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第18話:閉じられし罠
#07
しおりを挟むオルグターツ艦隊の各宇宙空母と、航宙戦艦である旗艦『ダーガット・ロア』から発進したBSI部隊は、爆発した戦艦がまき散らす破片の中を掻い潜り、ノヴァルナの第1艦隊へ向かう。
艦隊戦が行われる戦場まで、防御力の脆弱な空母戦隊を連れて来るのは、戦術としてはある意味邪道ではあったが、BSI部隊による敵艦隊への速攻という点においては、評価できるトモスの戦術である。
母艦を発した三人衆軍のBSI『サギリ』と、ASGUL『ラシュラム』の混成部隊は全て、ノヴァルナの『ヒテン』がいる第1戦隊を目指した。それぞれの部隊指揮官が、センサーに捕捉した『ヒテン』の姿にほくそ笑む。ウォーダ側のBSI部隊の反応は周囲に無く、出し抜く事に成功したと感じ取ったからだ。
「全機。敵戦艦の間をすり抜けて、『ヒテン』に対艦誘導弾を発射。しかるのちに離脱の一撃必中に徹せよ」
「中隊各機。機体の機動性を活かし、敵の戦艦からの砲火を回避。『ヒテン』に攻撃を集中だ」
指示を出すオルグターツ艦隊のBSI部隊指揮官。ここまではトモスの想定通りだった。ところがトモスという武将、艦隊司令官としての場数は踏んでいるが、資質的には平均よりやや上、というレベル。ノヴァルナに読み勝つには、力量が少々足りなかった。一隻の戦艦をやり過ごし、『ヒテン』への襲撃コースに入ろうとした、BSI『サギリ』のパイロットが驚きの声を上げる。
「なっ! 軽巡が陰から!!」
次の瞬間、ウォーダ軍の戦艦の向こう側に潜んでいた、二隻の軽巡航艦が急速前進し、機動兵器迎撃用の小口径ビーム砲を連射した。
「!!!!」
驚愕の表情のまま、機体の爆発に巻き込まれるパイロット。しかも戦艦の陰から出現したのは、この二隻だけでは無かった。第1艦隊所属の三個宙雷戦隊の、軽巡と駆逐艦三十九隻すべてが、タイミングを合わせて戦艦の陰から飛び出し、オルグターツ艦隊BSI部隊の前方へ進出。戦艦の間をすり抜けようとした彼等の前へ、壁のように立ち塞がって、ビームと誘導弾を浴びせ始める。
たちまち火ダルマになる機体が続出する、オルグターツのBSI部隊。艦載機発艦の相対距離に達しても、オルグターツ艦隊がBSI部隊を出さないまま、空母部隊を連れて来た動きをノヴァルナは見逃さず、宙雷戦隊を戦艦部隊の陰に移動させて、近距離での速攻に対する迎撃態勢を取らせたのであった。セオリーを崩すのが得意なノヴァルナであるから、相手のセオリーを崩した戦術を見抜くのも得意、という事であろうか。
しかもオルグターツ艦隊の誤算は、それだけでは済まない。ノヴァルナ艦隊の戦艦部隊の間でBSI部隊が迎撃を受け、混戦状態となった事により、自分達の戦艦部隊の主砲射撃に、味方艦載機が巻き込まれる恐れが発生。全力の艦隊戦が妨げられる結果を招いてしまったのだ。
これに対しノヴァルナ艦隊は、まだBSI部隊を出していなかった。したがって気にせず、戦艦と重巡で全力射撃を行う。傲然と放たれる『ヒテン』の主砲ビームの束に、羽虫のように逃げ惑うオルグターツ艦隊のASGUL達。その何機かが、直線的な動きを行ってしまい、『ヒテン』の護衛に付いた軽巡と駆逐艦に、狙い撃ちされた。
損害を増大させるオルグターツ艦隊の光景に、『ヒテン』の艦橋ではノヴァルナの傍らにいるジークザルト・トルティア=ガモフが、素直に賛辞を贈る。
「こちらのBSI部隊の出撃を、控えられたのは流石ですね」
「オルグターツの奴は…いや、この手を考えたのは、奴に付いてるナーガイかも知れねーが、自分の役目を弁えてねーから、こうなるのさ」
「と言いますと?」
問い掛けるジークザルトにノヴァルナは、不敵な笑みを大きくして言い返す。
「このヤロ、すっとぼけやがって。わかってんだろ、言ってみ?」
こういうところがあるジークザルトを知るノヴァルナは、逆にこの頭脳明晰な少年に解説を求めた。「失礼しました」と素直に頭を下げたジークザルトは、淡々と言葉を紡ぎだす。
「オルグターツ殿に与えられた役目は、我々の攻勢に圧された三人衆主力部隊が、態勢を立て直すまでの時間稼ぎです。であるならば、距離を置いた正攻法で我々を引き付けるのが常道でしょう」
ジークザルトが言葉を区切ると、ノヴァルナはここまでの言に相槌を打つ。さらに続けるジークザルト。
「しかしながら、オルグターツ殿ご自身からの挑戦的な通信があったように、彼等はノヴァルナ様を討つ事を行動目的にしていました。ただ、戦力的にこの第1艦隊と正面切って撃ち合うのは分が悪い。となると何らかの奇策を用いて来るはず…ノヴァルナ様は、そうお読みになられたのだと思います」
これを聞いたノヴァルナは、ジークザルトを指さして「ピンポーン」と、言葉で正解チャイム音を口にする。そのうえでさらに、その裏の先まで言い放った。
「だがまぁ、三人衆の奴等がオルグターツを、捨て駒にするつもりで、扇動した可能性も高けぇがな」
▶#08につづく
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