銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第16話:アネス・カンヴァーの戦い

#05

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「軽巡『アロクルス』、駆逐艦『ベアンド12』『ラファックス07』大破!」

「重巡『ザグ・ブラズ』重力子ノズルに被弾! 速度落ちます!」

 自分艦隊への損害報告に、シルバータは歯を噛み鳴らして命じる。

「くそっ。反転して追え!」

 そうは言うものの、秒速で行われる宇宙での戦闘である。振り向いてみても、すでにウィッシュナー艦隊は宇宙の闇の彼方だ。するとウィッシュナー艦隊が通り過ぎて行った先の闇で、閃光が幾つも煌めく。そこにいたのはカーナル・サンザー=フォレスタの第6艦隊である。
 BSI部隊による機動戦に長けたフォレスタ艦隊だが、如何せん近距離砲戦には向いていない。主力兵装であるBSI部隊を使用できる局面でもなく、必死に防御火箭を敷いたが、ウィッシュナー艦隊の突進を止める事は出来なかった。

 この状況に、他のウォーダ軍艦隊にも動揺が伝播し始める。戦線は大きく広がっており、ノヴァルナの本陣は意外にも、手薄となっていたからだ。本陣近くにいたヨリューダッカ=ハッチの、第31艦隊が駆けつけようとするが、正面に居るアザン・グラン軍艦隊との砲撃戦に拘束され、出遅れてしまう。


 濃度の高い星間ガス雲を掻い潜り、ハッチの艦隊を振り切ったウィッシュナー艦隊の眼前には、ノヴァルナの第1艦隊が居た。

「ノヴァルナ公の艦隊だ。全艦突撃。総旗艦に攻撃を集中しろ!!」

 目指すノヴァルナの『ヒテン』を射程圏に捕捉し、ウィッシュナーは席を立って叫んだ。ノヴァルナの生死に関わらず、まず総旗艦を撃破すれば指揮系統を麻痺させる事が出来、この戦いは勝ったも同然だ。

「撃ち方はじめ!」

「全力射撃だ!」

 色めき立つウィッシュナー艦隊の各艦。だが『ヒテン』の司令官席に座るノヴァルナは、動じる様子もなく不敵な笑みを大きくする。

「面白ぇ! 相手になってやるぜ!!」

 これに応じて第1艦隊に所属する、十六隻の戦艦が一斉に主砲をぶっ放した。その練度は、ノヴァルナの直卒艦隊だけに桁違いだ。ウィッシュナー艦隊の先頭を進んでいた三隻の戦艦が、大量の主砲ビームを喰らって、たちまちズタズタになる。

「ぬぅ!!」

 強力な壁に突き当たった感覚に、ウィッシュナーは呻き声を漏らした。だがここで退くわけにはいかない。

「攻撃を続けろ。撃ち負けるな!」

 ウィッシュナー艦隊の砲火が『ヒテン』にも及ぶ。震動の中でノヴァルナは、不敵な笑みを浮かべたままだ。するとそこにレヴァル=サイドゥの第21艦隊が、急行して来る。レヴァルは自身の率いる艦隊を半分に分け、残した半個艦隊には防御に専念させておいて、残り半個艦隊をノヴァルナの援護に向けたのだ。これも出撃前に、姉のノアから“自分の代わりに夫のノヴァルナを頼む”と、依頼されていたからであった。

「全艦突撃。敵の前面に割り込みをかける!!」

 猛然と主砲を放ちながら、直進して来るレヴァルの艦隊。『ヒテン』への攻撃に集中していたウィッシュナーには、面倒な介入となる。戦艦群の側面に被弾の爆発光が弾け、重巡や軽巡、駆逐艦に損害が発生した。

「チィ。このタイミングで!」

 苦々しく言い捨てるウィッシュナー。レヴァル艦隊は攻撃の手を緩める事無く、ウィッシュナー艦隊の前方を通過していく。ノヴァルナの第1艦隊とを加えて、三つの艦隊が交錯、ビームと誘導弾が入り乱れた。その中で急速回頭を行ったレヴァル艦隊は、巡航艦と駆逐艦から宇宙魚雷を一斉発射する。近距離で放たれた多数の魚雷は、三つの艦隊の交錯地点で、網膜を焼きそうなほどの閃光を輝かせた。

 この戦闘の間に乗じ、ノヴァルナの第1艦隊は距離を取って、ウィッシュナー艦隊の戦艦部隊へ、精度の高い砲撃を撃ち込んだ。主力の戦艦が次々と被弾し、損害が大きくなる。ウィッシュナーの乗る旗艦も、ノヴァルナの『ヒテン』に同航戦を挑んだものの地力の差で撃ち負ける。『ヒテン』の砲撃が、的確にウィッシュナーの旗艦の急所に、痛撃を喰らわせて来たからである。

「我が軍、被害甚大です。この艦も、このままでは!」

 参謀長の言葉に、ウィッシュナーは自分の艦隊の限界を感じ取った。この突撃は自分達の全滅を覚悟したものではない。ウォーダ軍を開戦劈頭から、混乱に陥れるためのものだ。引き際を誤るわけにはいかなかった。

「よし。ここまでだ。全艦撤収!」

 ウィッシュナーの離脱命令で、指揮下の艦は全てが進路を変更して、撤収を始める。戦果を拡大する機会と見て、「追え!」と追撃を命じるレヴァル。しかしそこへ入ったノヴァルナからの通信が、深追いを禁じた。

「まだだ、レヴァル。次が来る!」

 ノヴァルナの言葉通りアーザイル軍は、ウィッシュナー艦隊が突進を仕掛けた個所から、新たな艦隊が次々と圧し込みをかけて来ている。まずはこの圧力から、自軍全体を支える必要があった。ノヴァルナは視線を鋭くして、第1艦隊周辺の部隊に、強い口調で呼び掛ける。

「ハッチ、レヴァル、ゴーンロッグ! ここで踏みとどまれ。押し切られるな!!」



▶#06につづく
 
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