運命なんて知らない[完結]

ななな

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優しい声

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「失礼します。えっと、話があって」
「どうぞ」
少し高い優しそうな声だった。
「こんにちは。鮎川 雪です。えっと、鮎川孤児院って知ってますか?」
「あ、えっと、ごめんなさい。なんて言っていいのか分からなくて」
「言いたくないなら、いいんです。事情があるのは分かってるんで」
やっぱり、言いにくいよね。
「話すと長いの。あなた、今日、三佳巳様の番候補として紹介されるんでしょう?だから、時間が足りないかもしれないわ。だから、改めて別の日にどうかしら?」
「いいんですか?」
「あなたは知る権利があるわ」
「ありがとうございます!」
「でも、お願いがあるの」
「何ですか?」
「あなた一人で来て欲しいの」
「何でですか?」
「あなたにしか話せないの」
「分かりました」
霜に言えないってどういうことなんだろう。
やっぱり、複雑なのかなぁ。お金持ちの愛人の子って時点で複雑だけど。三佳巳さんのようなお家はこういう事は普通なのかな。
「じゃあ、時間が空いてる時に来てください。いつでも私は暇だから、気にしないでね」
「三佳巳さんとも相談して来ます。本当にありがとうございます」
「私にはこんなことぐらいしか出来ないから。ほら、三佳巳様がお待ちになっていますよ」
「さようなら」
「さようなら」
綺麗な人だったなぁ。品があって動作とか喋り方、全部が美しい。
あんな美しい人を愛人に出来るなんて、三佳巳さんの叔父さんは相当素敵な人なのか、それかとんでもなくお金持ちとかなのかなぁ。
もし、あの人が母さんだったら凄く嬉しい。
あんなに素敵な人が事情もなく置いて行くって事は無いだろうし、もしかしたら普通の親子みたいになれるかもしれない。
僕はやっぱり家族に憧れがあったのかなぁ。
だって、母さんかもしれないって人に会ったってだけで期待している。
多分、昔から家族に憧れはあった。
小学校の運動会を見に来ていた友達の家族の関係が素敵だと思った。羨ましい気持ちもちょっとはあった。
でも、迎えに来てもくれないし顔も知らない家族にすごく会いたかったわけじゃなかったのに。

「雪!どうだった?」
心配そうな顔した霜が駆け寄ってきた。
霜には詳しくは言えない。
どうやって伝えたらいいのか分からない。
霜に話したい。僕が思ったこと全部聞いて欲しい。
「えっと、ちょっと長くなっちゃうから、家に帰ったら話すね。霜は大丈夫だった?」
「聞いてよ!雪くん。霜くん、すごく愛想悪かったんだけど!フォローするの大変だった」
「別に気に入られなくても良いんで」
嫌がってたのに僕のために来てくれたんだもんね。
まあ、番になる気は僕も霜もないし別に良いよね。
「僕も愛想悪くてもいいかな?」
「いいよ!そうしなよ」
「僕が困るんだけど。雪くんはどうなった?」
「もう一度会うことになりました」
これは言って良いよね。
三佳巳さんにいつ来ていいか聞かないとだし。
「了解。じゃあ、都合の良い日また後で教えてね」
「はい」
「雪くん。紹介する時どういう感じにする?」
「えーっと、まあ適当で。三佳巳さんに合わせます」
三佳巳さんには何とも思ってないし、自分から言うことはないから合わせて相槌を打てばいいや。
「頼むから愛想だけは良くして」
僕はそんなに愛想悪い方じゃないけど別に良くする必要はないだろう。
だって番になりたいわけじゃないし。
「いつも通りでいればいいですよね」
「えーっと、うん。僕といる時は棘がちょっとあるから霜くんといる時みたいに!」
「霜といる時が一番好きだから、三佳巳さんとの接し方が大半ですよ」
霜といるのが一番楽しい。別に他の人がつまらないってわけでは無いけど、居心地が良くて、警戒心が解けちゃうみたいな。
小さい頃からずっと一緒だったのもあるかもだけど。
「俺は雪より、酷いけどね」
「霜らしくていいじゃん」
「本当に仲が良いんだね。羨ましいな」
「三佳巳さんは兄弟いるんですか?」
なんとなくだけど、下の子って感じがするんだよね。お兄さんかお姉さんが居そうな雰囲気がある。
「いるよ。兄さんが」
「やっぱり!そんな感じします」
「雪くんは兄って言うより、弟って感じ」
「まあ、双子なんであんまり変わらないですけど」
「雪くんの方が危なっかしい感じ」
「それは言えてますね。雪は目を離せないです」
目を離せないって、子供扱いしすぎでしょ。そんな危ないことしてないのに。
「そんなに?例えば何?」
「雪が知らないこと」
僕が知らないうちに解決したんだな。
すぐそうやって一人で解決しちゃうから僕の危機感知能力が養われなくなるんじゃん。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
もう、そんな時間か。言われたら緊張してきた。
礼儀正しく、愛想は悪過ぎず、良過ぎずで落ち着けば多分大丈夫だ。

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