銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第11話:我、其を求めたり

#27

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 ブラグの申し出をノヴァルナが有難く受けた翌日。エルヴィスの死を通告されたミョルジ家の指導部“ミョルジ三人衆”は、衝撃の大きさに完全に浮足立った。決戦地に設定したアクターヴァン星系のあるセッツー宙域に、ウォーダ家を中心とした銀河皇国軍宇宙艦隊が、大挙して侵入しようとしている、その矢先の出来事だったからである。

 ナーガス=ミョルジ、ソーン=ミョルジ、トゥールス=イヴァーネルの“ミョルジ三人衆”の戦略は、部隊を温存しつつ後退、エルヴィスがNNLシステムを支配していたはずの、セッツー宙域にあるアクターヴァン星系で、有利な状況の下で迎撃戦を挑むというものであった。
 ところが肝心のエルヴィスが死んだとなると、NNLシステムの制御権は、完全に現星帥皇ジョシュア・キーラレイ=アスルーガのものとなる。そうなるとNNLのメインシステムとの接続を切った状態にしなくては、全ての情報がジョシュアに筒抜けとなってしまうだろう。


「ここはやむなし。城は放棄。故郷のアーワーガ宙域まで後退し、捲土重来再起を図るべきだと思う」


 そう発言したのは、“ミョルジ三人衆”の筆頭格だった、ナーガス=ミョルジ本人であった。おそらく今の状況を見て…いやそれ以外の問題も、大きな壁があるように思えたのだろう。ただ戦略眼としては悪くない。当面を気にするより、“三十六計逃げるに如かず”である。残る二人も“致し方あるまい…”と、納得させる。



 かくして、ミョルジ家の部隊はセッツー宙域から全て撤収。当初ノヴァルナが意図していた、敵本拠地の『無血開城』が実現したのである。ミョルジ側にNNLシステムを握られている状態で戦えば、大きな損害を被る可能性が高く、それを打開するためのこれは、大いなる賭けであったのだ。

 しかもミョルジ側が撤収を始めたその直後、アルワジ宙域星大名ブラグ・ジルダン=アターグが、ウォーダ側への寝返りを正式かつ大々的に表明する。これはまさに“ミョルジ三人衆”にとり、痛恨事以外の何ものでもない。
 撤退途中にアルワジ宙域に攻め入る事も考えた三人衆だが、ウォーダ軍が追撃して来た場合、アターグ軍と挟撃される可能性があったために断念。セッツー宙域を引き払ったミョルジ家は一路、本来の領地アーワーガ宙域を目指した。

 そのうえ、この期に及んでミョルジ家内で再び内紛が起きる。これ以上の戦いは避け、新星帥皇ジョシュア・キーラレイ=アスルーガへの恭順を訴えた、ミョルジ家当主ヨゼフ・サキュダウ=ミョルジと、いまだ抗戦継続の意思を示す“ミョルジ三人衆”の分裂である。
 
 元々主戦論者では無かったミョルジ家当主のヨゼフは、事実上の“お飾り”であり、その立場は死んだエルヴィスと近いものがあった。それが実質的にミョルジ家を治めている重臣の“三人衆”に逆らった事から、なんと、ミョルジ家がアーワーガ宙域へ撤収する際、アクターヴァン城に置き去りにされてしまったのである。

 家臣が主君を置き去りにして逃げるという前代未聞の出来事に、ノヴァルナの影武者として仮面を被り、指揮を執っていたヴァルミス・ナベラ=ウォーダも、これには呆れ返るしかなかった。



 アクターヴァン城の上空を埋め尽くしたウォーダ艦隊から降下し、入城したヴァルミスを、それでもヨゼフは堂々とした態度で出迎えた。三人衆には見捨てられたヨゼフだったが、五十人ほどの家臣が付き従っており、それなりに人格者であるように見受けられた。
 ヴァルミスはまだアヴァージ星系にいるノヴァルナと連絡を取り、ヨゼフの処遇について指示を仰ごうかとも考えたが、傍受されて本物のノヴァルナの所在地が知られる可能性も考慮し、独断ながらノヴァルナであればこうするであろう…と想像し、自分で決定した。それはヨゼフを虜囚の類ではなく、客将―――協力者として迎えるというものである。

 苛烈な印象を受ける事が多いノヴァルナの行動だが、実際は温情で敗者を遇する場合が多い。ヴァルミス―――カルツェ自身が、兄から許されたように。
 そうであるならば、戦う意思のないヨゼフに無用な復讐心を向ける必要などはなく、むしろ顔を立ててやるべきなのだ。

 この決定をヴァルミスが重臣達に告げると、ナルガヒルデ=ニーワスやカッツ・ゴーンロッグ=シルバータ、カーナル・サンザー=フォレスタなど、ほぼ全ての者が賛意を示す。彼等もまた主君ノヴァルナの本来の姿をよく知るものであり、結果としてヴァルミスに対する信頼感も高まったのであった。“情けは人の為ならず”とはまさにこの事である。

 かくして皇国暦1563年7月5日。ミョルジ家掃討作戦の終了が、星帥皇ジョシュア・キーラレイ=アスルーガから宣告された。
 それと同時にエルヴィス・サーマッド=アスルーガは、6月30日に死去していた事も発表。その公式記録では、死因はSCVID(劇変病原体性免疫不全)によるものとなっている。またその素性はバイオノイドではなく、クローン猶子であり、かつての関白ハル・モートン=ホルソミカが、テルーザのクローン猶子を極秘裏に作って育てていたものを、ミョルジ家前当主のナーグ・ヨッグ=ミョルジが、見つけ出して来た…という事へ改変されたのであった………




▶#28につづく
 
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