銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#06

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 ナーガス=ミョルジの魂胆は、実のところ自分達だけ距離を置き、オルグターツの艦隊をノヴァルナの艦隊に突っ込ませて、時間稼ぎの盾にしようというものだ。
 ナナージーマのイーゴン教徒を通じて、オルグターツを客将として迎えた“ミョルジ三人衆”だが、扱いの底が見えた感がある。

 しかし当のオルグターツはやる気満々であった。司令官席から立ち上がり、胸を逸らして命じる。

「よォし! 戦艦部隊を先頭にィ、突撃を仕掛けろォ!」

 これに対し、通信科のオペレーター席にいた総参謀長の、トモス・ハート=ナーガイが駆け寄って来て意見する。

「お待ちください。オルグターツ様」

「なァんだ、トモス?」

 トモスはウォーダ軍に敗北したオルグターツが、ミノネリラ宙域を追放された際に、唯一ついて来た重臣であった。ノヴァルナに復讐するため、心を入れ替えたオルグターツが一番信頼している人物だ。

「ナーガス殿は、我等を盾にするつもりです。突出するのは危険です」

 トモスはイースキー家時代、艦隊司令官を務めて実戦経験も多かったため、ナーガスの意図もちゃんと見抜いていた。ただナーガスの意図については、オルグターツも理解はしているようだ。

「わかってるがァ、これは確かにチャンスでも、あるんだぜェ」

「リスクを取られる…というわけにございますか?」

 確かに突っ込めば、ノヴァルナ直卒のウォーダ軍第1艦隊と、一対一で戦える可能性は出て来る。問題はその状況へ持ち込むまでに、他のウォーダ艦隊から、どれだけの攻撃を受けるか、だ。

「頼むトモス。俺ァ、この手でノヴァルナを、討ち取りたいんだァ」

 保護者的立場でもあるトモスは、しばしの間思案したあと、条件付きで突撃に同意する。

「わかりました。ただしこちらの損害が増大した場合は、私の判断で戦闘を中止して、離脱致します。それでよろしければ…」

 トモスの返答に大きく頷いたオルグターツは、改めて下令した。

「よォし! 突撃開始だァ!」

 砲撃を繰り返しつつ後退する、三人衆とガザル=ミョルジの艦隊を尻目に、オルグターツ艦隊はまずBSI部隊を発進させ、急加速をかけて前進を開始する。
 ウォーダ軍主力部隊の前衛が、この動きに反応して攻撃の一部を割いて来た。これに対しオルグターツ艦隊は、ウォーダ軍主力部隊の下側に潜り込み、高速で通過して行く。その前方にいたのが、目指すノヴァルナの第1艦隊だ。叫ぶオルグターツ。

「いいぞォ、全力攻撃だァ!」
 
 オルグターツ艦隊の強引な前進は無論、ノヴァルナの『ヒテン』でも察知していた。オペレーターの報告を受け、ノヴァルナは“相変わらず阿呆なヤロウだ”と思い、「ふん…」と鼻を鳴らす。

 するとさらに通信参謀が新たな報告をもたらした。、オルグターツ自身から呼び掛けて来ているという。面倒臭そうに応じるノヴァルナ。

「オルグターツがなんだって?」

「はっ。“俺と勝負しろ”と、言って来ております」

 直立不動の通信参謀からこれを聞いて、ノヴァルナは呆れ顔になった。

「なんだあの阿呆あほうは。もうちっと、マシな言い方はねーのかよ」

 ただオルグターツの艦隊が、こちらへ迫って来ている事は確かである。ウォーダ軍主力部隊の前衛艦隊から、航過の際に砲撃を受けて、幾許かの損害を被ってはいたが、怯む様子は見せていない。ホログラムスクリーンが映し出た光学映像で、その様子を見据えたノヴァルナは、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。

「ちったぁ、根性見せるようになったか、バカ息子。だがなぁ―――」

 主君の言葉の跡を継ぐように、第1艦隊の戦艦と重巡航艦が、砲塔を一斉に旋回させ主砲を放つ。流れるような照準から発砲までの動きが、練度の高さを示している。
 ウォーダ軍第1艦隊の主砲射撃は、まずオルグターツ艦隊の先頭を行く、三隻の戦艦に集中した。逆三角形に並んだ三隻は、合わせて十八枚のアクティブシールドを、前面に密集させて防御力を最大まで高めていた。しかし第1艦隊が集中させた主砲ビームは、これを圧倒する。

 主砲ビームを立て続けに受けたアクティブシールドが、次々に機能不全を起こして宇宙を漂い始める。三隻の戦艦も主砲を撃ち返すが、機先を制されたために統制が取れず、ウォーダ軍第1艦隊には大きな損害を与えられない。

 それでも勢い優先のオルグターツはともかく、彼を補佐するトモスは無策では無かった。三隻の戦艦が押されながらも盾の役目を果たしている間に、全てのBSI部隊を発進させる事に成功したのだ。

「全艦載機発艦完了です。盾役の戦艦に後退を!」

 トモスの進言にオルグターツは頷き、三隻の戦艦に後退を命じる。三隻ともすでにアクティブシールドを全て失い、艦の外殻を覆うエネルギーシールドで持ち応えている状態だった。全速後進をかける三隻。そこへ総旗艦『ヒテン』の放った主砲が一隻を直撃。総旗艦級戦艦の高威力ブラストキャノンの前に、左舷側が大きく引き裂かれて火柱を吹き出した。



▶#07につづく
 
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