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第11話:我、其を求めたり
#23
しおりを挟む刃の切り結びを解き、二機のBSHOは距離を置く。ここまでは“トランサー”を発動させたエルヴィスと、ほぼ互角に戦って来たノヴァルナだが、その呼吸は次第に荒くなって来ていた。
エルヴィスに対抗して『センクウ・カイFX』に発動させた、“高機動戦闘モード”は、本来であればノヴァルナ自身も、“トランサー”を発動させた上で稼働させるものである。それをノーマル状態のまま稼働させたため、心身への負担が蓄積されていっているのだ。
さらに『センクウ・カイFX』の機体そのものにも、各所に相当な負荷がかかるため、長時間にわたって“高機動戦闘モード”を続けてはいられない。
次で決着をつける!―――
それはノヴァルナとエルヴィスの共通認識だった。エルヴィスもまた、自分に限界が迫っている事を自覚していたからだ。なぜなら―――
「参る!!」
決意を込めた声を発したエルヴィスの、『メイオウSX-1』の周囲に、リング状に砂煙が立つ。それは重力子の放出だったが、搭乗者が放つ強大な気迫のように見えた。
そして対するノヴァルナの『センクウ・カイFX』は、砂煙の量は少ないが機体の周囲で、ゆっくりと静かに渦を巻いている。コクピットのノヴァルナは肩で息をしてはいるが、高まった集中力が双眸を、澄んだ湖面のように透き通らせている。
二秒………
三秒………
双方の呼吸が合った瞬間、二機のBSHOの周囲の砂煙が爆発的に増えた刹那、ノヴァルナとエルヴィスは猛然と間合いを詰めた。二人の果し合いを拡大映像で見守るノアが、『サイウンCN』のコクピットで両手を組み、祈りを込めたその時、二本のブレードはこの日、幾度目かの打ち合いを行った。
すぐさま機体を右へ回り込ませ始めるノヴァルナとエルヴィス。死の円舞から繰り出される第二撃、第三撃。互いの機体に次々と裂傷が発生する。だが外殻へのダメージばかりで、決定打とはならない。
「おおおおおおお!!!!」
すると次の双方の斬撃。ブレードの長さの差が出て、『メイオウSX-1』の長刀が、切っ先で『センクウ・カイFX』の首筋を捉え、真っ赤なプラズマを噴き出させた。『センクウ・カイFX』のコクピットに、近接照準センサーとの接続が断裂した事を告げる警報が表示される。これを勝機とエルヴィスは気を溜めて、『メイオウSX-1』の長刀を振りかぶった。“秘剣・一つの大刀”の構えだ。叫ぶエルヴィス。
「これで終わりだ!!」
絶体絶命の瞬間―――
だがノヴァルナには確信があった。エルヴィスが今まさに放とうとしているこれは、自分が知る“一つの大刀”ではない…と。
なぜなら今の自分には、エルヴィスの『メイオウSX-1』が繰り出す、長刀の太刀筋が全て見えているからだ。
それは四年前、皇都惑星キヨウで星帥皇テルーザとの模擬戦で、完膚なきまでに敗北したノヴァルナが、テルーザの師匠だったヴォクスデン=トゥ・カラーバの元を訪れた時の事である。
ヴォクスデンを討ち取って、名を上げようと挑んで来たフリーのパイロットに対して、本物の“秘剣・一つの大刀”を放つヴォクスデンを、自分の眼で見る機会がノヴァルナにはあった。そしてその時、初見ながら僅かに秘剣の太刀筋を見切り、ヴォクスデンを驚かせたのだ。その際の経験がエルヴィスの技を、偽りの秘剣だと告げている。
「はあああああああっ!!!!」
裂帛の気合と共にノヴァルナも無数の斬撃を繰り出す。それはスローモーションのような太刀筋の残像の周囲で、幾つもの火花が散る不思議な光景だった。互いのブレードが激しく打ち合っているのだ。しかも防ぎ切れない斬撃によって、双方の機体の複数個所で、装甲板が切り裂かれていく。
「卿を討ち取って、余は後世に名を残す!!!!」
返す刀で再び繰り出す“秘剣・一つの大刀”に、エルヴィスの叫びが重なる。だがノヴァルナは負けられない。無数に放たれる斬撃を防ぎながら、自分自身と自分が乗る機体に呼び掛けた。
“この『センクウ・カイFX』は本当は、テルーザの奴と再会した時、もう一度模擬戦を挑んで、今度こそ勝つために作ったBSHO!…負けられねぇんだよ!!!!”
そこへ渾身の一撃を放とうと迫る、『メイオウSX-1』とエルヴィス。
「決める!!!!」
殊更緩やかな残像で放たれようとする長刀の秘剣。ところがそれを受ける『センクウ・カイFX』からは一瞬、ピタリと闘気が収まった。機体の中に吸い込まれたような気配だ。エルヴィスが「むっ!」と眼を見開いた次の刹那、『センクウ・カイFX』の全身から、豪!…と闘気が一気に噴き出す。
「限界を超えてみせろ!『センクウ・カイ』!!!!」
ノヴァルナが放ったのは、複数の斬撃ではなかった。全神経を集中させたブレードのただ一閃。しかしその一閃は、『メイオウSX-1』が放った偽りの秘剣を全て打ち払い、コクピットにまで達した、勝敗を決定づける剣となった………
▶#24につづく
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