不登校男子、顔出しナシでバズった結果→元委員長Vと恋愛コラボするハメに

ハリネズミの肉球

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【第6章 】フェス明けの朝、甘く危うい幕開け

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1. 「教室での衝撃告白──瑞希、委員長と名乗る」
 ――数日後の朝。
 瑞希(MIZUKI)はいつもと違う緊張に胸を震わせながら学校へ向かっていた。先生を通じてアポをとった“教室での時間”――そこで彼女は、自分が“あの委員長”であり、今は「MIZUKI」というVtuber活動を続けている事実を一部クラスメイトに打ち明けるつもりだ。
 久々に襟のきっちりした制服姿で登校する自分を、どこか客観的に見ているような感覚がある。教室へ足を踏み入れると、数人の視線が刺さる。すでに彼女に“疑惑”の目を向けている同級生たちがいるからだ。
 昼休み、担任の先生が空き教室で時間をとってくれた。集まったのはクラスの主要メンバー――瑞希が信頼している友人数名と、噂を強く疑っている生徒数名。合計10人ほどが机を円に並べて座っている。
 瑞希は人前で喋るのが得意だと思われがちだが、それは“委員長キャラ”の仮面をかぶっていたから。今、本当の自分の言葉で話すのは、ものすごい勇気が要る。

「……私、篠原瑞希。実は、ネットで“MIZUKI”って名前で配信をしてきました」

 まずはっきりと名乗る。途端に場がざわめく。すでに知っていたという顔の子もいれば、「やっぱり……」と呆れたように眉をひそめる子もいる。
 瑞希は震えながら続ける。
 「中学の頃、私は“委員長”として、同じクラスの不登校の子を救えなかった。……そのことを今でも後悔してる。でも、配信を通じて、もう一度……自分の言葉で誰かを支えたいと思ったの。Vtuberなら顔を出さずに本音を言えるし、きっと怖くないと思った。けど……」
 やはり声が詰まる。胸が苦しくなって涙が滲むが、ここで止まるわけにはいかない。
 「けど、結局ここでも“委員長”時代の罪悪感を抱えたまま、何も言えないのは同じだった。だから……嘘をつきたくない。私がMIZUKIです。隠すのはもう、やめたい」
 瑞希が頭を下げると、数瞬の沈黙のあと、友人の一人が「私は応援するよ」と真っ先に言ってくれた。別の生徒は目を逸らしながら「え、でも……実際、不登校の子って、あんた無視してたんじゃ……?」と疑問を呈する。
 しかし、瑞希はその視線を逃げずに受け止める。
 「あの頃、私はクラスをまとめるのが仕事だと思ってた。でも、結局、いじめを止められなかった。……それでも今、私はやり直したい。配信の場所で“本当の私”として話したいし、誰かを救いたい。わがままだけど、止める気はない」
 震える声が、空き教室に静かに響く。先生は見守るだけで口を挟まない。
 一部の生徒は困惑したままだが、やがて何人かが「まあ、MIZUKIって結構有名だし、悪いわけじゃないんじゃ……?」と反応し始める。元クラスメイトと決定的な対立になるかと思いきや、意外にも賛否は半々。少なくとも、彼女を即座に攻撃しようという雰囲気ではなくなってきた。
 瑞希は息をつき、最後に「これから、もっといろいろ話していきたい。皆に迷惑かけるかもしれないけど……どうか、よろしくお願いします」と言って深く頭を下げた。
 完璧な和解ではない。疑問を抱えたままの生徒もいるし、陰口を叩く人もいるだろう。けれど、彼女が一歩踏み出したことは確かだった。“委員長”という檻を破り、本当の自分を少しだけ見せた瞬間。
 廊下に出たあと、肩が震えて止まらない。先生が「よく頑張ったな、篠原」と優しく声をかけるが、瑞希はぼんやりと頷くしかない。安堵と不安が同居し、心臓が爆発しそうだ。
 “もう逃げない。私はMIZUKI”――言い切った瑞希が、これからどんな道を辿るのかはまだわからない。でも、大きな歯車は確かに回り始めていた。

2. 「波紋広がる校内と、瑞希を責める同級生たち」
 瑞希が“委員長だった私がMIZUKIです”と打ち明けた翌日、学校内ではさまざまな反応が巻き起こった。
 「マジで本人だったのか……すげえじゃん」と好意的に受け取る生徒もいる一方で、「あの中学の不登校事件に関わったってこと? 結局、無視してたんでしょ?」と瑞希を責める声もある。
 クラスだけでなく、学年全体に噂が拡散し始め、「MIZUKIって委員長キャラだった人なんだって」「ユウマって人は不登校だった子らしい」など、事実と憶測が入り乱れる混乱状態だ。
 その日、放課後に瑞希が下駄箱へ向かうと、数人の女子が待ち伏せするようにして話しかけてきた。リーダー格らしき子が、鋭い目つきで口を開く。

