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第二話:黒き狼との契約、あるいは泥沼からの再起
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「……は?」
私の口から漏れたのは、令嬢らしからぬ間の抜けた声だった。 吹き荒れる吹雪の音さえ、一瞬遠のいた気がする。
目の前には、見上げるような巨躯の男。 黒塗りの鎧に身を包み、返り血を浴びたその姿は、絵本に出てくる『魔王』そのものだ。 けれど、私に向けられた黄金の瞳は、不思議なほど真っ直ぐで、熱を帯びていた。
「俺の嫁になれ」
ヴォルフガングと名乗ったその男は、私の返事を待たずに、ニカッと白い歯を見せて笑った。 凶悪な笑顔だ。子供なら泣き出すレベルだ。 けれど、不思議と嫌悪感はなかった。先ほどまで私に向けられていた、盗賊たちのねっとりとした視線とは違う。 この男の目は、まるで珍しい獲物か、あるいは『面白いおもちゃ』を見つけた子供のように輝いている。
私は、彼に包み込まれたままの自分の手を、そっと引き抜いた。 冷え切っていた指先に、彼の体温が残っている。
「……冗談はおやめください」
私は努めて冷静に、声を震わせないように意識して答えた。
「私は魔力のない、家を追放された身です。持参金もありませんし、後ろ盾もありません。あなたのような高名な傭兵団の長が、妻に迎えるメリットなど何一つありませんわ」
私の言葉に、ヴォルフガングは面白そうに眉を上げた。
「メリット? そんなもん、俺が気に入ったかどうかが全てだ。それに、お前はさっき、俺たちの戦い方を見て説教を垂れただろう?」
「……説教ではありません。戦術的な指摘です」
「それがいいんだよ。俺の部下たちは、腕っぷしは強いが頭の方はからっきしだ。『右へ行け』と言えば右へ突っ込むが、なぜ右なのかを考える奴がいねぇ。お前みたいな、戦場の全体図が見えている奴が必要なんだ」
彼は私の肩に、ドンと重たい手を置いた。 鎧越しではない、生身の手の重み。
「それに、度胸がある。武器も持たずに盗賊に立ち向かい、俺を前にしても引かねぇ。そんな女、そうそういねぇぞ」
褒められているのだろうか。 私は小さく溜息をついた。
確かに、今の私には行き場がない。 このまま雪原に放り出されれば、凍死するか、また別の盗賊に襲われるのがオチだ。 彼の手を取るのは、生存戦略として最も合理的だと言える。
けれど、『嫁』というのは承服しかねる。 私はフェルディナンドとの一件で、男という生き物に心底幻滅していた。 愛だの恋だの、そんな不確かな感情で人生を左右されるのはもう御免だ。 私が求めているのは、対等な『契約』と、確かな『報酬』のみ。
「ヴォルフガング様。提案があります」
私は彼を見上げ、毅然と言い放った。
「あなたの傭兵団に、私を雇ってください。ただし、嫁としてではありません。『軍師』兼『事務官』としてです」
周囲の傭兵たちが、ざわめいた。 女が、しかも貴族の令嬢が、自分たちの指揮官になると言ったのだ。彼らにとっては冗談にしか聞こえないだろう。 だが、ヴォルフガングだけは、真剣な眼差しで私を見ていた。
「軍師、か。……できるのか?」
「できます。私は幼い頃から、父の書斎にある兵法書をすべて暗記しています。領地の警備隊の配置や、兵站の管理も手伝ってきました。先ほどのあなたの部下の動きを見て、連携の甘さと装備の欠陥を見抜いたのは、まぐれではありません」
私は雪の上に転がる盗賊の死体を指さした。
「彼らは烏合の衆でしたが、もし統率された正規軍相手なら、あなたの部下にも被害が出ていたでしょう。特に、右翼の展開の遅れは致命的です。雪原での機動力を軽視しすぎです」
ヴォルフガングは顎を撫でながら、私の言葉を吟味しているようだ。
