あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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菜食主義者と炭酸水

心の深部 ※ロウ視点

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『あたしはあにぃがすきだもん!あたしだけはあにぃのみかただもん!なにがあってもそばにいるもん!だから……だからそんなこといわないでよ!』

……これ、俺とキュアが6歳の時の頃の?

あ、ツァトゥ様が心の深部を覗かせてって言ってたのはこういう事か。

別に秘密にしてた訳でもないけど……こう、直接見られるのは流石に恥ずかしいな。





キュアは小学生になったばかりの時にイジメを受けかけた……

理由は【双子で目立っていたから】、それだけ。

まあ知っての通りキュアはやられたら十倍にして返す性格だし、相手が先に手を出したのをしっかりと大人に確認させた上でやり返してたけどな。

中には指の骨を折られた奴も居たからやり過ぎだと怒られてたが、一応正当防衛だと認められたのが救いか。

ただ後から親父が、キュアがやり返した相手の中に上司の娘とやらが居たとか喚いてたけど……知った事じゃない。

で、まあその日からやり返すのを見た大人……確か児童保護施設の職員だとかいう蓮田さんの勧めでキュアが空手を習う事になったんだっけ。

それで終わってれば今頃は笑い話になってたんだろうが……キュアに勝てないと悟った奴等は俺を標的にした。

最悪な事に俺はキュアと違うクラスで、大人からの信頼も無かった……しょっちゅう授業を抜け出しては屋上で昼寝してたし、まあ自業自得って奴か。

唯一味方をしてくれた母さんも1人じゃ限度があるし、心配させたくなかったのもあって実害がない限りは放っておいた。

物を盗ったりキュアの悪口を言ったりする奴は男女平等に階段から転がり落ちて貰ったけど。

そういや何回目かに転がり落ちた奴が支部長の孫娘だったとか、入院して治療費を請求されたとか言われた気がするけど……どうでもいい。

今思えば女の子相手にやり過ぎだった気がしなくはないけど、どう考えたって先に手を出した方が悪いだろ。

で、まあ最初の保護者面談はボロクソに言われた……気がする。

内容は心底どうでもよかったから聞き流してて覚えてない。



本当に……この頃は目に映る殆どの物がどうでもよかった。

当時の俺はあらゆる感情が欠落していたから。

何をしていようと親父に邪魔をされ、友達を作る事すら出来ず……動物ですら俺を避けていた。

今になって幻獣に好かれ易い体質だと解ったからいいんだけどな。

ともかく当時は学校でのイジメと合わせて、キュアみたいに強くはなれなかった……俺の精神が壊れかけるぐらいには効果的だったな。

なのに近所に謝り、治療費を出すのは母さんだった。

幸いクソ親父の非常識っぷりは有名で謝りに行く度に離婚を勧められていたけど、母さんはそれに応じる事はなかった。

「子供達が自立するまでの辛抱だから……」と言ってたっけ……

クソ親父は俺を医者にしてその収入で贅沢でもしたかった様だけど、中学を卒業したら働いてキュアと母さんを連れて家を出るつもりだったよ。

結局卒業する前に殺されちまったんだけどな。

そんな生活を続けていく内に俺とキュアにちょっかい出すと階段から落ちるという噂が流れて……紛れもない事実だけど。

お陰で面倒事はなくなったが……友達になってくれる様な奇特な奴も居なかった。

たまに喧嘩を売りに来る奴等や上級生の知り合いを連れて来た奴等は居たけど相手にするのは面倒だし全員階段から転がり落ちて貰った。

中には卑怯だと騒ぐ奴も居たけど、俺1人に対して上級生を含めた……酷い時には中学生まで連れた6人掛かりで喧嘩を仕掛けるのは卑怯じゃないのだろうか?

あの理屈は未だに理解出来ん……する気もないけど。

その後に階段から落とした中学生がクソ親父の上司の長男だとか言ってた気もするけど知らん。

たかが子供の喧嘩で給料下がるなら転職すれば良かっただけの話だろ……実際は喧嘩にすらなってなかったけど。



そんな中で迎えた6歳の誕生日……俺にとっては人生の分岐点、って奴だった。

クソ親父は給料日だったのもあって朝まで飲み歩いて、母さんも宮城に住んでた婆さんが倒れたと聞いて帰省していた。

残された俺とキュアは買い置きの食パンだけ食って寝るだけ……の筈だったが、キュアはたどたどしい手つきでずんだ餅を作ってロウソクを立ててたっけ。

とはいえ母さんもクソ親父もタバコは吸わないからライターがなくて火は付けられなかったんだけどな。

『あにぃ、きょーはたんじょーびだよ、いっしょにおいわいしよ!』

今でこそベッタリだけど当時は俺のいざこざに巻き込まない様に、距離を開けていたんだが……キュアが離れる事はなかった。

で、流石に心配になって強く引き離して……唐突に抱き付かれてキスされて、最初の台詞に繋がった訳だ。

その時からか……胸に暖かい物が込み上げる様な感覚と一緒に目に映る全てが違って見える様になったのは。

だから決めた……キュアを泣かせる様な事はしない、泣かせる奴は許さないと。

俺の一生はキュアを笑わせる為に使う、と。

……キュアが居なかったら今も心が欠落したまま、この世界に来る事もナクアと出会う事も、キュアがコカと出会う事もなかった。

子供の頃に決めた事は今も俺の目的だ。

俺が死んだらキュアが悲しむ、だから絶対に死んでやらん。







気が付いたら何か柔らかい物が顔を覆って……何だこれ?

「ふむふむ……達観してる様に見えたのは既に覚悟を決めてたから、だったんだね」

あ、ツァトゥ様の胸か……この状況をキュアに見られたら確実に殴られるな。

しかしこれなら殴られる価値はある……気がする。

「腑抜けてる様ならデストくんと一緒にハイドラの異空間に放り込んで鍛えるつもりだったけど、その必要はなさそうだね」

何でハイドラ様の空間に?

俺の持ってる才能がハイドラ様の力と相性がいいとは聞いた事があるけど……あ、だからか。

「ツァトゥ様、何で俺まで?」

「鍛えてる間、ロウくんの食事を見て貰おうと思って」

俺は一切料理が出来ないからなぁ……

キュアがやってくれるから覚える必要もなかったんだけど。

「あの……終わったんなら放してくれませんか?」

身体の一部がとんでもない事になりかけてるんで……どことは言わないけど、察して欲しい。



夕方……俺と兄貴はキュアとジェネさんに正座させられて、何故かサーグァ様まで正座をしている。

「デスト、式を挙げるまで無駄な出費はしない様にって言ったわよね?」

話には聞いていたけど……笑顔のジェネさんがマジで怖ぇ!?

「おかしい……何故バレたんだ?」

「そりゃデストさんにロウ、サーグァ様まで口からガリクの臭いがしてますからね……となればお肉をガッツリと食べていたと推測できますよ?」

そういや口臭の対策は一切してなかった……

まさかニンニク……じゃなくてガリクの臭いで気付かれるとは!

「やはり牛乳も用意しておくべきだったか……」

「次から肉を食う時は牛乳もだな……」

それはそうとサーグァ様は別に正座しなくてもいいんじゃないか?

「デスト、何か言う事は?」

「ロウ、何か言う事があるのでは?」

こうして見るとキュアとジェネさんが本当の姉妹みたいに見えるのが不思議だな……

まあ、そんな2人に惚れた俺達がここで言える事なんて……1つしかないよな。

「「「申し訳ありませんでした!」」」

サーグァ様は別に謝る必要がない様な……まあいいか。

この後、俺と兄貴は晩飯抜きで許して貰えたが……ナクアがコッソリと鮭おにぎりを作ってくれたよ。

「次にお肉を食べる時はナクアも誘って!」って言ってたが、それは兄貴に言った方がいいぞ。
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