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第18話:閉じられし罠
#08
しおりを挟むノヴァルナとジークザルトが語らっている間にも、ウォーダ軍第1艦隊は砲撃と誘導弾によって、オルグターツ艦隊を圧倒してゆく。思惑が外れたトモス・ハート=ナーガイは、もはやこれまでとオルグターツに進言した。
「オルグターツ様、申し訳ございません。敵に手の内を読まれた、わたくしの失態にございます。ここは撤収が妥当に思います」
旗艦『ダーガット・ロア』の艦橋で、司令官席に座るオルグターツを前に、頭を深く下げるトモス。オルグターツは肘掛けを拳で殴りつけ、憤怒の表情をする。
しかしそれは一瞬のことであった。惑星バサラナルムのイナヴァーザン城に居た頃なら、そのままトモスを殴打していただろうが、城を追放され放浪の身となった自分に、ただ一人ついて来てくれた忠臣に対する、分別ぐらいはつくようになっている。それにトモスが撤退を決めたなら、それを認める約束もした。
「わかったァ、ここは撤退するゥ。だァが!…立て直して、再戦を狙うぞォ!」
とその時である。ノヴァルナの『ヒテン』からの主砲ビームが、『ダーガット・ロア』のエネルギーシールドを貫通し、艦載機格納庫を直撃した。軽空母並みに三十機の艦載機を搭載できる、艦の後半部が引き裂かれ、爆発に舷側が大きくめくれ上がる。
突然の大きな衝撃に重力制御が間に合わず、床に投げ出されるオルグターツ達。艦載機は全て出撃していたので格納庫は空だったが、艦そのものの戦闘力が、大幅に低下したのは否めない。旗艦がこのような状態になった以上、艦隊の立て直しは難しく、完全撤退しか手は残されていないだろう。
「オルグターツ様、大丈夫でございますか!!」
いち早く立ち上がったトモスや他の参謀達が、慌てて駆け寄ってくる中、オルグターツは這いつくばったまま、床を力任せに殴り、絞り出すような声に無念さを滲ませて言い捨てた。
「くそォ、ノヴァルナぁ…次こそ必ず、討ち取ってやっからなァ!!」
そしてオルグターツ艦隊を追い払ったノヴァルナの第1艦隊は、“ミョルジ三人衆”主力艦隊と交戦中の前衛部隊のもとへ急行した。オルグターツ艦隊が大した足止めにもならなかった事もあり、態勢を立て直そうとしていた三人衆軍は、すぐにまた不利な状況に追いやられる。
戦況を見たノヴァルナは、今度は第1艦隊にもBSI部隊の発艦を命じ、それに自分の出撃も付け加えた。
「『ホロウシュ』に告げろ。俺も『センクウ・カイ』で出る」
今回のノヴァルナの『センクウ・カイFX』と『ホロウシュ』の出撃も、簡易型超空間狙撃砲『ディメンション・ストライカー』の、実戦での連続発射運用試験である。また当然ながらノヴァルナ自身震が出撃する事で、全艦隊の将兵を鼓舞する意味合いもあった。
「こちらウイザード01。いま発艦した。『ホロウシュ』各機は集まれ」
『ヒテン』を発進した『センクウ・カイFX』から呼び掛けるノヴァルナ。これに反応して『ホロウシュ』達の乗る『シデン・カイXS』が参集する。ランと三人の女性『ホロウシュ』が、ノアと行動を共にしているため、ここでの数は十六機であった。程なくして筆頭を務めるナガート=ヤーグマーから、ノヴァルナのもとへ通信が入る。
「ウイザード中隊、全機異常なしであります」
これに「オーケー」と応じたノヴァルナは、第1艦隊に所属する一隻の宇宙空母に連絡した。
「ウイザード01より『アルヴェーデン』。試験中隊を発進させろ」
命令を受けて宇宙空母『アルヴェーデン』から発艦したのは、ASGUL二十四機と二機の親衛隊仕様『シデン・カイXS』。ASGULはウォーダ軍の主力機である『ルーン・ゴート』を、この試験用に改修した先行量産型『ルーン・ガルロ』という機体だ。さらに十六機の貨物シャトルが、専用の銃弾とエネルギーパックを搭載し、これに続く。
次々に攻撃艇形態で発艦した『ルーン・ガルロ』は、機体上面に簡易型D-ストライカーを装備していた。これは前回の『ホロウシュ』での連続射撃試験が成功した際、親衛隊仕様や量産型のBSIユニットではなくとも、簡易型のASGULで運用が可能なのではないかと考えたノヴァルナの発想を、実戦で試すためのものとなっている。
ノヴァルナはこの運用試験を何回か繰り返し、結果が良好であれば、『ルーン・ガルロ』によるD-ストライカー三段射撃部隊を、本格的に編制する構想だった。
「こちら“カクタス01”。カクタス試験中隊全機、発艦完了致しました」
“カクタス”のコールサインを与えられた試験中隊の、隊長機を務める親衛隊仕様『シデン・カイXS』が報告して来る。
「よし。試射区画を確保する。“カクタス中隊”は『ホロウシュ』の後に続け」
ノヴァルナはそう言って機体を加速させた。ノヴァルナの分隊にはジョルジュ・ヘルザー=フォークゼムと、ランの代わりにカール=モ・リーラが入っている。
そしてこのノヴァルナの出撃を待っていた者がいる。モルンゴール傭兵集団“サイガン衆”の潜宙空母艦隊だ。
「どうやらノヴァルナがBSHOで出たようだぞ」
発令所からの連絡に、BSHO『オロチ』のコクピットに座るマゴディは、口の端を歪めて「分かった。出撃する」と告げた………
▶#09につづく
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