「それに、事務官としてもお役に立てます。傭兵団という組織を運営するには、膨大な金銭管理が必要なはずです。武器の調達、食料の補給、報酬の配分……それらを全て、あなたが一人でやっているのですか?」
「……いや、まぁ、なんとなくな」
ヴォルフガングが視線を逸らした。 図星だ。 豪快な武人に見える彼だが、おそらく細かい計算や事務作業は苦手なのだろう。 鎧の修繕費や食費で、どんぶり勘定をしている姿が目に浮かぶ。
「契約しましょう、ヴォルフガング様。私があなたの『頭脳』となり、『金庫番』となります。その代わり、私に衣食住の保証と、正当な報酬をください。そして――」
私は一瞬言葉を切り、彼を睨みつけた。
「私の体に、指一本触れないこと。これが条件です」
あたりに沈黙が落ちた。 雪の降る音だけが聞こえる。 部下たちが、恐る恐る団長の顔色を窺っている。天下の『剣聖』に対して、ここまで不敬な条件を突きつけた人間など、今までいなかったに違いない。
ヴォルフガングは、ぽかんと口を開け、それから――。
「ぶっ……くくくっ! アーッハッハッハッハ!!」
腹を抱えて、豪快に笑い出した。 空気が震えるほどの大声だ。
「いいぞ! 最高だ! 気に入った! 指一本触れるな、か。俺も随分と舐められたもんだが、そこまで言うなら実力で認めさせてやるよ」
彼はニヤリと笑い、私の前に右手を差し出した。
「交渉成立だ、エリス。今日からお前は『鉄の牙』の軍師だ。俺たちの命とお金、全部お前に預ける」
私はため息をつきながら、彼の手を握り返した。 ゴツゴツとした、温かい手。 これが、私と『剣聖』との、最初の契約だった。
◇
契約が成立すると、ヴォルフガングは手際よく指示を出し始めた。 部下たちに盗賊の死体から金目のものを剥ぎ取らせ(それも重要な収入源なのだそうだ)、私の荷物を馬に積ませる。 私の乗ってきた馬車は車軸が折れかけていたため、放棄することになった。
「俺の後ろに乗れ」
ヴォルフガングはそう言って、私を軽々と抱え上げ、自身の愛馬である巨大な黒馬の背に乗せた。 高い。 普段乗る馬車からの視点とはまるで違う。 彼の背中は広く、鋼鉄の鎧越しでもその逞しさが伝わってくる。
「舌を噛むなよ。飛ばすぞ」
彼が手綱を操ると、黒馬は雪を蹴立てて走り出した。 風が顔を叩く。 寒いけれど、彼の背中が風除けになってくれているおかげで、凍えることはなかった。
移動中、私は彼の背中にしがみつきながら、いくつか質問をした。
「ヴォルフガング様、あなたの傭兵団は、今はどこを拠点に?」 「様付けはやめろ。ヴォルフでいい。拠点はここから北へ半日ほど行った、古い砦跡だ。国境警備の放棄された砦を、国から安く借り上げている」 「人数は?」 「戦闘員が約三百。非戦闘員を含めれば四百ってところか」
四百人。 思ったより大所帯だ。 それだけの人数を養うには、相当な維持費がかかるはずだ。
「主な収入源は?」 「魔物討伐、商隊の護衛、たまに国からの戦争の助っ人だな。最近は魔物の出現が増えてるから、仕事には困らねぇが……」
ヴォルフガングは言葉を濁した。
「……金が貯まらないんだよなぁ。なんでだか知らねぇが、稼いでも稼いでも、右から左へ消えていく」
私は心の中で「やっぱり」と呟いた。 彼のような豪快なタイプは、入ってくる金は多いが、出る金も多い。 武器の手入れ、怪我人の治療費、食費、酒代。 おそらく、何も考えずに使っているのだろう。
「帳簿はつけていますか?」 「あ? 帳簿? なんだそれは。金の出入りなんて、金庫の中身を見りゃわかるだろうが」
――頭が痛い。 この男、まさか『どんぶり勘定』以前のレベルなのか? 金庫にある金が全財産で、無くなったら稼げばいいと思っているタイプだ。 四百人の命を預かるリーダーとして、あまりに無責任すぎる。
