288 / 526
第11話:我、其を求めたり
#22
しおりを挟むスロットルの全開と絞り込みを激しく繰り返し、目まぐるしく間合いを変えながら、『センクウ・カイFX』と『メイオウSX-1』は斬撃を放ち合う。神速で振るわれる双方のクァンタムブレードの動きは、人間の視覚では捉えられない。二機の間で幾度も飛び散る火花が見えるだけだ。その中でエルヴィスの声が響く。
「ハハハ! やりおる!!」
“高機動モード”を発動させているとはいえ、宙域の全てのNNLシステムを支配している『メイオウSX-1』に比べれば、『センクウ・カイFX』の不利は否めない。それが互角に戦っているのは、偏にノヴァルナの高い技量があってこそだ。
対するエルヴィスも、伝説のBSIパイロットのヴォクスデン=トゥ・カラーバの弟子でもあった、テルーザ・シスラウェラ=アスルーガの複製バイオノイドだけの事はあり、その技量は凄まじい。
ただノアに放った“秘剣・一つの大刀”はおそらく、『ライオウXX』に乗ったテルーザ辺りの映像データを、自分で解析して会得したものだろう。ヴォクスデンがエルヴィスを、弟子とは認めないはずだからだ。
「ぬおおおおおっ!!」
「たあああああっ!!」
すれ違い直後に互いに機体を翻し、クロスカウンターのように斬撃を放つノヴァルナとエルヴィス。『センクウ・カイFX』の左脇腹、『メイオウSX-1』の胸元の装甲板に亀裂が入る。そこからノヴァルナはブレードを右手一本で握り、素早くぶん回した。威力はないが圧倒的な速さの一撃が、『メイオウSX-1』の右大腿部に裂傷を負わせる。
「うぬ!!」
余分な一撃を浴びた事に苛立ちを感じ、即座に反撃しようと踏み込んで来るエルヴィス。ホバリングで急速後退したノヴァルナの『センクウ・カイFX』は、『メイオウSX-1』が直線的な動きになった瞬間、停止して地表の砂を爪先で蹴り上げた。灰色の砂煙が噴き上がり、『メイオウSX-1』の視界を一瞬遮る。そこから『センクウ・カイFX』は突進に切り替え、たじろいだ『メイオウSX-1』に斬りかかった。
砂煙で視界を遮られても、センサーの反応を見れば『センクウ・カイFX』の位置は、知る事が出来るはずだ。だが戦場経験の少ないエルヴィスは、視覚の方を優先していたため、反射的にたじろいでしまったのである。隙を突いたノヴァルナのブレードが、『メイオウSX-1』の左肩を刺し貫いた。
しかし『メイオウSX-1』は強引に、ブレードを振りかぶって気を溜める。秘剣の気配だ。
機体を翻しながら、クァンタムブレードを真横にした『センクウ・カイFX』に向け、『メイオウSX-1』の長刀の残像が迫る。だがその残像が『センクウ・カイFX』のブレードに達するより前に、複数の衝撃がブレードから伝わって来た。“秘剣・一つの大刀”の特徴、残像より先に到達する実際の長刀の斬撃だ。腹に堪える震動がコクピットを震わせ、ノヴァルナは歯を喰いしばる。
「おお!」
自らの秘剣を防がれ、感嘆の声を上げたのはエルヴィスであった。
「素晴らしいぞ、ウォーダ卿! 流石は我が兄テルーザが認めた男!」
エルヴィスはこれまでに述べた通り、テルーザの弟でもクローン猶子でもない、現在のテルーザの姿を複製した“模造品”である。それは自分がテルーザの双子の弟だという記憶が、偽物であるという事と合わせて、エルヴィス自身もすでに知らされた事実だ。
それでも今、エルヴィスはテルーザを“我が兄”と呼んだ。“良き敵”ノヴァルナの技量の高さに、気持ちが昂揚しているのだろう。自らにテルーザのような強さを求めたのかも知れない。
“この感覚!…これが、これこそが、余が求めていたもの!!”
スロットルを全開にするエルヴィス。灰白色の砂煙が一段と高く上がり、『メイオウSX-1』の踏み込みの速度が最大限へ達する。秘剣ではないが必殺の間合いからの、長刀の薙ぎ払い。対するノヴァルナの反応も速い。瞬時にフットペダルを複数回踏み、重力子と反転重力子を交互に放出し、『センクウ・カイFX』の機体をローリング、かつ片膝をついて、まるでブレイクダンスのような機動で、『メイオウSX-1』の放った切っ先を回避する。バックパックを掠めたその間隔は、僅か三十センチほどだ。そして躱しただけでなく、低い位置から斬撃を返す『センクウ・カイFX』。だが一瞬早く跳び上がった『メイオウSX-1』に、ノヴァルナが放ったブレードは虚しく空を斬る。
ただこれはノヴァルナの読み通りだ。『メイオウSX-1』が宙へ脱した隙に、『センクウ・カイFX』は体勢を立て直すと、相手の着地点へ突進した。
「見えておるわ!」
そう叫んだエルヴィスは、着地するよりコンマ数秒早く、機体を捻ると同時に長刀を振るう。ジリジリと火花が散り、ノヴァルナが跳ね上げるように仕掛けた斬撃を受け流す。そこから互いに振り向きざまの袈裟掛け一閃。しかしこれも刃と刃が切り結び、有効な斬撃とはならない。
▶#23につづく
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる