1 / 54
プロローグ
しおりを挟む
暖かい日が増えてきた頃、僕たちは2人でそこにいた。
聞いた話によるとその日は春の初めなのに、珍しく霜が降り、夜には雪が舞っていたそうだ。その日の一番暖かい昼の時間にチャイムが鳴り、外に出ると赤ちゃんだった僕たちと名前が書いてある2枚の小さな紙切れが取り残されていた。雪と霜。
それから僕たちはずっと一緒にいた。起きて、ご飯を食べて、遊んで、寝る、全てを共有していた。小さな僕たちはずっと一緒で一緒にいることが当たり前。だって僕たちは双子で唯一の家族だ。
月日がたち桜が咲き始めた頃、僕は初めて弟の霜と離れた。初めてクラスが離れてしまった。関わりがない子たちの中に1人残され、今までにない不安を感じた。新学期の時に行う検査が終わり、緊張が漂う雰囲気からやっと解放され、帰宅しようとしたところに霜がいた。
僕がその姿を見てどれだけ安心したのかきっと霜は知らない。僕は行ったばかりのバース性検査の事など頭から消えてしまうくらいには落ち着いていた。
「霜は2組だっけ?」
「うん、今のところは」
「今のところはってどういうこと?」
霜が言うにはバース性検査の時、バース性が考慮されたクラス分けになるそうだ。
「全然、話聞いてなかったみたいだね。緊張し過ぎ!」
「だって、霜と離れたことなんてないから」
「まあ、俺も緊張したけどそこまでではなかったよ。どっちかと言うとバース性検査の方が緊張したかも」
「バース性は確かに気になるけど、たぶんβだと思うから大丈夫かな。」
「雪がβなら、俺も同じかな。双子だし」
「たぶん、一緒だよ。まあ、本当に双子なのかは謎だけど」
顔立ちは似ているけど、そっくりそのままというわけではない。双子なのかそうじゃないのか微妙にわからないのだ。
「双子です。とか書いといてくれればいいのにね」
「どっちにしろ今と変わんないでしょ?」
「それはそうだけど、気になるじゃん。どっちが先に生まれたのか」
「またそんなこと気にして」
「雪が先ってことになってるけどさ、雪が降るより先に霜が降りるじゃん。だから、本当は俺が先に生まれてると思うんだよね」
「そうだけど、ちょっとしか変わらないんだから」
「どっちも冬の季語だけど、夏に生まれてる可能性もあるんだよねー」
「親が冬が好きってだけかもしれないしね」
「ねー。誕生日も書いて欲しかった。」
「確かに、それはちょっと気になるかも!」
「親のバース性が分かれば、俺たちも予想出来るのに」
僕らは親の名前も、顔も、何も知らない。
孤児院に預けた理由も知らない。
顔も見たこともない人を恨んでもどうしようもうないし、寂しいとかも分からなかった。
霜がいたのもあるけど、それが当たり前だった。
「ちょっと心配だけど、結果を見てから考えよう」
「結果通知は一週間以内に家に送られてくるんだよね」
学校によって違うが最近はバース性の差別やいじめ防止のため、学校で結果が配布されることは少なくなっている。昔はΩへの差別が酷く、Ωということを隠す人が大半だった。今では差別などが問題となり、表立って差別をする人は少ないがそれでも偏見や差別はなくならない。
Ωを差別してるわけじゃないけど、Ωにはなりたくないと思ってしまう。
「ねぇ、雪は運命の番って信じる?」
αとΩにしか分からない運命。
「聞いたことはあるけど、迷信だと思う」
「そっかー」
「霜は?」
「信じてないよ」
「聞いてきたくせに信じてないって」
「だって雪そういうの好きでしょ?」
「は?そんなこと一言も言ったことないけど」
確かに、そういうドラマはよく見るけど、好きだなんて言ったことはないはず。
「恥ずかしがってるのバレバレ、耳が真っ赤だよ。わかりやすいね」
「好きじゃないって」
赤くなってしまった耳はどうすることもできない。
僕の耳は恥ずかしかったり照れると赤くなってしまうようだ。霜に言われて初めて知ったが、赤くなるのはどうしようもない。
「別に好きでもいいと思うけど俺に隠す必要ないじゃん?だってバレてるんだし」
「分かってるなら、何で聞いたの!?」
「話の流れで?」
「ふーん、嘘つき。なんか言いたい事あるんじゃないの?」