「到着したら、すぐに全ての帳票類を見せていただきます。それと、倉庫の棚卸しも行います」 「お、おう……手厳しいな、新入り軍師様は」
ヴォルフガングは苦笑したが、私は笑えなかった。 これは私の生存に関わる問題だ。 この傭兵団が破綻すれば、私も路頭に迷うことになるのだから。
やがて、吹雪が止み、雲の切れ間から青白い月が顔を覗かせた頃。 前方の小高い丘の上に、石造りの古びた砦が見えてきた。 崩れかけた城壁。 補修された跡が痛々しい塔。 お世辞にも立派とは言えないが、質実剛健な佇まいは、いかにも『鉄の牙』の拠点らしい。
「着いたぞ。あれが俺たちの城だ」
ヴォルフガングの声には、誇らしげな響きがあった。 門番が私たちに気づき、慌てて重そうな木の扉を開ける。
「お帰りなさい、団長! ……って、その前に乗っけてる女の人は?」 「新入りだ。今日からウチの軍師様になる。丁重に扱えよ」
門番たちが驚愕の表情で私を見る中、私たちは砦の中へと足を踏み入れた。
――そして、そこで私を待っていたのは、想像を絶する『地獄』だった。
◇
砦の中に入った瞬間、鼻を突いたのは、強烈な『異臭』だった。 汗と、油と、酒と、腐った何かが混じり合ったような、表現し難い悪臭。 私は思わず袖で口元を覆った。
「……なんですか、このにおいは」 「ん? 男所帯なんてこんなもんだろ」
ヴォルフガングは気にした様子もなく、馬を降りる。 私も彼の手を借りて地面に降り立ったが、足元の感触に違和感を覚えた。 雪ではない。 何か、ぬるりとした泥のようなものが、地面を覆っている。
よく見ると、それは泥ではなかった。 食べ残し、排泄物、汚水、ゴミ……それらが雪解け水と混ざり合い、ヘドロとなって中庭を埋め尽くしていたのだ。
「ひっ……!」
私は悲鳴を上げそうになるのを、必死で堪えた。 不衛生だ。あまりにも不衛生すぎる。 王都の下町でさえ、もう少しマシだ。 こんな環境で生活していたら、疫病が発生するのは時間の問題だ。
「おい、野郎ども! 帰ったぞ! 宴会だ!」
ヴォルフガングが大声を上げると、砦のあちこちから薄汚い格好の傭兵たちがわらわらと出てきた。 彼らは手に手に酒瓶や骨つき肉を持ち、すでに出来上がっている者もいる。
「団長、お帰りなさい!」 「今日は大漁でしたか!?」 「おっ、いい女連れてるじゃねぇか! ついに団長も嫁をもらったか!」
彼らは私を見ると、下卑た視線で舐め回すように見てきた。 口笛を吹く者、卑猥な言葉を投げかける者。 ヴォルフガングは彼らを制することなく、ガハハと笑っている。
「おう、嫁……じゃねぇ、軍師だ。エリスだ。仲良くしてやれよ」
軍師、という紹介に、彼らは一瞬キョトンとし、すぐに爆笑した。
「軍師ぃ? この嬢ちゃんがか?」 「ベッドの上での作戦指揮なら歓迎だぜぇ!」 「おいおい、団長も冗談がキツイぜ。こんな細腕の女に何ができるってんだ」
嘲笑と侮蔑の嵐。 予想はしていた。力こそ正義の傭兵団において、魔力もなく、剣も握れない女など、足手まとい以外の何物でもない。 だが、今の私にとって、彼らの嘲笑などどうでもよかった。 それよりも許せないのは――この環境だ。
「……ヴォルフガング様」
私は低い声で彼を呼んだ。
「あ?」
「これは、どういうことですか?」
私は中庭の隅に山積みになったゴミの山を指さした。 そこには、食い散らかした骨や腐った野菜だけでなく、排泄物の入った桶まで無造作に放置されている。ハエがたかり、ネズミが走り回っている。
「どういうことって……ゴミ捨て場だが?」 「なぜ居住区の真ん中にゴミ捨て場があるのですか!? しかも、あれは排泄物ですよね? なぜ処理をしていないのですか!?」 「いや、冬だし凍ってるから大丈夫だろ……」 「大丈夫なわけありません! 春になって溶けたらどうするつもりですか!? 地下水に染み込んで、井戸水が汚染されますよ! コレラや赤痢が発生したら、部隊ごと全滅です!」