「さっき聞いたんだけど、本当に“MIZUKI”やってるわけ? 有名らしいけど、裏ではいじめを黙認したんじゃないの? 委員長なのにさ」

 嫌な空気が漂う。瑞希は一瞬身構えたが、ここで引いては意味がないと覚悟していた。口角を強く引き締め、静かに答える。

「……たしかに、あの頃の私は何もできなかった。いじめを止められなかった。でも、だからって私が“いじめを肯定”してたわけじゃない。今はVの活動を通じて、同じ過ちを繰り返さないよう頑張ってる」

「ふーん、言うじゃん。でもさ、その子、結局不登校のまま高校にも来てないんでしょ? あんたが一言止めてれば変わったかもしれないのにさ。偽善だよね」

 痛いところを突かれる。瑞希の胸に鋭い痛みが走る。“一言止めていれば”――確かにそれがあの頃の後悔のすべてだ。
 しかし、今は黙らない。瑞希は目を伏せずに相手を見返す。

「……偽善かもしれない。だけど、もう後戻りはしたくないの。私はMIZUKIとして“自分らしく”声を出して、助けられなかった誰かを救いたい。もしそれが許せないなら、それはあなたの考え。私は私の道を行く」

 ズバッと切り返す言葉に女子たちは一瞬たじろぐが、「ふん、勝手にすれば」と鼻で笑って立ち去った。
 胸は苦しく痛むが、逃げずに言い返せたことがわずかな自信になる。もしかしたらこの先もっときつい言葉を浴びるかもしれない。それでも、委員長キャラに固執して黙り込んでいた頃より、はるかに前に進めている気がする。
 校門を出るころ、瑞希はスマホを取り出して“ユウマ”のアイコンを見つめた。
 彼に伝えたい。「私は、もう一度ちゃんとあなたを支えたいんだ」――それはかつて委員長として果たせなかった自分への償いであり、今は純粋な愛情に変わりつつある思い。
 風が吹いて髪を揺らす。どこか表情が晴れやかだ。傷ついたっていい、この道を進もう。そう改めて心に誓い、彼女は帰路についた。

3. 「陸、母の手術当日──決断を迫られたバイト先」
 同じ頃、陸(RIKU)は母親の手術当日を迎えていた。病院の待合室で付き添いながら、バイト先からの着信を無視してスマホを握りしめている。店長が「こんな忙しい日に休むのか」と怒っているのは想像に難くない。
 しかし陸にとっては、母を最優先するのが当然だ。金銭的に苦しいのはわかっていても、今ここで病院を離れるわけにはいかない。
 すると、待合室のベンチでスマホが再び振動し、今度は違う番号から電話がかかってきた。出ると、バイト先の同僚が小声で囁く。

「店長、激おこだよ。陸のシフト、誰がカバーするんだってさ。下手したらクビかもしれないけど……大丈夫?」

「……ああ。もうクビならクビで仕方ない。悪いけど、こっちも母ちゃん手術なんだ。動けないよ」

 それだけ言って通話を切り、陸は深いため息をつく。こんな仕打ちされたら生活はどうなる? だが、曲げられないものがある。それは家族を支えるという誓いでもあり、同時に自分の“踊り”を守るためでもある。
 ちょうどそのとき、母がストレッチャーで手術室へ運ばれていくのを目にし、陸は思わず「頑張れよ、母ちゃん……」と涙声で呟いた。
 バイト先の店長に怒られてクビになったら、さらに生活は苦しくなるかもしれない。だが、フェスを経験してなお踊る道を諦めず、家族も守ろうとする陸は、ここで逃げ出すわけにはいかないのだ。
 数時間後、手術はひとまず成功したと医師から説明を受け、陸は安堵のあまり腰を抜かしそうになった。それでも意識がまだ戻らない母のベッド脇に立ち、心底からほっと息をつく。
 この先の治療費やリハビリ、生活費はどうする? バイト先がダメなら新しい職場を探すか、あるいはユニット活動で何とか稼げる道を模索するか――考えることは山積みだ。
 でも、母の手がぬくもりを残しているのを感じられるだけで、今は少し報われた気がした。「俺は母ちゃんにも、自分の夢にも嘘をつきたくない」――その思いは固まっている。

