477 / 526
第18話:閉じられし罠
#10
しおりを挟む「ウイザード21、電子戦フィールド展開。みんな気を付けろ、相手は全部モルンゴールのBSHOだ!!」
さしもの歴戦のノヴァルナも、声に緊張感の響きがある。おそらくウイザード中隊としては、これまでで最強の敵だ。ノヴァルナの直掩に付いているジョルジュ・ヘルザー=フォークゼムが、注意を促す。
「敵機、来ます!!」
「全機散開! 相互連携と援護で対応しろ!」
ショウ=イクマの『シデン・カイXS-ES』が、ウイザード中隊各機のECMとリンクした、戦闘エリア全域にわたる電子戦フィールドを展開させる中、ノヴァルナは『ホロウシュ』に個々での対処を命じ、自分も『センクウ・カイFX』の手に超電磁ライフルを握らせると、即座に安全装置を外す。
「みんな、死ぬんじゃねぇぞ!!」
そう呼び掛けて次の刹那、ノヴァルナは操縦桿を倒し、『センクウ・カイFX』を75度のダイブに入れた。これに遅れず続くフォークゼムと、モ・リーラの『シデン・カイXS』。その三機の背後を、複数の銃弾が通過する。距離を詰めて来た敵の四機のBSHOが銃撃を行ったのだ。一機は一本角の鬼のような『オロチ』、あとの三機は四つ目の肉食獣のような『マガツ』だ。
機体を翻して、反撃のライフルを一連射するノヴァルナ達。だがこちらの銃撃も当たらない。
「はん! 挨拶代わりってもんさ!」
冗談とも本気の負け惜しみとも取れる言を放ったノヴァルナは、機体に捻り込みをかけて急角度でターン。敵の四機のBSHOに背後から距離を詰め、再び銃撃を行った。すると四機のBSHOは、思い思いの針路に散開して回避。ノヴァルナの機体に反撃の銃弾を集中させて来る。
しかしながら、敵の銃弾に当たらないのが、ノヴァルナの操縦テクニックの、真骨頂と言えるものである。様々な角度から一斉に飛来した敵の銃弾を、絶妙なタイミングで行った機体旋回によって紙一重にすべて躱した。するとその間に、ノヴァルナ直掩のフォークゼムとモ・リーラが、『シデン・カイXS』にポジトロンパイクを装備させて、怯む事なく仕掛けていく。これに対して二機の『マガツ』が、ポジトロンパイクを手に素早く前進、刃を打ち合い始める。
残る二機は僚機に構わず急加速。ノヴァルナの『センクウ・カイFX』との距離を、目にもとまらぬ速さで詰めて来た。この二機の片方―――『オロチ』に搭乗しているのが、“サイガンのマゴディ”だ。ノヴァルナに心理的動揺を誘うため、マゴディは全周波数帯通信で、『センクウ・カイFX』に通信を入れる。
「この日が来るのを待っていたぞ、我が仇敵ノヴァルナ!」
一直線に突っ込んで来る『オロチ』からの通信に、『センクウ・カイFX』を高速旋回させながら、ノヴァルナは問い質す。
「仇敵? 誰だてめぇ!?」
『オロチ』と、それに後続する『マガツ』からの銃撃を悉く回避し、構えたライフルのトリガーを引きながら、放言するノヴァルナ。
「俺を仇と思ってる奴ぁ、ゴマンといるからなぁ。名乗ってもらっても、覚えちゃねぇかも知れねーがな!」
ノヴァルナからの反撃に、『マガツ』が大きく回避行動を取る一方、『オロチ』は僅かに機体を左右へ揺らしただけで回避。ポジトロンパイクを手に取る。間合いを詰めて来た『マガツ』は、ポジトロンパイクを一閃。『センクウ・カイFX』も咄嗟にポジトロンパイクを右手一本で振るい、これを打ち防ぐ。そこで名乗る『マガツ』のパイロット。
「“サイガンのマゴディ”、この名に聞き覚えがあるだろう!!」
「なに、マゴディだと!?」
自分を仇だと思う相手は星の数ほど居て、一々覚えていないのも事実なノヴァルナだったが、“サイガンのマゴディ”の名は忘れる事は無かった。十年前の惑星ラゴンの衛星軌道上で、鉱物精製プラント衛星をキオ・スー城へ落下させようと企んで、ノヴァルナに倒された、傭兵部隊の隊長をしていた男の名だ(第1章第1話:死のうは一定)。
とその時、ノヴァルナの思考が生んだ一瞬の隙を突いて、『オロチ』とペアを組んでいた『マガツ』が、横合いから斬りかかって来た。マゴディの目論見通りだ。
だがBSIパイロットとして機動戦闘中のノヴァルナは、反射神経が常人以上に研ぎ澄まされている。
『オロチ』と得物を切り結んだまま機体を捻り込ませ、『マガツ』からの斬撃を紙一重に躱し、『センクウ・カイFX』のバックパックの僅か一メートル後ろを、『マガツ』のパイクの切っ先が空振りすると、ノヴァルナは超電磁ライフルの銃口を、その後頭部に押し当てるようにしてトリガーを引いた。
ところが『マガツ』は、瞬時に機体を横滑り。『センクウ・カイFX』の至近距離からの銃弾を、回避と同時に急加速、即座に離脱する。その直後、再び斬り込んで来るマゴディの『オロチ』。
「いい腕だが、思った程じゃないな。ノヴァルナ・ダン=ウォーダ!」
「そういう煽り文句は、聞き飽きてんだよ!!」
打ち合わされるパイクの刃が、青白いプラズマを放つ。二度三度、四度五度と、火花が散り、二人の機体を虚空の闇に照らし出した。
▶#11につづく
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる