銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#11

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同時刻:ヤヴァルト宙域、ヤヴァルト星系外縁部―――

 迎撃に出て来た皇国軍星系防衛艦隊を撃退した、“ミョルジ三人衆”は意気軒昂であった。

 バイオノイドの偽星帥皇エルヴィス・サーマッド=アスルーガを失い、ウォーダ軍に圧倒されて、元の領地アーワーガ宙域へ撤退。皇国支配の野心はついえたかのように見えた。
 しかし彼等はアーワーガ宙域で、早期の戦力の立て直しに成功。ウォーダ軍が自分の領地に引き上げ、ヤーマト宙域の半国を支配する、裏切者のヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガもミノネリラへ出向き、皇都の守りが手薄になっているこの時期を狙い、前年の12月24日に皇都襲撃の艦隊九個を出撃させたのだ。
 その最終目標は、実力行使で星帥皇室を廃止させ。星帥皇ジョシュアを支配下に収め、単なるNNLシステム制御の鍵として扱う事であり、旧当主ナーグ・ヨッグ=ミョルジが、長期計画で徐々に行う計画であったものを、一気に進めてしまおうとするものだった。



「敵星系防衛艦隊、第九惑星公転軌道まで後退。さらに遠ざかって行く模様」

 ミョルジ家第1艦隊を直卒する総旗艦『シンヨウ』の艦橋で、艦隊参謀の報告に頷くナーガス=ミョルジ。“三人衆”筆頭、六十代の小柄な男だ。司令官席に座るこの男の前方には、右側に第2艦隊を率いるソーン=ミョルジ、左側に第3艦隊を率いるトゥールス=イヴァーネルの、残る二人の等身大ホログラムが映し出されていた。

「こちらの損害は軽微。上手くいったようだな」

 ニタリと笑みを零すソーンの言葉に、イヴァーネルのホログラムも頷くが、注意喚起は忘れない。

「ああ。だが今の相手は皇国直轄軍の残存戦力を、寄せ集めただけの部隊だ。次はウォーダ家の正規軍が出て来るだろう。油断は禁物だぞ」

 イヴァーネルは“三人衆”の中で一番、戦術センスに優れており、“惑星ショーリュジンの戦い”では、ウォーダ艦隊に善戦していた。その男の発言にナーガスも同意する。

「分かっている。星帥皇室への謀叛人の我等は、NNLもローカルモードしか使えんからな。慎重に行くべきところと、大胆に出るところの見極めが肝要だ」

 するとそこにオペレーターが、第9艦隊からの意見具申を伝える。

「第9艦隊から、敵星系防衛艦隊を追撃し、戦果の拡大を図るべきだと、言って来ております」

 これを聞いてイヴァーネルのホログラムが苦笑いを浮かべる。

「第9艦隊…あの男か。ウォーダ家憎しの気持ちも、分からんではないが…」

 さらに失笑を交えてソーン=ミョルジが、第9艦隊の司令官の名を口にした。

「オルグターツ=イースキー…意気は買うが」
 
 そのミョルジ家第9艦隊は、ヤヴァルト宙域進攻軍の左翼最外縁を、高速で進撃していた。

 艦隊旗艦は航宙戦艦『ダーガット・ロア』。“航宙戦艦”とは、BSIユニットを軽空母並みの三十機前後搭載できる珍しい艦種で、通常の宇宙戦艦よりは砲戦能力に劣るものの、同型艦を一つの艦隊に複数配備する事により、機動兵器戦にも対応する利点がある。

 そしてその『ダーガット・ロア』の司令官席に座るのが、オルグターツ=イースキー。一年前までミノネリラ宙域を支配していた、イースキー家の当主だ。

「総旗艦『シンヨウ』より返信。“突出した追撃戦は必要を認めず。全艦隊は隊列を維持し、このままキヨウへ向かうものなり”との事です」

 通信参謀の報告を受け、オルグターツは「ふん…」と鼻を鳴らした。

「まァあ…仕方あるまい。なァ、総参謀長ォ?」

 そう言って司令官席の左側に立つ総参謀長を見上げるのは、巻き舌気味のイントネーションと、小太り体系から、やはりあのオルグターツだと知れる。

「なにぶんオルグターツ様は、客将の御身にあらせられますから…ここは、我々の士気の高さを示すだけでも、充分でしょう」

 穏やかな口調で応じる総参謀長は、トモス・ハート=ナーガイ。一年前にノヴァルナに敗れたオルグターツが、ミノネリラ宙域から追放された際に同行した、ただ一人のイースキー家の武将だ。

「そォだな。おまえのォ、言う通りだァ」

 納得顔で頷くオルグターツ。口調こそ以前のままだが、その眼はかつての放蕩三昧の毎日で、酒とドラッグの影響による、死んだ魚の眼同然であった頃とは打って変わり、鋭い光を宿していた。さらにトモスが、自分達の為すべき事を告げる。

「おそらくこのあと現れるであろう、ウォーダ軍の迎撃部隊を早々に撃破。星帥皇ジョシュア陛下を人質にし、キヨウを制圧する事が第一にございます」

「わァかってるさァ。そォして、ノヴァルナが出て来たら、これを討つゥ…そォだなァ? トモス」

「御意にございます。万一ノヴァルナ公の軍が、今すぐミノネリラ宙域を出撃したとしても、このヤヴァルト星系へ到着するには、十日はかかりましょう。それまでにキヨウを制圧し、迎撃体制を整えるのです」

「あァ、そォだ。頼りにしているぞォ、トモス総参謀長よォ」

 そう応じて戦術状況ホログラムを見据えるオルグターツの表情は、明らかに武将の顔をしていた………




▶#12につづく
 
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