4. 「女みたいな顔で何が悪い? 悠真、病院の廊下で吠える」
 陸の母親の手術が無事に終わった翌日、俺(悠真)は見舞いに行くため電車を乗り継いで病院へ向かった。
 もちろん“顔バレ”が怖いので帽子とマスク、さらにフードパーカーを重ねて完全防備だ。最初は渋ったが、陸が「来てくれ、母ちゃんにはお前の声を聞かせたいんだ」と頼むので決心した。
 病院のロビーはそこそこ人通りがあり、俺は挙動不審ぎみに隅を歩く。周りがこっちを見ないか気になって仕方ないが、ここで逃げたら何も変わらない。

「陸、今どこ?」

 メッセージを送ると、すぐに「病室の奥、4階の廊下」と返信が来た。俺は怖々とエレベーターに乗り、4階へ到着する。
 そこには疲れた顔の陸が椅子に座っていた。服装もラフなジャージ姿で、髪が少し乱れている。わずかに伸びた前髪が目を隠しかけているが、陸は俺を見て「よく来たな」と笑ってくれた。

「……大丈夫か? 母ちゃんは?」

「うん、だいぶ落ち着いた。意識も戻って、母ちゃんの口から『ありがとね』って言われたらもう涙止まんなくてさ。……ああ、ほんとありがとな。お前まで来てくれて」

 ホッと安堵し、隣に腰を下ろそうとしたその瞬間、後方から奇妙な笑い声が聞こえた。

「……あれ? もしかして“女みたいな顔”って噂のやつじゃね? ネットで見た写真そっくり……」

 振り返ると、中学時代、俺を執拗にからかっていたヤツらしき影が目に入った。まさかこんなところで再会? しかも2人組で何かの見舞いに来ている様子だが、俺の姿を見つけてニヤニヤ笑っている。
 一気に心臓が凍りつく。陸も気づいて「おい、何だこいつら」と警戒の目を向ける。
 すると、その中の1人が「久しぶり、悠真じゃん。“女顔V”だっけ? 写真拡散されたのにリアルで出歩くんだな」と相変わらずの嘲笑口調で近づいてくる。
 頭が真っ白になる。それでも、ここで逃げたら同じだ。陸が先に立ち上がり「テメェ……」と低い声で唸るが、相手はへらへら笑っている。

「な、病院だからって助かんないぞ? SNSにまた写真アップしたら面白そうだなー、ほんと顔キレイなんだろう?」

 頭がカッとなる。俺は思わず拳を握りしめながら、相手を睨んだ。

「……女みたいな顔で何が悪い? お前らが勝手に“キモい”とか言ってるだけだろ? 俺は俺の人生を好きに生きる。顔なんて関係ない!」

 声が廊下に響く。まわりの人が何事かと振り返るが、ここで引き下がるわけにはいかない。陸も「ああ、そいつはお前らのオモチャじゃねーんだよ」と背を向けずに応戦する。
 相手は「へっ、強気になったな。フェスで売名して舞い上がってるんじゃね?」とまだニヤついている。しかし、陸が「俺はここで母ちゃん看病中だ。文句あるなら外来て言え」と低く迫ると、さすがに引き気味だ。
 周囲の視線を感じたのか、その2人は「ったく、つまんねえ」と吐き捨てて去っていった。
 俺は膝が震えて力が入らない。あの時の恐怖がフラッシュバックして、正直倒れそうだ。だが、陸が「大丈夫か」と肩を支えてくれ、なんとか踏みとどまる。

「……悪い、俺、もう……心臓バクバクだよ」

「そりゃそうだ。でも言い返せたじゃん。“女みたいな顔で何が悪い”って、堂々と言ったじゃんか。……それでいいんだよ」

 陸の言葉に、涙がこぼれそうになる。ここは病院。大声を出しちゃいけない。でも、今ばかりは気がゆるんで嗚咽が止まらない。
 過去の首謀者に恐怖をぶつけられても、逃げなかった。それは大きな一歩のはず。俺は陸の手を借りて廊下の隅に移動し、荒い呼吸を整える。

“女みたいな顔で何が悪い? 俺はこれで生きていくんだ”
 何度もそう呟きながら、心を静める。中学の頃なら考えられなかった行動だ。俺は今、確かに変わり始めている……。

5. 「“お出迎え配信”を実現せよ──秘密ミーティングの夜」
 病院での一件から数日後。炎上は続くが、俺たちは瑞希が提案した「お出迎え配信」を現実的に進めようと動き始めた。小規模な会場で人数制限をかけ、完全マスク&帽子姿でファンに挨拶するイベント――いわば実験的な“リアル接触”企画だ。
 夜、グループ通話を開く。陸は母の退院準備やバイト退職の相談で多忙だが、なんとか時間を作って参加してくれた。

