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【第1章 】 顔を隠して、声だけで世界とつながるはじまり
4 匿名配信の衝撃と、最初のコメント
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「こん……こんにちは……」
配信画面には、自作の簡単なアバターが映っている。と言っても無料のプリセットを少しいじっただけの、ピンク色の髪をしたデフォルメキャラ。俺の外見をイメージしていなくもないが、あくまでアニメ寄りの絵柄にした。
マイク越しに出す声は緊張で上ずってしまい、さっそく噛みそうになる。
視聴者数は1……いや0と1を行ったり来たりしている。もしかすると自分自身のアクセスがカウントされているだけかもしれない。
それでも、誰かが見ているかもしれない――そう思うと、不思議と胸がざわめく。
「あ、えーっと……初めまして。なんて呼べばいいんだろう……俺の配信だから、俺が自己紹介しなきゃね」
たどたどしく言葉を並べる。どこかで聞いた初配信のテンプレを思い出しながら、とにかくしゃべる。
名前をどうするか決めていなかったから、とりあえず「ユウマ」という仮名を名乗ることにした。本名“悠真”と同じ読みだけど、まあいいだろう。ほかに思いつかなかったのだから仕方ない。
「えっと、俺はユウマって言います。高校……いや、今は行ってないんだけど、いちおう高校一年生です。あ、顔出しはしません。絶対にしないです。ごめんなさい」
自分で言いながら“絶対”という言葉に力がこもるのを感じる。声が裏返りそうになるのを必死で抑えた。
視聴者数は……今は0だ。もしかしたら一瞬入っては出ていった人がいるのかもしれない。孤独な部屋で独りごとを呟いているような感じは、逆に気楽でもあった。
「えーっと……好きなアニメは色々あるけど、一番最近ハマってるのは、ロボット系のやつですね。名言多いし、キャラの成長が熱い。俺、ああいうの好きなんですよ。“俺を信じろ、俺がお前を信じるように”ってやつ、わかる人いるかな?」
自分が一番好きな某熱血アニメのセリフを持ち出してみる。誰かが引っかかってくれたらいいな、と思いながら。
数分ほどそんなふうに独りごとを続けていると――画面上にコメントが一つ、ポンと表示された。
<初見です! 声いいですね>
瞬間、俺は心臓が止まりそうになった。視聴者がいた。コメントがついた。
当たり前のことなのに、初めての経験にドキッとする。震える指でコメントをクリックし、マイクに向かってお礼を言おうとして声が詰まる。
でも、なんとか搾り出した。
「あ、コメントありがとうございます。は、初見さんいらっしゃい……!」
声がいいと言われた。今まで“顔”ばかりを話題にされてきた俺にとって、「声いいね」という言葉は新鮮で、そしてものすごく嬉しかった。
そうか、この人には俺の顔が見えていないんだ。見えているのは“声”と、デフォルメされたアバターだけ。
だからこそ、顔のせいでからかわれることもない。そんな単純な事実が、こんなにも救いになるなんて。まさか、声を褒められる日が来るとは思わなかった。
「えっと、ありがと……えーっと、そう言ってもらえると、なんか嬉しい……」
間の抜けた返事になってしまったが、どうにか続ける。すると、また別のユーザーからコメントが来る。
<マイクがいいのか、声がクリアで聞きやすい~>
たぶん、それは叔父が持っていたそこそこのクラスのコンデンサーマイクのおかげだろう。けれど、それも含めて「配信者ユウマ」の武器になっている。
俺は思ったよりも軽く息ができるようになった。この部屋の空気が変わったような気さえする。
「よかったら、今後もアニメとかマンガの話を中心に配信していくつもりなんで、気軽にコメントください」
コメントはそんなに多くないけれど、一人でも誰かがリアルタイムで“聞いて”くれている。その事実が俺の心を温める。まるで真っ暗な部屋に、一筋の光が差し込んでくるようだ。
配信ソフトのタイムカウンターが30分を指し、一旦ここで切り上げようと思ったその時。
<また来ます! 配信楽しみにしてますね!>
<声ほんとに落ち着く~応援してます!>
そんなコメントが続けて表示された。ああ、こんな俺でも“誰か”とつながれた。顔を出さなくても、こんなに優しい言葉をかけてくれる人がいる。――なんだろう、この胸に込み上げるものは。
