銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第6話:皇国再興への道

#02

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「新しい星帥皇だと!?」

 そう言えば…と、ノヴァルナには思い出す事があった。戦死したと伝えられているテルーザ・シスラウェラ=アスルーガには、ジョシュア・キーラレイ=アスルーガという名の弟がいる。これは五年前に皇都を訪れたノヴァルナが、テルーザから直接聞いた話だ。当時のジョシュアは皇都惑星キヨウのあるヤヴァルト宙域の隣、ヤーマト宙域のウロヴォージという植民星系で、考古学を学んでいたようだ。

 その事をノヴァルナが明かすと、キノッサが普段の口調で問い掛けた。

「ではその弟君をミョルジ家が、新星帥皇に仕立て上げたという事ッスか?」

「分からねぇ。可能性として、一番高くはあるがな…それよか本題だ」

「はっ! こちらをご覧ください」

 キノッサは口調を元に戻し、ホログラムパネル立ち上げて、パスコードを入力した。ノヴァルナ、キノッサ、それにナルガヒルデの視線が集まる先で、大型のホログラムスクリーンが展開し、メッセージ映像が流れ始める。

 銀河皇国の紋章であり、アスルーガ家の家紋でもある“棒渦巻銀河紋”が、初めに映し出され、続いてオリーブ色の軍装姿の四人の男が並ぶ姿に変わった。軍装はミョルジ家のものだ。その中の一番若そうな一人が、前に進み出て話し始める。ノヴァルナ達と同年代のようであった。

「ミョルジ家当主ヨゼフ・サキュダウ=ミョルジです。今回、各宙域星大名の方々に、以下の事を宣言させて頂きます―――」

「あれがミョルジ家の、新しい当主ッスか…」

 呟きを挟むキノッサ。前当主でキヨウを事実上支配し、ミョルジ家の勢いを現在の高みまで進めた、ナーグ・ヨッグ=ミョルジは半年前に急死し、現在はその嫡男のヨゼフ・サキュダウが地位を継承している。ヨゼフの背後に並ぶのがナーガス=ミョルジ、ソーン=ミョルジ、トゥールス=イヴァーネルの“ミョルジ三人衆”に違いない。これにヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガを加えた四人が、ナーグ・ヨッグの覇権を支えて来た重臣であった。

 ヨゼフをはじめとするミョルジ家の、キヨウ襲撃の言い分はこうである。

 発端は皇国暦1557年。ミョルジ家の同盟者だった、カウ・アーチ宙域星大名ガルノ=ウーサーが暗殺される事件が起きる。真犯人は不明の事件で証拠は不充分だったが、ミョルジ家はこれをテルーザが密かに指示していたものと疑っており、前ミョルジ家当主のナーグ・ヨッグの死も、テルーザが裏で糸を引いている可能性が高いと考えていた。
 そして今度は新当主のヨゼフに対しても、暗殺計画が動いている事を察知。ミョルジ家存続の危機に、最早やむなしと判断してテルーザの排除を行った…と。
 
 ヨゼフ・サキュダウ=ミョルジの主張を聞いたノヴァルナは、いかにも胡散臭そうな顔をする。自分が知る星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガは、清廉潔白な人間であり、自分と敵対する者に対して暗殺などという手段を、採るはずはないからである。だからこそ正面切って戦う力がないまま、今までテルーザはミョルジ家の傀儡に甘んじて来たのだ。

 だがノヴァルナの思考とは関係なく、ミョルジ家からのメッセージは続く。

「…そも、今回の戦乱の世は、星帥皇室アスルーガ家の内紛を基にする、“オーニン・ノーラ戦役”に端を発したものです。そして今から七年前、我がミョルジ家は当時、上級貴族筆頭として権勢を振るい、銀河皇国を私物化していたハル・モートン=ホルソミカの一派を排除し、テルーザ陛下を新たな星帥皇として奉じました」

 これについては事実ではある。敵対していた上級貴族ヤーマナ家とその一派に、“オーニン・ノーラ戦役”で引き分けに近い形で勝利したホルソミカ家が、この百年の間、宰相―――執権摂政として銀河皇国を事実上支配していた。
 当初はミョルジ家もこれに従っていたのだが、やがてホルソミカ家から敵視されるようになり、存亡の危機を感じたナーグ・ヨッグ=ミョルジは、ホルソミカ家に対して戦端を開く。
 皇都惑星キヨウまで攻め込まれたホルソミカ家は、時の星帥皇ギーバス・ランスラング=アスルーガを連れ、オウ・ルミル宙域との国境付近にある、ク・トゥーキ星系へと逃亡した。
 ここでミョルジ家は星帥皇室と和解。ギーバス・ラングランスが退位し、長男のテルーザ・シスラウェラが星帥皇の地位を継承する事―――ミョルジ家の傀儡となる事で決着したのである。

「…しかしながら皇都へ帰還したテルーザ陛下は、キヨウの復興や皇国の秩序回復になんの具体策も示す事無く、自分達の権力回復にのみ傾注し、我々ミョルジ家の排斥を目論むようになりました」

 さらなるヨゼフの言葉に、ノヴァルが明らかに不機嫌そうになるのを感じ取り、傍らにいるキノッサは口元を引き攣らせた。こちらの言葉は半分以上、嘘が混じっているからだ。星帥皇テルーザが皇都と戦国の世の荒廃を憂い、復興と秩序回復にどのような指示を出しても、全く動かなかったのはミョルジ家の方なのだ。

「…そして、このように終わらない権力の争奪の繰り返しに、終止符を打つべし、と号令された方が現れられました。それがこちらにおわす新たな星帥皇、エルヴィス・サーマッド=アスルーガ陛下です」

 そう告げたヨゼフと“ミョルジ三人衆”が左右に分かれると、背後に張られていた幔幕が上がり、玉座に座る若者が現れる―――その姿形は、戦死したと伝えられたテルーザと瓜二つであった。



▶#03につづく
 
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