銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#21

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 思えばおよそ二年前…イマーガラ家の大規模侵攻を受けたウォーダ家は、総員が一丸となって、出来る事は全て手を尽くしてこれを迎え撃った。そして見事、敵主君ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち取る事に成功、勝利を手にしたのである。

 然るに、イースキー家はどうか。

 その答えは明白であった。重臣ダルノア=サートゥルスに続き、イースキー家の戦力の要であった、“ミノネリラ三連星”のウォーダ家への寝返りが決定的な引き金となって、他のベテラン武将達の離反も一気に加速。12月30日より開始された、ウォーダ軍による首都惑星バサラナルム攻略戦において、イースキー軍は全くと言っていいほど機能していない。

 進攻して来たノヴァルナ直卒の四個艦隊に対し、イースキー軍は筆頭家老のトモス・ハート=ナーガイの指揮のもと、第五惑星公転軌道上に一応、防衛線らしきものを構築し、ノヴァルナ側を上回る五個艦隊を配置していた。
 だが精鋭なのはトモス直卒の第2艦隊のみで、残る四個艦隊はみな、亡きビーダとラクシャスが子飼いとして集めた若手武将が、出世欲を捨てきれずにオルグターツへ取り入り、司令官職に居座っているような者達である。そのような者が司令官であるから、技量も士気も高くはない。

“はん…コイツは、演習でナルガの奴相手に戦うより、よっぽど楽だぜ”

 総旗艦『ヒテン』の艦橋で、戦術状況ホログラムを眺めるノヴァルナは、イースキー軍の前衛艦隊がこちら側の攻撃により、みるみるうちに寸断されていく様子につい、気が緩みそうになっていた。司令官席の傍らに立つ、ヴァルミス・ナベラ=ウォーダが、そんなノヴァルナの心情を察したのか、仮面の下から落ち着いた口調で反応する。

「ひどいものですね…」

 ノヴァルナは「ああ」と頷いて言葉を続ける。

「三連星の連中や、ハーヴェンとかいうヤツが居なくなっただけで、このザマだからな。“国を栄えさせるは長き上り坂、滅びさせるは急なる下り坂”って事さ」

「ほう…誰の言葉ですか?」

「俺の言葉」

 あっけらかんと言い放つノヴァルナの瞳に、乗っている『ヒテン』が一斉に放った、大口径主砲ビームの青い発光粒子の帯が映り込む。その光の帯は左に同航戦を行っているイースキー軍の宇宙戦艦に命中。四枚展開していたアクティブシールドを全て無効化した。艦自体には損害はないというのに、反撃もそこそこに慌てて距離を取り始める敵戦艦の動きが、イースキー側の士気の低さを露呈していた。
  
 一方でイースキー軍の指揮を執るトモスには、ノヴァルナのように言葉遊びをしている余裕など、あろうはずもない。ウォーダ軍の猛攻に押されるばかりの味方に対し、第2艦隊旗艦から必死に指示を出して立て直しを図ろうとしている。

「残りのBSI部隊も全て発艦させろ。味方の宙雷戦隊の援護に回せ!」

「なに!?…こちらの方が数は多いんだ。力押しで跳ね返せ!」

「損害を恐れるな。ここを突破されたら、バサラナルムはすぐそこだぞ!!」

「何をやってる!!?? もっと射撃精度と密度を高めろ。突破されるぞ!」

 立て続けに命じるトモス。他の重臣達と袂を分かち、ビーダとラクシャス亡きあとのオルグターツに、上手く取り入る事に成功した強かな男だが、武将としての能力も低くはない。事実、せわしなく出す命令は、どれも的を得たものだ。
 しかし問題はその指揮下にある司令官連中だった。トモスの指示を聴いていないのか、聴く気が無いのか、イースキー軍の動きに改善は全く見られない。それどころかウォーダ軍の複数の宙雷戦隊が、それぞれ単縦陣を組んで突撃を仕掛けると、宇宙魚雷の統制射撃を恐れて、散り散りに逃げ回り始める。こういった光景を見たヴァルミスが、「ひどいものだ」と言ったのだ。

「馬鹿め、逃げるな! あれは見せ掛けだ。まだ、統制雷撃のタイミングではないのが、分からんのか!!」

 トモスは味方の慌てぶりに、苛立ちもあらわに声を張り上げた。宙雷戦隊が宇宙魚雷を一斉同時に発射する統制雷撃は、勝利を決定づける局面、または劣勢からの逆転を狙う局面で行う攻撃である。したがって序盤の現時点での、統制雷撃は考え難く、セオリー的には統制雷撃を行うと見せ掛けて戦列を乱し、BSI部隊の突入もしくは、砲撃戦を有利に進めるきっかけ作りが目的となる。
 無論、そのような事は戦技訓練でなどで、士官学校時代に学んでいるはずで、それが実践出来ていないところが、彼等の司令官としての技量の低さを示していた。

 そして案の定、陣形の乱れたイースキー艦隊に対し、ウォーダ艦隊から戦艦部隊が前進。主砲射撃の勢いを激しくする。イースキー艦隊に炸裂する閃光の数が一気に増して、被害報告の件数も跳ね上がる。さらにウォーダ家の空母群から、艦載機の第二波攻撃隊が発艦した旨の報告が入った。このままでは、BSI部隊の第二波攻撃のあとに、本当の宙雷戦隊による突撃と統制雷撃が行われてしまう。

「艦列を立て直せ!! 急ぐんだ!!」

 叫ぶトモスのこめかみに、血管が太く浮かび上がった。



▶#22につづく
 
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