霜はいつも何か言いたいことがあると、目線が下にいく。
「何もないよ」
そう言いながら、少し伸びた前髪を指にかけて捻っている。
また嘘をついた。
嘘をつく時、霜は髪の毛を捻る。
霜は僕のことをすぐ見抜いて楽しんでるけど、僕だって霜の癖知ってるのに。物心つく前から一緒にいたんだ。
僕だってそれくらいは分かるよ。
霜が気にしていたバース性の結果は思ったより早く届いた。封筒が届いた時、施設内に緊張が走った。
正直なところバース性は今後の生活を大きく変える。
もし、β以外だったら、不安と期待に緊張するなか封筒を開ける。恐る恐る紙を引っ張り出す。
2次性別 Ω
頭の中が真っ白になる。
何も考えられないまま霜を見た。
いつもと変わらない表情のまま結果を見ていた。
見間違いだったら、そんな淡い期待をしてもう一度結果を見る。
淡い期待も裏切られ、結果はさっきと変わらなかった。
Ωだということが理解出来てきた僕は不安で胸がいっぱいになった。
気づいたら霜を見つめていた。
霜はそれに気づき僕の手を握った。
「霜は何だった?」
そういう僕の声は酷く震えていた。
「Ωだよ」
霜はあっさりと言った。
それから僕の手を握り返し聞いた。
「兄さんは?」
初めて霜が僕を兄と呼んだ。
霜の表情を読み取ることはできなかったが、僕の答えを待っている。
ゆっくり、呼吸し、真っ白になった頭を霜の胸に埋めてて掠れた声で言った。
「Ωだった」
霜は僕の手を強く握って言った。
「一緒だね」
そういった霜の顔を今までも鮮明に覚えている。
聞いた話によるとその日は春の初めなのに、珍しく霜が降り、夜には雪が舞っていたそうだ。その日の一番暖かい昼の時間にチャイムが鳴り、外に出ると赤ちゃんだった僕たちと名前が書いてある2枚の小さな紙切れが取り残されていた。雪と霜。
それから僕たちはずっと一緒にいた。起きて、ご飯を食べて、遊んで、寝る、全てを共有していた。小さな僕たちはずっと一緒で一緒にいることが当たり前。だって僕たちは双子で唯一の家族だ。
月日がたち桜が咲き始めた頃、僕は初めて弟の霜と離れた。初めてクラスが離れてしまった。関わりがない子たちの中に1人残され、今までにない不安を感じた。新学期の時に行う検査が終わり、緊張が漂う雰囲気からやっと解放され、帰宅しようとしたところに霜がいた。
僕がその姿を見てどれだけ安心したのかきっと霜は知らない。僕は行ったばかりのバース性検査の事など頭から消えてしまうくらいには落ち着いていた。
「霜は2組だっけ?」
「うん、今のところは」
「今のところはってどういうこと?」
霜が言うにはバース性検査の時、バース性が考慮されたクラス分けになるそうだ。
「全然、話聞いてなかったみたいだね。緊張し過ぎ!」
「だって、霜と離れたことなんてないから」
「まあ、俺も緊張したけどそこまでではなかったよ。どっちかと言うとバース性検査の方が緊張したかも」
「バース性は確かに気になるけど、たぶんβだと思うから大丈夫かな。」
「雪がβなら、俺も同じかな。双子だし」
「たぶん、一緒だよ。まあ、本当に双子なのかは謎だけど」
顔立ちは似ているけど、そっくりそのままというわけではない。双子なのかそうじゃないのか微妙にわからないのだ。
「双子です。とか書いといてくれればいいのにね」
「どっちにしろ今と変わんないでしょ?」
「それはそうだけど、気になるじゃん。どっちが先に生まれたのか」
「またそんなこと気にして」
「雪が先ってことになってるけどさ、雪が降るより先に霜が降りるじゃん。だから、本当は俺が先に生まれてると思うんだよね」
「そうだけど、ちょっとしか変わらないんだから」
「どっちも冬の季語だけど、夏に生まれてる可能性もあるんだよねー」
「親が冬が好きってだけかもしれないしね」
「ねー。誕生日も書いて欲しかった。」
「確かに、それはちょっと気になるかも!」
「親のバース性が分かれば、俺たちも予想出来るのに」
僕らは親の名前も、顔も、何も知らない。
孤児院に預けた理由も知らない。
顔も見たこともない人を恨んでもどうしようもうないし、寂しいとかも分からなかった。
霜がいたのもあるけど、それが当たり前だった。
「ちょっと心配だけど、結果を見てから考えよう」
