運命なんて知らない[完結]

ななな

文字の大きさ
33 / 54

諦められなくなっちゃった

しおりを挟む
検査結果の説明は明日されるそうだ。
フェロモンが落ち着いてるといいけど。
検査は午前中に全部終わり、暇になってしまった。緊急で入院したから、スマホなんて持ってないしどうやって時間を潰そう。
ベットに寝転んで考える。
霜、はやく来ないかな。
数十分くらいぼーっとしてたら、なんだか体が熱い気がしてきた。
これ、発情期ヒートだ。
疼く体を必死に動かしてナースコールを押す。
熱い。助けて。
突発性ヒートが来た後なのに発情期ヒートがくるなんて。今月の周期おかしいよ。
熱い。はやく、はやく欲しい。
ダメだこれ。熱すぎて死んじゃう。
溶ける。
「鮎川さん!聞こえますか!」
看護師さんが肩を叩きながら聞く。
「熱い。.......助けて」
「すぐに先生が来ますから、体温測りますね」
「やぁ、こないで」
「大丈夫です。落ち着いてください」
「うぅっ。そう、そう、」

ガラッ!

「雪!」
霜、来てくれたんだ。
「霜、て、つないで」
必死に手を伸ばして触れる。
「うん、うん」
霜が泣きそうな顔で手を握る。
「そんなかおしない...で」
そう言った後意識が途切れた。





雪が病院に入院してから、生きた心地がしなかった。
と言ってもまだ半日しか経ってないんだけど。
どうやって帰ってきたのかも分からない。
気づいたら、朝でソファで起きた。
寝落ちしたのだろう。
病院に電話し、入院に必要なものと何時に行けばいいかメモする。
いつも飲んでる薬と、歯ブラシやタオルをボストンバックに詰める。
入院中は暇だろうと思って、俺のお気に入りの本を数冊入れた。

ピコンッ!

自分のスマホじゃない通知音。
あぶない、あぶない。
雪のスマホを持って行くのを忘れるとこだった。
見てはいけないと思ったけど通知が目に入る。
櫻田川と表示されていて、なんともいえない気持ちになり通知を消した。
病院に行くまでまだ時間がある。
久しぶりに自分で朝ごはんでも作ろうかとキッチンに立つ。
冷凍ご飯を電子レンジで温め、フライパンに卵を入れ適当に切った野菜と一緒に焼く。
余った野菜を味噌汁に入れて完成だ。
いつものちゃんとした朝ごはんが恋しい。
ふわふわの卵焼き、具材が統一された味噌汁、きゅうりの浅漬け、おかずがもう一品。
あんなのを毎回作っているなんてすごいなぁ。
雪がいないことを実感して、早く雪に会いたくなった。
ご飯を食べても面会時間が一向に近づかない。
絶対集中出来ないと思って読まなかった新刊を取り出して、栞が挟んであるところを開く。
新しいところを読んでみたけどやっぱり頭に入らない。
しょうがないから、最初から読み直した。
文字をなぞるだけだったけど途中から栞を挟んだページよりも先のページにいってそのまま読み終わってしまった。
無心で読んでいたから、疲れた。
雪のところに行くにはちょうどいい時間だろう。
雪の荷物を詰めたボストンバッグを片手に持ち、病院へ向かった。
病院に着いてからは受け付けを済ませて病室までの案内を聞いて部屋の扉を開けた。

ガラッ!

咽せそうになるくらいの甘い匂い。
泣きながら怯える顔。
「雪!」
雪を見た瞬間、看護師さえ押し退けて駆け寄った。
「霜、て、つないで」
俺を見た瞬間、酷く安心した顔をして手を握ったまま寝てしまった。
心配なのにそれがすごく嬉しい。
もし、俺がαだったら雪は俺を選んでくれるのかな。
雪はさ、俺を双子だと思って弟扱いするけど俺は普段雪を兄さんだと思ってないよ。
雪、俺は双子じゃなくてよかったと思ってる。
Ω同士で血が繋がってるだったら諦めないといけないって思ってた。
でも、血は繋がってない。
雪、どうするの?
俺、諦められなくなっちゃったよ。







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

君と僕との泡沫は

七天八狂
BL
【ツンデレ美貌✕鈍感平凡の高校生】 品行方正才色兼備の生徒会長と、爪弾きの底辺ぼっちが親の再婚で義兄弟となった青春BLドラマ。 親の再婚で義兄弟となった正反対の二人の青春BL。 入学して以来、ずっと見つめ続けていた彼が義兄弟となった。 しかし、誰にでも親切で、みなから慕われている彼が向けてきたのは、拒絶の言葉だった。 櫻井優斗は、再婚を繰り返す母のせいで引っ越しと転校を余儀なくされ、友人をつくることを諦め、漫画を描くという趣味に没頭し、孤独に生きていた。 高校で出会った久我雅利の美貌に見惚れ、彼を主人公にした漫画を描くことに決めて、二年間観察し続けていた。 底辺ぼっちだった優斗は、周りから空気のように扱われていたから、見えない存在として、どれほど見ていても気づかれることはなかった。 そのはずが、同じ屋根の下に住む関係となり、当の本人に、絵を描いていたことまでもがバレてしまった。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

処理中です...