私の剣幕に、ヴォルフガングは少し怯んだように後ずさった。 周囲の傭兵たちも、突然キレた私に呆気にとられている。
「そ、それに、男所帯で手が回らねぇんだよ。掃除なんて女の仕事だろ?」
誰かがボソッと言ったその言葉が、私の導火線に火をつけた。
「女の仕事? 笑わせないでください。これは『軍隊』としての基本です!」
私は一歩前に踏み出した。雪と汚泥が跳ねるのも構わずに。
「いいですか、よくお聞きなさい! 戦闘における死因の第一位を知っていますか? 敵の剣ではありません。病気です! 不衛生な環境による感染症、腐った食事による食中毒、不潔な傷口からの破傷風! あなたたちは、敵と戦う前に、自分たちの出したゴミと排泄物に殺されるつもりですか!?」
私の声は、砦の中庭によく響いた。 傭兵たちはポカンと口を開け、誰一人として言い返せない。 ヴォルフガングでさえ、目を白黒させている。
「……そ、そこまで言うこたぁねぇだろ……」
「言います! 私が軍師として契約した以上、あなたたちの命は私の管理下にあります。無駄死には許しません!」
私は彼らを睨みつけ、宣言した。
「今からこの砦の『大掃除』を始めます! 全員、武器を置いて掃除用具を持ちなさい! ゴミの分別、汚物の埋め立て、床磨き、煮沸消毒! 今日中に終わらせなければ、晩ご飯は抜きです!」
「はぁ!?」
全員の声がハモった。 最強の傭兵団『鉄の牙』が、たった一人の令嬢に掃除を命じられる。 前代未聞の事態だった。
「ふざけんな! 俺たちは戦士だぞ! 掃除夫じゃねぇ!」 「そうだそうだ! 女の指図なんか受けられるか!」
反発の声が上がる。 当然だ。彼らはプライドの高い荒くれ者たちだ。 一触即発の空気。 誰かが剣に手をかけた、その時だった。
「……やれ」
低く、地を這うような声が響いた。 ヴォルフガングだ。 彼は腕を組み、面白そうに私を見ていたかと思うと、部下たちに向かって凄んだ。
「聞こえなかったか? 軍師様の命令だ。つべこべ言わずに掃除しろ。……俺の女に逆らう奴は、俺が叩き斬るぞ」
黄金の瞳が、ギラリと光る。 その本気の殺気に、傭兵たちは「ヒッ」と息を呑んだ。 団長の絶対命令。これには逆らえない。
「ち、ちくしょー! やりゃいいんだろ、やりゃ!」 「おい箒持ってこい!」 「バケツの水汲んでくるぞ!」
彼らは渋々ながらも動き出した。 その背中を見送りながら、私はふうっと息を吐いた。 どうやら、第一関門は突破できたようだ。
「……すげぇな、お前」
ヴォルフガングが感心したように呟いた。
「あいつらを口先だけで動かすとはな。やっぱりお前を拾って正解だったわ」 「まだ終わっていませんよ、団長」
私は彼に向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「次は『帳簿』です。あなたの部屋にある金庫の中身と、これまでの支出記録を全て出してください。……さっきの様子だと、相当ひどいことになっていそうですからね」
ヴォルフガングの顔が引きつった。 剣を向けられても笑っていた男が、今は借金取りに追われる小市民のような顔をしている。
「あー……それはまた後で……」 「今すぐです」
私は逃さなかった。 こうして、私の傭兵団での生活は幕を開けた。 剣と魔法の世界で、私が武器にするのは『掃除道具』と『計算機』。 華やかなドレスも、煌びやかな舞踏会もない。 あるのは泥と汗と、男たちの怒号だけ。
けれど、不思議と嫌ではなかった。 飾られただけの虚構の世界よりも、この泥臭い現実の方が、私には合っている気がしたからだ。
――見ていなさい、フェルディナンド。 あなたが捨てた私が、この野良犬たちをどう変えていくか。 そして、いつか必ず、あなたたちを見返してやる。
私は汚れたスカートの裾を払い、前を見据えた。 ここからが、私の本当の戦いだ。
◇
その日の夜。 大掃除を終え、疲れ果てた傭兵たちの前に出されたのは、いつもの硬くて酸っぱい黒パンと、具のない薄いスープ……ではなかった。
大鍋から立ち上る、食欲をそそる濃厚な香り。 ニンニクと香草、そして肉の脂が溶け込んだ、温かいシチューのようなスープ。 そして、カチカチだった黒パンは、スープを吸って柔らかく煮込まれ、美味なる『パネード(パン粥)』へと変貌を遂げていた。
「な、なんだこれ……うめぇ!」 「黒パンが……柔らかい!? しかも味が染みてて最高だ!」 「おかわり! おかわりくれぇ!」
食堂に歓声が響く。 涙を流してかき込む者までいる。 私がやったことは単純だ。 硬くてそのままでは食べられない安い黒パンを、野菜屑や肉の端切れと一緒に長時間煮込み、塩とハーブで味を整えただけ。 貴族の家では『貧民の食事』と見向きもされない料理だが、素材の味を活かせば、これほどのご馳走になる。
何より、温かい食事は士気を高める。 冷え切った体と心を溶かす、一番の薬だ。
「……悪くねぇな」
ヴォルフガングもまた、大皿に盛られたパネードを豪快に平らげ、満足げに腹をさすっていた。
「エリス、お前の勝ちだ。掃除もメシも、文句のつけようがねぇ。……これからは、お前の言うことを聞くよ」
彼はニカッと笑い、私にジョッキを掲げた。 周囲の傭兵たちも、次々と私に杯を向ける。
「軍師様に乾杯!」 「うめぇメシをありがとうな!」 「次は何を作ってくれるんだ!?」
そこにはもう、侮蔑の色はなかった。 あるのは、胃袋を掴まれた男たちの、単純明快な好意と信頼だけ。
私は少しだけ照れくさくなって、視線を逸らした。 悪くない。 この単純で、乱暴で、けれど温かい場所は、意外と悪くないかもしれない。
窓の外では、まだ雪が降っている。 けれど、砦の中は熱気と笑い声に満ちていた。
私の新しい人生が、ここから始まる。 まずは、このマイナスからのスタートを、どうプラスに変えていくか。 腕が鳴るというものだ。
――だが、私はまだ知らなかった。 この砦の財政状況が、私の予想を遥かに超える『壊滅的』な状態であることを。 翌日、ヴォルフガングから渡された金庫の鍵を開けた私は、その中身を見て絶句することになる。
私の口から漏れたのは、令嬢らしからぬ間の抜けた声だった。 吹き荒れる吹雪の音さえ、一瞬遠のいた気がする。
目の前には、見上げるような巨躯の男。 黒塗りの鎧に身を包み、返り血を浴びたその姿は、絵本に出てくる『魔王』そのものだ。 けれど、私に向けられた黄金の瞳は、不思議なほど真っ直ぐで、熱を帯びていた。
「俺の嫁になれ」
ヴォルフガングと名乗ったその男は、私の返事を待たずに、ニカッと白い歯を見せて笑った。 凶悪な笑顔だ。子供なら泣き出すレベルだ。 けれど、不思議と嫌悪感はなかった。先ほどまで私に向けられていた、盗賊たちのねっとりとした視線とは違う。 この男の目は、まるで珍しい獲物か、あるいは『面白いおもちゃ』を見つけた子供のように輝いている。
私は、彼に包み込まれたままの自分の手を、そっと引き抜いた。 冷え切っていた指先に、彼の体温が残っている。
「……冗談はおやめください」
私は努めて冷静に、声を震わせないように意識して答えた。
「私は魔力のない、家を追放された身です。持参金もありませんし、後ろ盾もありません。あなたのような高名な傭兵団の長が、妻に迎えるメリットなど何一つありませんわ」
私の言葉に、ヴォルフガングは面白そうに眉を上げた。
「メリット? そんなもん、俺が気に入ったかどうかが全てだ。それに、お前はさっき、俺たちの戦い方を見て説教を垂れただろう?」
「……説教ではありません。戦術的な指摘です」