「結果通知は一週間以内に家に送られてくるんだよね」
学校によって違うが最近はバース性の差別やいじめ防止のため、学校で結果が配布されることは少なくなっている。昔はΩへの差別が酷く、Ωということを隠す人が大半だった。今では差別などが問題となり、表立って差別をする人は少ないがそれでも偏見や差別はなくならない。
Ωを差別してるわけじゃないけど、Ωにはなりたくないと思ってしまう。
「ねぇ、雪は運命の番って信じる?」
αとΩにしか分からない運命。
「聞いたことはあるけど、迷信だと思う」
「そっかー」
「霜は?」
「信じてないよ」
「聞いてきたくせに信じてないって」
「だって雪そういうの好きでしょ?」
「は?そんなこと一言も言ったことないけど」
確かに、そういうドラマはよく見るけど、好きだなんて言ったことはないはず。
「恥ずかしがってるのバレバレ、耳が真っ赤だよ。わかりやすいね」
「好きじゃないって」
赤くなってしまった耳はどうすることもできない。
僕の耳は恥ずかしかったり照れると赤くなってしまうようだ。霜に言われて初めて知ったが、赤くなるのはどうしようもない。
「別に好きでもいいと思うけど俺に隠す必要ないじゃん?だってバレてるんだし」
「分かってるなら、何で聞いたの!?」
「話の流れで?」
「ふーん、嘘つき。なんか言いたい事あるんじゃないの?」
霜はいつも何か言いたいことがあると、目線が下にいく。
「何もないよ」
そう言いながら、少し伸びた前髪を指にかけて捻っている。
また嘘をついた。
嘘をつく時、霜は髪の毛を捻る。
霜は僕のことをすぐ見抜いて楽しんでるけど、僕だって霜の癖知ってるのに。物心つく前から一緒にいたんだ。
僕だってそれくらいは分かるよ。
霜が気にしていたバース性の結果は思ったより早く届いた。封筒が届いた時、施設内に緊張が走った。
正直なところバース性は今後の生活を大きく変える。
もし、β以外だったら、不安と期待に緊張するなか封筒を開ける。恐る恐る紙を引っ張り出す。
2次性別 Ω
頭の中が真っ白になる。
何も考えられないまま霜を見た。
いつもと変わらない表情のまま結果を見ていた。
見間違いだったら、そんな淡い期待をしてもう一度結果を見る。
淡い期待も裏切られ、結果はさっきと変わらなかった。
Ωだということが理解出来てきた僕は不安で胸がいっぱいになった。
気づいたら霜を見つめていた。
霜はそれに気づき僕の手を握った。
「霜は何だった?」
そういう僕の声は酷く震えていた。
「Ωだよ」
霜はあっさりと言った。
それから僕の手を握り返し聞いた。
「兄さんは?」
初めて霜が僕を兄と呼んだ。
霜の表情を読み取ることはできなかったが、僕の答えを待っている。
ゆっくり、呼吸し、真っ白になった頭を霜の胸に埋めてて掠れた声で言った。
「Ωだった」
霜は僕の手を強く握って言った。
「一緒だね」
そういった霜の顔を今までも鮮明に覚えている。
26
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
君と僕との泡沫は
七天八狂
BL
【ツンデレ美貌✕鈍感平凡の高校生】
品行方正才色兼備の生徒会長と、爪弾きの底辺ぼっちが親の再婚で義兄弟となった青春BLドラマ。
親の再婚で義兄弟となった正反対の二人の青春BL。
入学して以来、ずっと見つめ続けていた彼が義兄弟となった。
しかし、誰にでも親切で、みなから慕われている彼が向けてきたのは、拒絶の言葉だった。
櫻井優斗は、再婚を繰り返す母のせいで引っ越しと転校を余儀なくされ、友人をつくることを諦め、漫画を描くという趣味に没頭し、孤独に生きていた。
高校で出会った久我雅利の美貌に見惚れ、彼を主人公にした漫画を描くことに決めて、二年間観察し続けていた。
底辺ぼっちだった優斗は、周りから空気のように扱われていたから、見えない存在として、どれほど見ていても気づかれることはなかった。
そのはずが、同じ屋根の下に住む関係となり、当の本人に、絵を描いていたことまでもがバレてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる