あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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図書館と安食堂のスライム騒動

いわゆる浸透圧という奴です

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はい、一晩明けて戦闘の時間となりました。

既に近隣の人達は避難しているし、宿には大量の塩が搬入されています。

後は例のプロフェッサーとモンスターが現れるのを待つだけですね。

因みにあたしは怪我人の治療が最優先ですので戦闘には参加しません。

まあ……落ち着いて考えてみればこの町には神殿がありませんからね、プリーストはおろかヒーラーも数が少ないですし。

足止めはアプさんとスコルがやってくれるから不安はありませんけれど、問題はあたしの予想が外れていた場合です。

その時はあたしがプロフェッサーだけでも捕まえなければ……



「来た、あいつだ!」

おっと、お出ましですね。

さてどんなモンスターが……聞いてた以上にでかいですね!?

そして見た目は……うん、ナメクジじゃなくてカタツムリでした。

多少違っていましたがナメクジが殻を背負っている様な物だし、これなら誤差の範囲でしょう。

あたしが元居た世界と同じならば塩が弱点なのも変わりませんし。

「さぁて、何処からでもかかって来な!」

「魔術ギルドの構成員ではなさそうだが邪魔をするのなら仕方ない……やれ!」

うわ、カタツムリから無数の触手が!

日本のカタツムリと同じとは思ってませんでしたが……これはちょっと引きますね。

「気を付けろ、本体の動きは遅いがあの触手はやけに速くて厄介だ!」

まあアプさんなら大丈夫でしょう、今は……

「ナクアちゃん、あのモンスターの頭から2本の触手みたいな物が生えているのが解りますか?」

「うん、解るよ!」

「まずはあれにこの塩をありったけザバーッと、出来ますね?それとあの背負っている物には掛けても効果がないから注意して下さい」

「解ったー!」

大変良い返事です。

「よしナクア、【融合・トウカ、リコッタ】!」

「いつぞやの猫耳天使モードですか」

「呼び方がちょっと気になるけど……まあいいか、何度か試したんだがトウカとリコッタは一緒に融合した方が強くなるんだ」

成程……まあ考えてみればリコッタはただの鳥ですからね。



一方のアプさんは触手を盾で防ぎながらもスコルが陽動しつつ、時々本体まで近付いて盾で殴打してるし……

あのプロフェッサーも凄く驚いてらっしゃいます。

加えて攻撃される度に頭の触手……ではなく目が引っ込んでますし、もう間違いなくカタツムリですね。

「っと……キュア、回復と支援を頼むよ!」

「はい、【ヒール】、【ディフ】!」

って、あたしの魔法がカタツムリの触手に吸い込まれた!?

「無駄だ、こいつはマジックスライムに改良を重ねて生まれた変異種でな……こいつの目が届く範囲で魔法が通ると思わない事だ」

マジックスライム……確かあのイケボなスライムが使役(?)してた白いスライム!

まさか本当に魔法を食べていたとは……あたしの魔力は高くないからそんなに育ちはしないでしょうけれど。

「えーいっ!」

おっと、プロフェッサーが丁寧に解説してる間にナクアちゃんの塩攻撃が炸裂しました。

そして思った通り、徐々に体が縮んでいます。

まあ縮んだ分だけ足元に粘液が大量に流れていますけど……掃除が大変そうですね。

「な……貴様、何をした!」

「知らなかったのですか?骨を持たない生物に塩を掛けると、体が縮んでしまうのですよ」

「縮むだと……たかが塩で!?」

因みにナメクジ以外にもクラゲやタコも同様に縮みます。

塩揉みしたタコは固いという話をよく聞きましたが、あれは塩で縮んだ分だけ身が引き締まっているんですよね……噛み応えがあるのも美味しいんですけど。

「ふざけるなよ……俺がこいつを生み出す為に、どれだけマジックスライムを研究してきたと思ってる!それを、たかが塩だけで!」

いや知りませんし……ってマジックスライムを研究?

そういえばマジックスライムは研究員が廃棄したスライムが増殖したって噂があった様な?

「まさか……以前大量に現れたマジックスライムは」

「何だ、寿命が近い個体は川に流して処理していたが……生き残りでも居たのか?」

あれ貴方の仕業だったんですか!?