配信終了ボタンを押したあと、俺は呆然と座り込んだ。これが“誰かに見られる”という感覚。学校の教室で感じた苦しさとはまるで違う、優しさに満ちた感覚だった。
配信画面には、自作の簡単なアバターが映っている。と言っても無料のプリセットを少しいじっただけの、ピンク色の髪をしたデフォルメキャラ。俺の外見をイメージしていなくもないが、あくまでアニメ寄りの絵柄にした。
マイク越しに出す声は緊張で上ずってしまい、さっそく噛みそうになる。
視聴者数は1……いや0と1を行ったり来たりしている。もしかすると自分自身のアクセスがカウントされているだけかもしれない。
それでも、誰かが見ているかもしれない――そう思うと、不思議と胸がざわめく。
「あ、えーっと……初めまして。なんて呼べばいいんだろう……俺の配信だから、俺が自己紹介しなきゃね」
たどたどしく言葉を並べる。どこかで聞いた初配信のテンプレを思い出しながら、とにかくしゃべる。
名前をどうするか決めていなかったから、とりあえず「ユウマ」という仮名を名乗ることにした。本名“悠真”と同じ読みだけど、まあいいだろう。ほかに思いつかなかったのだから仕方ない。
「えっと、俺はユウマって言います。高校……いや、今は行ってないんだけど、いちおう高校一年生です。あ、顔出しはしません。絶対にしないです。ごめんなさい」
自分で言いながら“絶対”という言葉に力がこもるのを感じる。声が裏返りそうになるのを必死で抑えた。
視聴者数は……今は0だ。もしかしたら一瞬入っては出ていった人がいるのかもしれない。孤独な部屋で独りごとを呟いているような感じは、逆に気楽でもあった。
「えーっと……好きなアニメは色々あるけど、一番最近ハマってるのは、ロボット系のやつですね。名言多いし、キャラの成長が熱い。俺、ああいうの好きなんですよ。“俺を信じろ、俺がお前を信じるように”ってやつ、わかる人いるかな?」
自分が一番好きな某熱血アニメのセリフを持ち出してみる。誰かが引っかかってくれたらいいな、と思いながら。
数分ほどそんなふうに独りごとを続けていると――画面上にコメントが一つ、ポンと表示された。
<初見です! 声いいですね>
瞬間、俺は心臓が止まりそうになった。視聴者がいた。コメントがついた。
当たり前のことなのに、初めての経験にドキッとする。震える指でコメントをクリックし、マイクに向かってお礼を言おうとして声が詰まる。
でも、なんとか搾り出した。
「あ、コメントありがとうございます。は、初見さんいらっしゃい……!」
声がいいと言われた。今まで“顔”ばかりを話題にされてきた俺にとって、「声いいね」という言葉は新鮮で、そしてものすごく嬉しかった。
そうか、この人には俺の顔が見えていないんだ。見えているのは“声”と、デフォルメされたアバターだけ。
だからこそ、顔のせいでからかわれることもない。そんな単純な事実が、こんなにも救いになるなんて。まさか、声を褒められる日が来るとは思わなかった。
「えっと、ありがと……えーっと、そう言ってもらえると、なんか嬉しい……」
間の抜けた返事になってしまったが、どうにか続ける。すると、また別のユーザーからコメントが来る。
<マイクがいいのか、声がクリアで聞きやすい~>
たぶん、それは叔父が持っていたそこそこのクラスのコンデンサーマイクのおかげだろう。けれど、それも含めて「配信者ユウマ」の武器になっている。
俺は思ったよりも軽く息ができるようになった。この部屋の空気が変わったような気さえする。
「よかったら、今後もアニメとかマンガの話を中心に配信していくつもりなんで、気軽にコメントください」
コメントはそんなに多くないけれど、一人でも誰かがリアルタイムで“聞いて”くれている。その事実が俺の心を温める。まるで真っ暗な部屋に、一筋の光が差し込んでくるようだ。
配信ソフトのタイムカウンターが30分を指し、一旦ここで切り上げようと思ったその時。
<また来ます! 配信楽しみにしてますね!>
<声ほんとに落ち着く~応援してます!>
そんなコメントが続けて表示された。ああ、こんな俺でも“誰か”とつながれた。顔を出さなくても、こんなに優しい言葉をかけてくれる人がいる。――なんだろう、この胸に込み上げるものは。
配信終了ボタンを押したあと、俺は呆然と座り込んだ。これが“誰かに見られる”という感覚。学校の教室で感じた苦しさとはまるで違う、優しさに満ちた感覚だった。
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