銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#05

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 普段ではノヴァルナが使っている、『ヒテン』の司令官執務室に入ったヴァルミスは、椅子に腰を下ろし、卓上にホログラムスクリーンを立ち上げる。そして同時に手元に表示された、ホログラムキーを叩き始めた。
 そのヴァルミスの脳裏に、狐をモチーフにした特殊セラミック製の仮面を初めて被り、当時はまだ『ホロウシュ』であったヨヴェ=カージェスに連れられ、キオ・スー城でノヴァルナの前に現れた時の光景が蘇る。

「俺はこうなった事を、一生後悔し続ける…まぁ、たとえおまえが死んでいても、後悔すんのは変わんねぇだろうが、な」

 そう告げたノヴァルナは、寂寥感を帯びた苦笑を浮かべた。

「申し訳ありません…」

 頭を下げて詫びるヴァルミスに、ノヴァルナは笑みの質を変えて言う。

「でもまぁ正直言って、俺は嬉しいぜ。これからはヴァルミス・ナベラ=ウォーダとして、頑張ってくれや」

 そして与えられた初めての役目が、本人との入れ替わりの可能性を持たせた、ノヴァルナの影武者としてイチ姫の輿入れを間接支援する事であった。

 ホログラムスクリーンに“イチ姫輿入れ艦隊”の、推定現在位置が表示される。被っていた仮面を置いた鏡面仕上げの机に、呟くヴァルミスの口許が映っていた。


「イチ。どうか無事で、そして幸せに………」



 同時刻、ジャルミス暗黒星雲。

「こちらトルーパーズ・ゼロワン。『トルーパーズ』全機、発艦する」

 BSHO『テンライGT』に乗るトゥ・シェイ=マーディンが、通信機に告げ、エンジン出力を上げる。戦闘輸送艦『ヴェルガルード』の格納庫から一直線に飛び出した『テンライGT』に従って、四隻の『クォルガルード』型戦闘輸送艦から、十五機の親衛隊仕様『シデン・カイXS』が続々と発艦し始める。ロッガ家のものと思われるBSI部隊を、前方哨戒に出した『シデン・カイXS』が発見したのである。

「敵部隊は、雲間でこちらを待ち伏せしていた模様。機数は約三十」

 母艦からの情報を得て、マーディンは呟いた。

「三十か…少ないな」

 前方哨戒に出していた機体を合わせて、『トルーパーズ』は二十四機。敵とほぼ同数だが、これが待ち伏せの全てではないはずだ。しかしこちらもまだ、ノヴァルナ様と『ホロウシュ』のウイザード中隊が控えている。それにこの距離で敵BSI部隊だけがいるはずはなく、どこかに母艦を含む艦隊がいるに違いない。本格戦闘になるのはまだこれからだ。

「手早く片付ける。全機続け!」

 発艦を終えた部下達に呼び掛けたマーディンは、『テンライGT』を一気に加速させた。
  
 だが敵と接触した瞬間、マーディンのパイロットとしての勘が、警報音を鳴らした。敵の正確な数は二十八。それが『トルーパーズ』の射撃の間合いに入る直前、まるで花火のように規則正しく並び、一瞬で散開したからだ。

“こいつら、手練れだ!”

 同時に違和感を感じ、センサーの反応を再確認するマーディン。分散したあとの敵機の反応が異様に小さい。それに数が三十六に増えている。

「全機警戒しろ!」

 普段の敵とは違う!―――マーディンは部下に警告し、咄嗟に『テンライGT』で縦方向への捻り込みをかけた。その直後、ロックオン警報が鳴り始めたほんの数秒後、機体を捻り込んだ位置に、超電磁ライフルの銃弾が飛来して通過。死の香りをマーディンに嗅がせる。恐るべき照準能力だ。単調な機動を行っていたら、機体を撃ち抜かれていただろう。
 コクピットを包む全周囲モニターを、目まぐるしく駆け回る複数の敵反応を眼で追いながら、マーディンはさらに機体を旋回させた。タイミングを見計らって敵機に照準を合わせる。だがやはり反応が―――的が小さい。ロックオン表示が出るや否やトリガーを引くが、飛び出した銃弾は虚空を貫くだけだ。

「もっと確実に着弾させないと駄目か!」

 しかしなんだこの反応の小ささは…と、マーディンは眉をひそめる。敵の機体の反応自体は、銀河皇国直轄軍も使用しているBSIユニット『ミツルギ』の、親衛隊仕様機なのだが、機体サイズがまるでカラス並みなのである。これが密集していたため、三十六機が二十八機しかカウントされなかったのだ。

 そこへマーディンの僚機が発する絶叫が、スピーカーを通して飛び込んで来る。

「うわぁああああっ!!!!」

 次いで視界に差し込む爆発の閃光。マーディンの部隊指揮用モジュールに、『トルーパー・トゥエルヴ』の喪失が表示された。さらに『トルーパー・ゼロエイト』も、上方から撃ち下ろされた銃弾に、腹部を貫通され爆散する。『トルーパーズ』のパイロット達も、『ホロウシュ』や『スレイヤー中隊』に匹敵する、高い技量の持ち主であり、それが容易く倒されたとなると、油断ならない敵である事が知れるというものだった。

「く…こやつらが、五十三家か!?」

 敵の素性に気付いてマーディンは歯噛みする。“コーガ五十三家”との戦いを想定してはいたが、待ち伏せの初手から出て来るとは思わなかったのだ。だがトゥ・シェイ=マーディンとて、かつては『ホロウシュ』筆頭を務めたつわものである。『テンライGT』のバックパックから、長大なポジトロンランスを手に取って、大きくひと振り、双眸を武人の光で輝かせて言い放った。

「よき敵、得たりしかな!」




▶#06につづく
 
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