
どうすれば良いんだろ。
どうやら彼女も悩んでいるようですね。
ディアファンはすでに奈穂美さんと面識があるようですが、それは透明側の一方的な認識ですから、不透明側の人は会っているという感覚すらありません。
第三者のこちらから言うなら、決定的に対話が足りていないと思うのですが。
うん、やっぱり奈穂美は放っておけないよ。
こっちでも始まるって言ったし、ディアファンさんもかかわるって言ってたもんね、現状は知っていた方がディアファンさんのためにもなるはずだし。
でもどうやって連絡をとればいい?
今朝も百葉箱にハンカチは無かったし……
そこで彼女は「交換日記」ではなく「手紙」を書くことにしたようです。
こっそり覗いてみましょう。
この盗み見るという背徳感はなかなかでしょ?
ディアファンさん
突然手紙なんてどうした? って思われるのを承知でペンをとりました。
以前にお話ししていた幼馴染の奈穂美のことで、どうしてもディアファンさんにお話ししなくちゃって思ったのです。
東京に行ったのは今月の今月の5日から10日までです。
到着した日は皇居のあたりを観光し、6日から8日の間に私は千葉へ行きました。
母と祖母は連日歌舞伎座に通い、桟敷席や花道横の席で伝統芸能を満喫したようです。
千葉に行った2日目に、奈穂美の勤める小学校で夏休み中の登校日がありました。
校長先生から連絡を入れてもらっていたので、その様子を見学することもできたのです。
透明な子たちは、教壇正面の最前線に並んで座っていました。
本当に制服が浮いているような感じでしたが、気を遣ってくれているのでしょう、子供たちは暑いのに長袖を着て手袋をはめています。
わたしは熱中症にならないか心配してしまいました。
ディアファンさんとは信頼関係ができていると思うので、正直に書きますね。
見学した感想は「むしろ透明なままでいた方が良いのではないか」です。
はっきり言って不透明な子供たちはざわついていました。
教師の話など聞く雰囲気ではなかったです。
チラチラと浮いて見える制服に視線を送り、時々動く体に気をとられています。
当たり前ですよね、事情を知っている私でさえ気になってずっと見てしまったのですから。
そこにいるという意識さえ持たせれば、その存在を目視する必要は無いんじゃないかな。
わたしはそう思いました。
でも見えないとぶつかったりする危険性も増えますし、いじめの対象になっているとしても教師側が気付けないというデメリットもあります。
見えると子供たちは落ち着かず、見えないと教師側が不安になる……
本当にこの施策って何なのでしょう。
何を目的にしているのか、どのラインを成功基準にしているのかさっぱりわかりません。
これは現場にいる奈穂美も言っていました。
彼女は「とにかく普通に授業を進めればいいから」としか言われていないそうです。
腹立たしいですよね。
彼女の悩みを聞き、現状を見て(たった数時間の見学でしたが)改めて思いました。
もしかすると政府の人たちって「共存」の意味を取り違えているのではないでしょうか。
互いを知り、互いを尊重するのは大切ですし、必要だと思います。
でもそこの「同じように暮らす」必要性は無いんじゃないかなって思ったのです。
ちなみに海外ではこのような施策ってありますか?
あるとしたらどのような進め方をしているのでしょう。
ご存じであればご教示ください。
ディアファンさん。
わたしはあなたに謝らなくてはなりません。
悩んで苦しんでいる奈穂美に、あなたという存在のことを明かしてしまいました。
彼女は是非助言が欲しいので、あなたを紹介して欲しいと言っています。
それはすべてわたしが口を滑らせた結果です。
本当にごめんなさい。
でもわたしは彼女の辛さがわかるのです。
教師として本気で子供たちに向き合っているからこその悩みだと思います。
嫌なら断ってくれてぜんぜん構いません。
もしも良いよと言ってくださるのなら、彼女はこちらに来ると言っています。
ご一考いただけませんか?
この手紙を書くにあたって、わたしは本当に悩みました。
もしあなたが怒って「もう交換日記も止める」なんて言われたらどうしよう……
やめないまでも「もう何も話すのはやめて、軽い話題だけにしよう」って思われたらどうしよう……
でもこうして手紙を書きました。
日記に書かなかったのは、私が臆病だからです。
ハンカチを結びに来たあなたが、この手紙に気付いてくれることを祈っています。
まだまだ暑い日が続きます。
お忙しいとは思いますが、体には気を付けて無理はしないでくださいね。
はるか
どうやらはるかちゃんは、相当悩んだみたいですね。
日記ではなく手紙にしたのはどういう心境なのでしょう。
手紙の中では「自分が臆病だから」と書いていましたね。
今回の内容がずっと残るのが怖いということでしょうか?
真相は彼女にしかわかりません。
あなたならどう想像しますか?