「もしこれが成功すれば、俺らが“顔を隠したままでもいい”って証明できるかもしれない。アンチからの『顔見せろ』に対して、一つの答えになるってわけだな」

 陸がそうまとめると、瑞希もうなずく。「うん。リアルで姿を見せるんだけど、完璧にマスクやフードで隠す。多分、面白がってくれる人も多いはず。それに、警備面はしっかり固めるし、人数を絞ればアットホームにできるよ」

「確かに“実在感”を示せるのは大きいよな。やっぱり俺たちが本当にいる人間だってわかれば、炎上も鎮静化するかもしれないし……。でも、危険もあるだろ?」

 俺の不安に、瑞希は一瞬黙るがすぐに続ける。「もちろん危険はある。でも、このままネットだけで『晒せ』『出てこい』と騒がれてる状況で黙ってても何も進まない。それに、委員長として名乗ったからには、私はもう隠れられないと思ってる」
 その目には揺るぎない決意がある。俺は無言で深呼吸し、最後に陸がまとめる。

「じゃあ、やるか。“お出迎え配信”って奴。母ちゃんが退院したら、俺も動ける時間が増えるから……そんときに本格的にやろう。バイトも辞める覚悟はあるし。ちゃんとイベントでファンと繋がれるなら、ユニットとしても可能性あるだろ」

 三人が同じ方向を向いている。顔を出さずに外へ出る――それはかつての俺には考えられないほどの挑戦だが、今はまったく怖くないとは言えないものの、挑戦してみたいと思える。
 **「もしここで成功すれば、仮面のままでも俺たちは本気で輝ける」**という希望がある。あるいは、このイベントが俺たちの“仮面”を外すきっかけにもなるかもしれない。どちらに転がるかはわからないが、動かなければ何も変わらないのは確かだ。
 夜更けまでの秘密ミーティングが終わる頃、胸は緊張と期待でいっぱいになった。アンチがどう出るかは未知数だが、ここまできたら負けるわけにはいかない。瑞希も陸も、一緒に走ってくれるのだから。

6. 「再会とすれ違い──瑞希との甘く苦い一瞬」
 翌週、瑞希は学校の下校時刻を利用し、“委員長バレ”後のクラスメイトとの関係を何とか立て直そうとしていた。嫌味を言う人もまだいるが、一部の友人が積極的に「配信観たよ、カッコよかった」と言ってくれたり、少しずつ空気は変わり始めている。
 そんなある夕方、瑞希は思いつきで「前にあの公園で顔を少しだけ見せ合ったみたいに、また直接会えない?」と提案してきた。俺も了承し、人通りの少ない駅近くの公園で落ち合うことになった。
 マスクと帽子、フードで完全防備しながら待ち合わせの場所へ行くと、すでに瑞希が端のベンチで待っていた。暗くて顔はよく見えないが、彼女の服装は落ち着いた私服にマスク姿だ。
 「……やあ、久しぶり」
 同じ町に住んでいても、リアルで会うのはやっぱり緊張する。夜の闇の中でも、彼女と目が合うような錯覚にドキッとする。
 「こんな場所でしか会えないの、なんだか切ないね。でも……嬉しい。あなた、元気そうでよかった」
 瑞希の声が静かに胸に響き、俺は思わず笑みがこぼれる。だけど、やはり顔を隠しているせいか、互いに距離があるようにも感じる。

「……ありがとう。委員長バレ、大丈夫なの? 怖い思いしてないか?」

「うん、ちょっと嫌味も言われるけど、私がVやってること自体は受け入れてくれる人もいて……意外と、なんとかやれてる。そっちは? 炎上は少し落ち着いた?」

 そう問われて、俺は言葉を濁す。ネット上はまだ荒れたままだが、イベントの企画に向けて動くなかで少しずつ“応援したい”という声が増えているのも事実。

「正直、まだ怖いよ。でも、顔を見せずに公園に来れたんだから、俺もちょっとは成長したでしょ?」

 そう冗談めかして笑うと、瑞希も小さく笑ってくれる。夜の薄明かりの下、わずかに見えた彼女の瞳が潤んでいるように感じる。

「……ほんとは、もっと近くであなたの表情を見たい。前に少し顔を覗かせてくれたとき、胸が痛いほどドキドキしたの。でも、炎上とかもあって、無理しないでって思うと……自分の欲望が嫌になっちゃう」

