氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~

放浪人

文字の大きさ
21 / 25

第二十一話:託された手紙と逆転の糸口

しおりを挟む
アレクシス様からの手紙には、彼の覚悟と、わたくしへの深い信頼が綴られていた。

『リリアへ

この手紙をお前が読んでいるということは、俺の身に何かが起きたということだろう。
オルコット侯爵の陰謀は、俺の予想以上に根深い。おそらく、俺は近いうちに全ての責任を負わされ、騎士の地位を剥奪されることになるだろう。

だが、決して悲観しないでほしい。
俺は、この状況をただ甘んじて受け入れるつもりはない。

この手紙と共に、あるものを託す。
それは、オルコット侯爵が長年にわたり行ってきた不正――軍事物資の横流しや、敵国との密通に関する証拠だ。
俺は密かに調査を進めていたが、全ての証拠を掴む前に、奴らに先手を打たれてしまった。

リリア、お前にしか頼めない。
この証拠を、信頼できる人物――国王陛下の側近である、グレンフォード公爵に届けてほしい。
公爵は、オルコット侯爵の専横を快く思っていないはずだ。彼ならば、きっと正義を貫いてくれるだろう。

危険な役目であることは分かっている。
だが、お前の勇気と知恵を、俺は信じている。

必ず、生きて戻る。そして、お前と共に未来を歩む。
その日まで、どうか強く生きてくれ。

愛している。

アレクシス』

手紙を読み終えたわたくしの頬を、熱い涙が伝った。
アレクシス様は、こんな状況にあっても、わたくしのことを信じ、未来を託してくれていたのだ。

――わたくしは、もう迷わない。
彼のために、わたくしにできることを、全力でやらなければ。

手紙に同封されていたのは、羊皮紙の束だった。
そこには、オルコット侯爵の不正を示す取引記録や、密書と思しき手紙の写しなどが、詳細に記されていた。

(これを、グレンフォード公爵様に……!)

しかし、どうやって?
わたくしのような者が、簡単に公爵様にお会いできるはずがない。

途方に暮れかけたその時、ふと、ある人物の顔が思い浮かんだ。
――セドリック・アシュフォード様。
王立図書館でわたくしたちを助けてくれた、あの穏やかで親切な貴族。
彼ならば、もしかしたら……。

わたくしは、アレクシス様から託された証拠を固く胸に抱きしめ、セドリック様の屋敷へと向かった。
幸い、セドリック様は屋敷におり、わたくしの突然の訪問にも快く応じてくれた。

「リリア嬢、どうかなされたのか? 顔色が優れないようだが……」

心配そうに尋ねるセドリック様に、わたくしは震える声で事情を説明し、アレクシス様から託された証拠を見せた。

セドリック様は、驚いた表情で書類に目を通していたが、やがてその顔は険しいものへと変わっていった。

「……これは、許しがたいことだ。オルコット侯爵が、これほどの不正を働いていたとは……」

彼の声には、静かな怒りが込められていた。

「セドリック様、お願いがございます! この証拠を、グレンフォード公爵様にお渡しいただけないでしょうか? わたくしでは、公爵様にお目通りすることも叶いません……」

わたくしが必死に懇願すると、セドリック様は力強く頷いた。

「分かった、リリア嬢。この証拠は、私が責任を持ってグレンフォード公爵にお届けしよう。アレクシス殿の無実を証明するために、私も力を尽くす」
「あ……ありがとうございます……!」

セドリック様の言葉に、わたくしは心からの感謝を捧げた。
暗闇の中に、一条の光が差し込んだような気がした。

「ただし、リリア嬢。君も十分に気をつけるんだ。オルコット侯爵は、追い詰められれば何をするか分からない」
「はい……肝に銘じますわ」

セドリック様に証拠を託し、わたくしは彼の屋敷を後にした。
まだ不安は消えないけれど、希望の光は見えている。

アレクシス様、どうかご無事でいてくださいまし。
わたくしは、必ずあなた様を助け出してみせますから――。

逆転の糸口は掴んだ。
あとは、正義が成されることを信じるだけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした

あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。 しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。 エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。 薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。 ――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

【完結】元強面騎士団長様は可愛いものがお好き〜虐げられた元聖女は、お腹と心が満たされて幸せになる〜

水都 ミナト
恋愛
女神の祝福を受けた聖女が尊ばれるサミュリア王国で、癒しの力を失った『元』聖女のミラベル。 『現』聖女である実妹のトロメアをはじめとして、家族から冷遇されて生きてきた。 すっかり痩せ細り、空腹が常となったミラベルは、ある日とうとう国外追放されてしまう。 隣国で力尽き果て倒れた時、助けてくれたのは――フリルとハートがたくさんついたラブリーピンクなエプロンをつけた筋骨隆々の男性!? そんな元強面騎士団長のアインスロッドは、魔物の呪い蝕まれ余命一年だという。残りの人生を大好きな可愛いものと甘いものに捧げるのだと言うアインスロッドに救われたミラベルは、彼の夢の手伝いをすることとなる。 認めとくれる人、温かい居場所を見つけたミラベルは、お腹も心も幸せに満ちていく。 そんなミラベルが飾り付けをしたお菓子を食べた常連客たちが、こぞってとあることを口にするようになる。 「『アインスロッド洋菓子店』のお菓子を食べるようになってから、すこぶる体調がいい」と。 一方その頃、ミラベルを追いやった実妹のトロメアからは、女神の力が失われつつあった。 ◇全15話、5万字弱のお話です ◇他サイトにも掲載予定です

処理中です...