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第6話 鮮血の薔薇
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病室のドアを開け、その先にいたのは紅いローブの死神だった。
――『鮮血の薔薇』だ。
とりあえず、胸部にローブの上からでもはっきりと分かるほど立派な丘があることを確認した。
うーん、おっぱい!
凶悪な男性を想像していたが、これは間違いなく女性だ。
……性別など関係ない。メフィストの言葉を思い出し、少し後ずさりしてしまう。
しかし、この病室のお婆さんの魂を刈って目標のギリギリといったところか……。
「誰!?」
鮮血の薔薇が、俺に向かって警戒した声で叫び、大鎌を構える。
その大鎌は、俺の持つ靑白く光る刃の鎌と似た構造をしており、赤く光る刃が特徴だ。
ヤバい、終わった……。
フードを深く被り、意を決して病室へ入り、鮮血の薔薇にゆっくり近づく。
「……来ないで」
この警告を無視すればいつ斬られてもおかしくはない。
言う通り、俺は立ち止まった。鮮血の薔薇までは、まだ少し距離がある。
「あなた、死神よね。ここに何の用?」
「そこのお婆さんに用事があって……」
この状況で魂を刈りに来た、なんて言えない。
「あの……、『鮮血の薔薇』さん、ですよね?」
失礼が無いように、恐る恐る訪ねる。
「……私をそう呼ぶヒトは多いみたいね。でも、私には『カルディナ=ブラッドローズ』という名前があるの」
被っていたフードを上げ、名前を答えた。
初めて顔が見えたが、20歳ぐらいだろうか。
カルディナ……次からはそう呼ぶことにしよう。
「あなた、ちょっといいかしら。」
カルディナは何かに気づいたようで、俺に近づいてくる。
目の前に立つと、俺の被っていたフードを上げて顔を確認する。
――その瞬間、カルディナは目を丸くした。
それは昔、お世話になった死神の先輩の姿だった。
「まさか、『ユミル』……?」
『ユミル』は、俺が死神のローブを着て変身した姿の名前だ。
まぁ、今はローブを脱いでも元に戻らないんだが。
カルディナは、俺が今着ている白いローブは二つと同じものが存在しないという。
「はい、ユミルですけど」
事実には変わらないので、正直に答えた。
俺も名前が有名になるほどの死神になったってことかな……少し自惚れる。
「嘘……、だって約20年も前に死神を引退して、その後は人間に転生したって……」
嘘と言われても、俺はユミルとして仕事をしている。
「確かに、カルディナの言う『ユミル』と『俺』は別人……いや、別死神? かもしれない」
しかし、俺のこの姿に似ている死神が他にいたということなのか。
俺は、死神を引退どころか死神になったばかりで20年前なんて生まれてすらいない。
姿だけならまだしも、名前も同じ……、死神にもドッペルゲンガー的なものがあるのだろうか。
「じゃあ、あなたは誰……?」
カルディナは後ずさりし、俺から少し距離を開けた。
誰と言われても『ユミル』であることは間違いない。
本名である『フブキ』を名乗るのも仕事の都合上マズい。
――俺は上手く答えられず、目が泳いでしまう。
「……さっき、このお婆さんに用事があるって言ってたよね?」
ベッドで熟睡しているお婆さんを悲しげな目で見つめる。
「えっと……」
「魂を刈りに来たんでしょ、死神の用事と言ったらそれぐらいだから」
「その通りです……」
カルディナは確認が終わると、再び俺に向かって大鎌を構えた。
「このお婆さんは、私がお世話になった人なの。だから私が魂を刈る、誰にも邪魔はさせない」
「そうだったのか、でも俺のターゲットでもあるんだ。」
「ターゲット? このお婆さんの魂を刈る権利は私が取ったはずよ。『ハデス社』の死神なら知っているはず……」
『ハデス社』? 聞いたことがない社名に戸惑う。
「まさか……あなた、ハデス社の死神じゃないってこと?」
「すまない、聞いたこともないんだ」
「死神行為が許されているのはハデス社に所属している死神だけのはずよ。それを知らない……?」
どうやら、本来は『ハデス社』という会社に所属している死神にしか、魂を刈る権利はないらしい。
でも俺は、メフィストに依頼されている。つまり、メフィストはハデス社と関係がない。
しかし、メフィストのことを話すのは禁則事項だ。
「その白いローブもどうやって手に入れたか知らないけど、あなたも近年話題の犯罪組織の一員なのね……。よりにもよってユミルの姿なんて許せない……!」
「ま、待ってくれ!」
カルディナは、窓際の空間を黒く歪ませ、次の瞬間、俺の胸ぐらを鷲掴みにした。
「ここじゃ狭いでしょう?」
――信じられないことに、俺を歪んだ空間に向かって勢いよく投げた。
「うわあああああああああああああ!?」
黒く歪んだ空間をすり抜け、俺の身体はあっという間に病院の外。ここ何階だっけ……。
地面に向かって真っ逆さまに落下するが、魂が詰まった袋は意地でも離さない。
――もうすぐ地面にぶつかる!
俺は、咄嗟に冷気をクッションのようにして着地の衝撃を和らげた。
即席だったけど、なんとかなったな……。
その直後、上空から勢いよくカルディナが降りてきた。
カルディナが着地した瞬間、周囲に衝撃波が発生し、俺は思わず目を瞑ってしまう。
カルディナは、自慢の大鎌を構えた。
「……さぁ、始めましょう」
――『鮮血の薔薇』だ。
とりあえず、胸部にローブの上からでもはっきりと分かるほど立派な丘があることを確認した。
うーん、おっぱい!
凶悪な男性を想像していたが、これは間違いなく女性だ。
……性別など関係ない。メフィストの言葉を思い出し、少し後ずさりしてしまう。
しかし、この病室のお婆さんの魂を刈って目標のギリギリといったところか……。
「誰!?」
鮮血の薔薇が、俺に向かって警戒した声で叫び、大鎌を構える。
その大鎌は、俺の持つ靑白く光る刃の鎌と似た構造をしており、赤く光る刃が特徴だ。
ヤバい、終わった……。
フードを深く被り、意を決して病室へ入り、鮮血の薔薇にゆっくり近づく。
「……来ないで」
この警告を無視すればいつ斬られてもおかしくはない。
言う通り、俺は立ち止まった。鮮血の薔薇までは、まだ少し距離がある。
「あなた、死神よね。ここに何の用?」
「そこのお婆さんに用事があって……」
この状況で魂を刈りに来た、なんて言えない。
「あの……、『鮮血の薔薇』さん、ですよね?」
失礼が無いように、恐る恐る訪ねる。
「……私をそう呼ぶヒトは多いみたいね。でも、私には『カルディナ=ブラッドローズ』という名前があるの」
被っていたフードを上げ、名前を答えた。
初めて顔が見えたが、20歳ぐらいだろうか。
カルディナ……次からはそう呼ぶことにしよう。
「あなた、ちょっといいかしら。」
カルディナは何かに気づいたようで、俺に近づいてくる。
目の前に立つと、俺の被っていたフードを上げて顔を確認する。
――その瞬間、カルディナは目を丸くした。
それは昔、お世話になった死神の先輩の姿だった。
「まさか、『ユミル』……?」
『ユミル』は、俺が死神のローブを着て変身した姿の名前だ。
まぁ、今はローブを脱いでも元に戻らないんだが。
カルディナは、俺が今着ている白いローブは二つと同じものが存在しないという。
「はい、ユミルですけど」
事実には変わらないので、正直に答えた。
俺も名前が有名になるほどの死神になったってことかな……少し自惚れる。
「嘘……、だって約20年も前に死神を引退して、その後は人間に転生したって……」
嘘と言われても、俺はユミルとして仕事をしている。
「確かに、カルディナの言う『ユミル』と『俺』は別人……いや、別死神? かもしれない」
しかし、俺のこの姿に似ている死神が他にいたということなのか。
俺は、死神を引退どころか死神になったばかりで20年前なんて生まれてすらいない。
姿だけならまだしも、名前も同じ……、死神にもドッペルゲンガー的なものがあるのだろうか。
「じゃあ、あなたは誰……?」
カルディナは後ずさりし、俺から少し距離を開けた。
誰と言われても『ユミル』であることは間違いない。
本名である『フブキ』を名乗るのも仕事の都合上マズい。
――俺は上手く答えられず、目が泳いでしまう。
「……さっき、このお婆さんに用事があるって言ってたよね?」
ベッドで熟睡しているお婆さんを悲しげな目で見つめる。
「えっと……」
「魂を刈りに来たんでしょ、死神の用事と言ったらそれぐらいだから」
「その通りです……」
カルディナは確認が終わると、再び俺に向かって大鎌を構えた。
「このお婆さんは、私がお世話になった人なの。だから私が魂を刈る、誰にも邪魔はさせない」
「そうだったのか、でも俺のターゲットでもあるんだ。」
「ターゲット? このお婆さんの魂を刈る権利は私が取ったはずよ。『ハデス社』の死神なら知っているはず……」
『ハデス社』? 聞いたことがない社名に戸惑う。
「まさか……あなた、ハデス社の死神じゃないってこと?」
「すまない、聞いたこともないんだ」
「死神行為が許されているのはハデス社に所属している死神だけのはずよ。それを知らない……?」
どうやら、本来は『ハデス社』という会社に所属している死神にしか、魂を刈る権利はないらしい。
でも俺は、メフィストに依頼されている。つまり、メフィストはハデス社と関係がない。
しかし、メフィストのことを話すのは禁則事項だ。
「その白いローブもどうやって手に入れたか知らないけど、あなたも近年話題の犯罪組織の一員なのね……。よりにもよってユミルの姿なんて許せない……!」
「ま、待ってくれ!」
カルディナは、窓際の空間を黒く歪ませ、次の瞬間、俺の胸ぐらを鷲掴みにした。
「ここじゃ狭いでしょう?」
――信じられないことに、俺を歪んだ空間に向かって勢いよく投げた。
「うわあああああああああああああ!?」
黒く歪んだ空間をすり抜け、俺の身体はあっという間に病院の外。ここ何階だっけ……。
地面に向かって真っ逆さまに落下するが、魂が詰まった袋は意地でも離さない。
――もうすぐ地面にぶつかる!
俺は、咄嗟に冷気をクッションのようにして着地の衝撃を和らげた。
即席だったけど、なんとかなったな……。
その直後、上空から勢いよくカルディナが降りてきた。
カルディナが着地した瞬間、周囲に衝撃波が発生し、俺は思わず目を瞑ってしまう。
カルディナは、自慢の大鎌を構えた。
「……さぁ、始めましょう」
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