「そんな……俺だって、お前がもし顔見て『やっぱり女っぽい』と思って嫌われるのは怖いけど、でも本当は近くで見てほしい。今は……それが難しいんだよな」

 互いに一歩踏み出せないまま、時間だけが過ぎる。甘く切なく苦い一瞬。もしかしたらここで意を決して“仮面”を外せば、新しい景色が見えるかもしれない。でも、炎上の火種が消えていない今、リスクは高い。
 結局、その夜も「また近いうちに会おうね」と小さな約束を交わすだけで別れた。満たされそうで満たされない想いが胸に残り、しかしそれが恋の刺激となってくすぶり続ける。
 ――好きだ。けれど全部さらけ出すにはまだ怖い。だが、その時はもう遠くないと感じる。そんな甘酸っぱいもどかしさに包まれた再会だった。

7. 「嘘と真実が交錯するSNS炎上最前線」
 翌朝、SNSを見るとやはり誹謗中傷の声は完全には消えていない。むしろ“委員長バレ”や“女顔バレ”が同時に進行しているせいで、「やっぱりあの中学の不登校事件の当事者同士じゃん」と面白がる連中もいる。
 匿名掲示板では「彼氏彼女なんだろ?」「本当は顔が可愛いからモテまくってる?」など、下世話な妄想が飛び交い、真実と嘘が入り乱れている。
 それでも、フェスの成功や次なるイベントの企画が明るみに出たことで、応援や好意的な意見も少なくない。要するに激しいアンチと熱狂的ファンが“混在”している状況だ。
 瑞希は「教室でも『あんた達、ほんとに付き合ってるの?』って聞かれたりするんだよ……」と呆れたように笑うが、それが内心まんざらでもないように感じられるのが可愛い。
 陸は母の手術が成功し、無事退院が決まったため、病院での付き添いと新しいバイト先を探す作業を並行している。SNSの炎上にはあまり関わっていないが、時間ができれば一緒に何か配信したいと言ってくれている。
 そんな中、“お出迎え配信”の企画も水面下で準備が進んでいる。瑞希の知り合いのツテを頼って小さなイベントスペースを貸し切り、警備の配置や参加者の人数制限を設定する予定だ。
 ただ、ネット炎上が収まらないままリアルイベントを開催するリスクは大きい。アンチが押し寄せて荒らされるかもしれないし、何らかのトラブルが起きる可能性も捨てきれない。
 それでも、俺たちは進まなければいけない。“顔を隠しても、俺たちはここにいる”――そのことを証明したい思いが、炎上の最前線に立つ覚悟へ繋がっているのだ。

8. 「踏み出すために、仮面を外すために──次なるステージへ」
 こうして、瑞希は“委員長バレ”に真正面から向き合う道を選び、陸は母親の退院を見届けたうえで新たな仕事とユニット活動の両立を模索し、俺は“女顔コンプレックス”を抱えながらもリアルイベントへの参加を決意しつつある。
 どれもが危険と不安の多い選択だ。しかし、もう後戻りはしない。
 ある夜のグループ通話で、陸が小さく笑いながら言った。

「母ちゃん、退院できそうだからよ……退院したら“お出迎え配信”の準備に俺もフル参戦するわ。もうバイトも辞める覚悟決めたし。家計はギリギリだけど、なんとかなるだろ。俺は踊り続けたいんだ」

 その宣言に、瑞希と俺は拍手で応える。リスクは承知のうえで、陸は家族と夢、両方を守ろうとしているのだ。
 そして瑞希は、イベント当日までに学校の同級生や先生たちへ正式に挨拶をし、可能な範囲で理解を得る方向に動くと言う。たとえ批判する人がいても、自分の道を認めてもらうために努力したいのだ。
 俺も“顔を出さずにリアルに出る”ことを本気で考え始める。帽子とマスク、フードで完全に隠しても尚、昔の同級生に見つかるリスクはあるが、それでも逃げない。“美少女みたい”と笑われても、もう俺の声があるから大丈夫だと信じている。
 ――こうして第6章は大きな転換点を迎えた。
 仮面のまま外へ出ること、あるいは仮面を外すこと。俺たちは両方の可能性を胸に、次なるステージへ踏み出そうとしている。
 “恋”はさらに深まる。瑞希との甘いやりとりは止まらないし、心のどこかで早く素顔を見せ合いたいという欲求が募っている。だが、それを実行するのはもう少し先になりそうだ。
 大きな嵐が、また訪れる予感がする。ネット炎上の渦は沈静化していないし、いじめの首謀者が再度動く危険もある。だが、三人が同じ方向を見ていれば乗り越えられるはずだ。
 “これは、きっと俺たちの青春の、第二幕。恋も、夢も、傷跡も、全部ひっくるめて大きく開いていくんだ”
 そんな予感を抱えながら、俺たちは夜の通話を切る。
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