もし会えたら1発ぶん殴ろうと思っていましたが、それを実行出来る日が来るとは……

これも日頃の行いが良かったからでしょう……ありがとうございます、トゥグア様。



さて、捕縛の前に殴るのは確定しましたがカタツムリの処理がまだ終わっていません。

「ナクアちゃん、どんどんやって下さい!」

「はーい!」

当のカタツムリはいつぞやのマジックスライム同様に、学習能力が皆無らしく最初にされた命令を実行してるだけですし……

触手は脅威ですが本体の動きは遅いから、後は時間の問題ですね。

「仕方ない……おい、退却するぞ!」

「させないよ!スコルはあのプロフェッサーを足止めしな!」

「ガァッ!」

アプさん、触手を束ねて掴んで引っ張るのはどうかと思うんですが……

しかも縮んだとはいえそれなりの巨体を相手に力負けしていないとは、それも支援魔法抜きで。

「あはは、これ面白ーい!」

ナクアちゃんがカタツムリに塩を掛ける事に楽しさを見出だしてしまいました……

まあ気持ちは解りますけれど。

虫眼鏡で光を収束させたりとか、圧力でポップコーン作ったりとか……いわゆる理科の実験って妙な楽しさがあるんですよね。

あたしは理系科目が苦手ですが、そういう実験があった時だけは人並みでした。

「おや、自慢の触手が固まって切れちまったねぇ?」

いい感じにカラカラに……いわゆるミイラ状態という奴です。

「こうなれば後は水と魔力さえ与えなければ簡単に処理出来ますよ……剣か斧で刻んで、殻は砕いてから埋めて、そこに油を流して燃やしてしまいましょう」

因みに塩を掛けたカタツムリが、こんな状態からでも水を与えたら復活したとかいう話を聞いた事がありますが……本当なんですかね?

まあ確かめるつもりはないので念のため水を避けて、元がマジックスライムなら魔力を与えなければ大丈夫でしょう。

「馬鹿な……俺の研究が、20年もかけた研究が、こんなアッサリと!」

随分と無駄な時間を過ごした様で……

「さて、とりあえずは……セイッ!」

「ゴフゥッ!」

ふぅ、鳩尾に正拳突きをお見舞いしてスッキリしました。

「では、後の処遇はウィラコさんにお任せします」

「はいよ」

「時間外で悪いけどあたいとスコルはちょっと風呂に入らせて貰うよ……ヌメヌメして気持ち悪いったらないからねぇ」

「ヌルヌルで気持ち悪い……」

素手で触手を掴んだりするからですよ……

でもああしなければ逃げられていた可能性がありますし、仕方ありませんね。

「風呂は直ぐに沸かせるから少し待ってな」

それにしても何故か白濁したヌメヌメがアプさんの全身に……エロいですね。



翌朝、犯行の動機を調べる目的で構成員の皆さんと何か確認したい事があると言ってたコカちゃんがあのプロフェッサーの研究所へと乗り込んで行きましたが……

あのプロフェッサー、ボリアの魔術ギルドで処断を受けた後に投獄される様で……まあ自業自得でしょう。

因みにボリアの支部はアプさんが入り浸っていた酒場を経営しているそうです。

「さて、このヌメヌメはどう掃除すりゃ落ちるのやら……」

「それならぬるま湯で作った塩水を使って、普通に掃除すれば簡単に落とせますよ」

個人的には海水よりちょっと濃いぐらいがベストだと思います。

まあ範囲がほぼ町全体、場所によっては壁や屋根までヌメヌメだから時間が掛かりそうですけど。

幸い避難していた付近の住民の皆さんや宿に泊まっていた旅人の皆さんも手伝ってくれる様ですが……夕方まで掛かるのは覚悟した方が良さそうですね。

因みに粘液まみれだったアプさんには夜の内に教えておいたから綺麗になっていましたよ。

「ちょいと待ちな、キュアちゃんは皆さんの炊き出しに噂のラーメンってのを頼むよ」

あー……そりゃこんな広い範囲だし、大仕事になりますからね。

炊き出しは必須ですか。

「解りました、ナクアちゃんも手伝って下さい」

「はーい!」

さて、手伝おうとしていた肉屋のオバチャンに声をかけてクックーの骨を貰って……

小麦粉と野菜の類は宿の厨房にあるし、塩もまだ残ってますね。

水洗いして茹で溢した骨を野菜と一緒に水から煮込んで、その間に麺を打って……と。

「ナクアちゃん、この挽肉にタマネギのみじん切りと小麦粉を加えたらよく捏ねて下さい」

「解ったー!」



何とか間に合いました……

コカちゃんが居ればもう少し早く出来たのですが……まあ調べ物があったし手を煩わせる訳にはいきませんからね。

「これが噂のラーメンか……美味ぇな」

「これがあの第3夫人を夢中にさせたという……確かに美味い」

「この味……あの唐揚げとやらに通じる物がある気がする」

「メイドさんに鞭で叩かれたいです」

……配り終えたのは良いのですが、あたし達の分の麺が残りませんでした。

もう小麦粉がなくて今から買って打ってたら夕方まで食べられませんし、今回はその場しのぎで済ませます。

スープを暖めて、冷や飯を入れ、溶き卵を混ぜて雑炊にしました。

仕上げに青ネギが欲しい所ですけど存在すらしてませんからね……タマネギの芽をみじん切りにして乗せておきます。

「これも美味しいし売れそうだけど……原価は?」

「ウィラコさん本当に逞しいですね……宿でも出してる野菜スープをクックーの骨を加えて作って、卵を入れるだけで出来ますから5ハウトぐらいですよ、一応レシピも渡しておきましょう」

「麺を食いたかったけど雑炊でも美味ぇ」

スミマセンね……小麦粉がなくなってしまったばかりに。

幸い今日は食堂の営業をしないそうですし、後は夕飯の準備とコカちゃんに甘い物を出すだけです。

さて、食べたらもう1踏ん張りしましょうか。
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