お土産に配った東京銘菓の残りをつまみながら、自分で淹れたインスタントコーヒーを眺めて溜息を吐きました。
ちょっと彼女の思考の中に入ってみましょうか。
奈穂美、頑張ってたなぁ。
彼女一人に押し付けるのって、絶対に間違ってると思う。
そりゃ口ではフォローしたり励ましたりしてるみたいだけれど、それなら一緒に授業に出ろって感じだもん。
どうやったら透明な子達を認識することができるのかって悩んでたなぁ。
ディアファンさんを紹介するなんて言っちゃったけど、きっと嫌がるよね……
そもそもディアファンさんって目立つの嫌がる感じだし。
拙いことを約束しちゃったかも。
でも同じ教師として頑張っている奈穂美の力にもなりたいっていうのは本音だし、だからといってせっかく仲良くなれたディアファンさんと疎遠になるのは悲しい。
どうすれば良いんだろ。
どうやら彼女も悩んでいるようですね。
ディアファンはすでに奈穂美さんと面識があるようですが、それは透明側の一方的な認識ですから、不透明側の人は会っているという感覚すらありません。
第三者のこちらから言うなら、決定的に対話が足りていないと思うのですが。
うん、やっぱり奈穂美は放っておけないよ。
こっちでも始まるって言ったし、ディアファンさんもかかわるって言ってたもんね、現状は知っていた方がディアファンさんのためにもなるはずだし。
でもどうやって連絡をとればいい?
今朝も百葉箱にハンカチは無かったし……
そこで彼女は「交換日記」ではなく「手紙」を書くことにしたようです。
こっそり覗いてみましょう。
この盗み見るという背徳感はなかなかでしょ?
ディアファンさん
突然手紙なんてどうした? って思われるのを承知でペンをとりました。
以前にお話ししていた幼馴染の奈穂美のことで、どうしてもディアファンさんにお話ししなくちゃって思ったのです。
東京に行ったのは今月の今月の5日から10日までです。
到着した日は皇居のあたりを観光し、6日から8日の間に私は千葉へ行きました。
母と祖母は連日歌舞伎座に通い、桟敷席や花道横の席で伝統芸能を満喫したようです。
千葉に行った2日目に、奈穂美の勤める小学校で夏休み中の登校日がありました。
校長先生から連絡を入れてもらっていたので、その様子を見学することもできたのです。
透明な子たちは、教壇正面の最前線に並んで座っていました。
本当に制服が浮いているような感じでしたが、気を遣ってくれているのでしょう、子供たちは暑いのに長袖を着て手袋をはめています。
わたしは熱中症にならないか心配してしまいました。
ディアファンさんとは信頼関係ができていると思うので、正直に書きますね。
見学した感想は「むしろ透明なままでいた方が良いのではないか」です。
はっきり言って不透明な子供たちはざわついていました。
教師の話など聞く雰囲気ではなかったです。
チラチラと浮いて見える制服に視線を送り、時々動く体に気をとられています。
当たり前ですよね、事情を知っている私でさえ気になってずっと見てしまったのですから。
そこにいるという意識さえ持たせれば、その存在を目視する必要は無いんじゃないかな。
わたしはそう思いました。
でも見えないとぶつかったりする危険性も増えますし、いじめの対象になっているとしても教師側が気付けないというデメリットもあります。
見えると子供たちは落ち着かず、見えないと教師側が不安になる……
本当にこの施策って何なのでしょう。
何を目的にしているのか、どのラインを成功基準にしているのかさっぱりわかりません。
これは現場にいる奈穂美も言っていました。
彼女は「とにかく普通に授業を進めればいいから」としか言われていないそうです。
腹立たしいですよね。
彼女の悩みを聞き、現状を見て(たった数時間の見学でしたが)改めて思いました。
もしかすると政府の人たちって「共存」の意味を取り違えているのではないでしょうか。
互いを知り、互いを尊重するのは大切ですし、必要だと思います。
でもそこの「同じように暮らす」必要性は無いんじゃないかなって思ったのです。
ちなみに海外ではこのような施策ってありますか?
あるとしたらどのような進め方をしているのでしょう。
ご存じであればご教示ください。
ディアファンさん。
わたしはあなたに謝らなくてはなりません。
悩んで苦しんでいる奈穂美に、あなたという存在のことを明かしてしまいました。
彼女は是非助言が欲しいので、あなたを紹介して欲しいと言っています。
それはすべてわたしが口を滑らせた結果です。
本当にごめんなさい。
でもわたしは彼女の辛さがわかるのです。
教師として本気で子供たちに向き合っているからこその悩みだと思います。
嫌なら断ってくれてぜんぜん構いません。
もしも良いよと言ってくださるのなら、彼女はこちらに来ると言っています。
ご一考いただけませんか?
この手紙を書くにあたって、わたしは本当に悩みました。
もしあなたが怒って「もう交換日記も止める」なんて言われたらどうしよう……
やめないまでも「もう何も話すのはやめて、軽い話題だけにしよう」って思われたらどうしよう……
でもこうして手紙を書きました。
日記に書かなかったのは、私が臆病だからです。
ハンカチを結びに来たあなたが、この手紙に気付いてくれることを祈っています。
まだまだ暑い日が続きます。
お忙しいとは思いますが、体には気を付けて無理はしないでくださいね。
はるか
どうやらはるかちゃんは、相当悩んだみたいですね。
日記ではなく手紙にしたのはどういう心境なのでしょう。
手紙の中では「自分が臆病だから」と書いていましたね。
今回の内容がずっと残るのが怖いということでしょうか?
真相は彼女にしかわかりません。
あなたならどう想像しますか?
3
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる