銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#06

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 マーディン率いる『トルーパーズ』が接触したのは、紛れもなくロッガ家の特殊BSI部隊、“コーガ五十三家”の一団である。

 彼等が使用している機体は、皇国直轄軍でも採用しているBSIユニット、『ミツルギ』の親衛隊仕様機『ミツルギCC』だが、これをさらに改造した“コーガ五十三家仕様”の、『ミツルギCCCトリプルシー(Coga Command Custom)』と呼ばれる機体だ。
 『ミツルギCCC』の特徴は、限界まで高めた瞬発性と、戦闘時でも機能する準ステルス能力にある。機体加速や各関節駆動部のレスポンスは、操縦者自身を置き去りにするほどの素早さを有し、準ステルス機能が相手機体のセンサーへの、補足面積を最小限にしていた。マーディンらの機体のセンサーが、『ミツルギCCC』の反応を、カラスなどの野鳥サイズでしか補足できないのは、この準ステルス機能のためだったのだ。

 通常のステルスモードなら、『シデン・カイXS』などの一般的な親衛隊仕様機以上の機体も備えている。しかしこちらのステルスモードは、一定速度で飛行している間は、長距離センサーに感知されないというものであった。これに対し準ステルス機能は、センサーには感知されるが、そのサイズを小さくする事で、逆に相手を攪乱するのである。

 その準ステルス機能が、さらに『トルーパーズ』の機体を仕留める。目標となった『トルーパーズ・18』が、自分へ真っ直ぐ接近するセンサー反応に向け、超電磁ライフルを放つと、それは命中直前に三つに分かれた。反応のサイズが小さいため、三機がひと固まりとなっていたのが分からなかったのだ。
 無論、『トルーパーズ・18』のパイロットも腕利きである。この事態に即座に機体を翻して、三方向から回り込まれる事を避けようとした。ところが次の瞬間、三方向に分かれた反応のうちの一つが、さらに二つに分かれると片方が急加速。前方へ先回りして来る。『トルーパーズ・18』はその敵機に牽制の射撃を行って、急旋回で新たなコースを取った。だがその行動が命取りとなる。新たに取ったコースは、二つに分かれた敵機のもう片方の射撃ゾーンだったのである。バックパックに超電磁ライフルを銃弾を喰らった『トルーパーズ・18』は、ジャルミス暗黒星雲の雲間に砕け散った。

「敵は厚い連携で来ている。こちらも相互支援に重点を置き、単機戦闘は控えろ。時間を稼げ」

 戦闘状況を把握したマーディンは、配下の『トルーパーズ』に指示を出し、自らは『テンライGT』を新たに発見した反応へ向けていた。渦巻く星間ガスの柱の陰に潜む三つの反応。おそらく指揮官機と護衛だ。
 
 この“コーガ五十三家”の先行部隊を指揮しているのが、ザラヌラ=ミーヴェ。ヒト種とほぼ変わらない姿のフェミア星人の若い女性で、褐色の肌と対照的な淡い水色の髪をアクアマリンの瞳が印象的だ。サイバーリンク特性の高い彼女は、専用機のBSHO『バンフウOZ』を与えられている。

「ふぅん…結構、しぶといよね」

 戦術状況ホログラムを眺めながら、ザラヌラは唇を尖らせて不満そうに言う。ただその口調は軽い感じだ。こちらはこちらで、思ったほど戦果が挙がって来ていない事に、戸惑いを感じ始めていたのだ。
 当初の予定では、ウォーダ側の迎撃部隊を十分で半数撃破、突破して、こちらのBSI本隊の露払いを行う手筈であった。それがいまだ敵を三機しか撃破できていないのは、誤算と言っていい。それだけ敵の親衛隊仕様機パイロットの、技量が高いという事だ。ウォーダ家の姫が乗った船を守らなければならないとあって、士気も高いのだろう。

「間もなく、本隊が発艦する時間ですが」

 ザラヌラの護衛に付いている、『ミツルギCCC』の一機が通信を入れて来る。

「仕方ないなぁ…」

 ザラヌラは操縦桿に両手を置いたまま、んー…と背伸びをした。

「みんなの手柄を横取りしちゃうかもだけど、このままじゃ、モティガン様に叱られちゃうだろうからね。あたしが突破しようか」

 軽い口調でそう言って、機体を発進させるザラヌラ。だがその時。前方に林立する渦巻く星間ガスの柱の間を縫って、ウォーダ家の機体が一機、急接近して来る事に気付いた。

「敵? こんなところまで? はやっ!」

 こんなところまで接近を許した事に、意表を突かれたザラヌラの視界の中で、センサーが敵機の射撃反応を表示する。ロックオン警報が鳴らないのは、自分が照準されたのではない。次の瞬間、全周囲モニターが右側に映していた、護衛の『ミツルギCCC』が大きく機体をロールさせた。回避運動だ。銃弾を一発回避。ところがそのロールが終わらないうちに次の銃撃が来て、護衛機は爆散した。サッ!…と緊張するザラヌラ。どこか呑気そうだった眼が、一瞬で野獣のように鋭くなる。

「敵の機体…BSHO『テンライGT』!」

 準ステルス機能を作動させていたはずの護衛機を、僅か二発で撃破した敵機の名を、解析情報から得て口にするザラヌラ。その『テンライGT』を駆るマーディンは、加速を続けながら強く言った。

「的が小さくとも、しっかり狙えば当てられるさ!」




▶#07につづく
 
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