「それがいいんだよ。俺の部下たちは、腕っぷしは強いが頭の方はからっきしだ。『右へ行け』と言えば右へ突っ込むが、なぜ右なのかを考える奴がいねぇ。お前みたいな、戦場の全体図が見えている奴が必要なんだ」
彼は私の肩に、ドンと重たい手を置いた。 鎧越しではない、生身の手の重み。
「それに、度胸がある。武器も持たずに盗賊に立ち向かい、俺を前にしても引かねぇ。そんな女、そうそういねぇぞ」
褒められているのだろうか。 私は小さく溜息をついた。
確かに、今の私には行き場がない。 このまま雪原に放り出されれば、凍死するか、また別の盗賊に襲われるのがオチだ。 彼の手を取るのは、生存戦略として最も合理的だと言える。
けれど、『嫁』というのは承服しかねる。 私はフェルディナンドとの一件で、男という生き物に心底幻滅していた。 愛だの恋だの、そんな不確かな感情で人生を左右されるのはもう御免だ。 私が求めているのは、対等な『契約』と、確かな『報酬』のみ。
「ヴォルフガング様。提案があります」
私は彼を見上げ、毅然と言い放った。
「あなたの傭兵団に、私を雇ってください。ただし、嫁としてではありません。『軍師』兼『事務官』としてです」
周囲の傭兵たちが、ざわめいた。 女が、しかも貴族の令嬢が、自分たちの指揮官になると言ったのだ。彼らにとっては冗談にしか聞こえないだろう。 だが、ヴォルフガングだけは、真剣な眼差しで私を見ていた。
「軍師、か。……できるのか?」
「できます。私は幼い頃から、父の書斎にある兵法書をすべて暗記しています。領地の警備隊の配置や、兵站の管理も手伝ってきました。先ほどのあなたの部下の動きを見て、連携の甘さと装備の欠陥を見抜いたのは、まぐれではありません」
私は雪の上に転がる盗賊の死体を指さした。
「彼らは烏合の衆でしたが、もし統率された正規軍相手なら、あなたの部下にも被害が出ていたでしょう。特に、右翼の展開の遅れは致命的です。雪原での機動力を軽視しすぎです」
ヴォルフガングは顎を撫でながら、私の言葉を吟味しているようだ。
「それに、事務官としてもお役に立てます。傭兵団という組織を運営するには、膨大な金銭管理が必要なはずです。武器の調達、食料の補給、報酬の配分……それらを全て、あなたが一人でやっているのですか?」
「……いや、まぁ、なんとなくな」
ヴォルフガングが視線を逸らした。 図星だ。 豪快な武人に見える彼だが、おそらく細かい計算や事務作業は苦手なのだろう。 鎧の修繕費や食費で、どんぶり勘定をしている姿が目に浮かぶ。
「契約しましょう、ヴォルフガング様。私があなたの『頭脳』となり、『金庫番』となります。その代わり、私に衣食住の保証と、正当な報酬をください。そして――」
私は一瞬言葉を切り、彼を睨みつけた。
「私の体に、指一本触れないこと。これが条件です」
あたりに沈黙が落ちた。 雪の降る音だけが聞こえる。 部下たちが、恐る恐る団長の顔色を窺っている。天下の『剣聖』に対して、ここまで不敬な条件を突きつけた人間など、今までいなかったに違いない。
ヴォルフガングは、ぽかんと口を開け、それから――。
「ぶっ……くくくっ! アーッハッハッハッハ!!」
腹を抱えて、豪快に笑い出した。 空気が震えるほどの大声だ。
「いいぞ! 最高だ! 気に入った! 指一本触れるな、か。俺も随分と舐められたもんだが、そこまで言うなら実力で認めさせてやるよ」
彼はニヤリと笑い、私の前に右手を差し出した。
「交渉成立だ、エリス。今日からお前は『鉄の牙』の軍師だ。俺たちの命とお金、全部お前に預ける」
私はため息をつきながら、彼の手を握り返した。 ゴツゴツとした、温かい手。 これが、私と『剣聖』との、最初の契約だった。
◇
契約が成立すると、ヴォルフガングは手際よく指示を出し始めた。 部下たちに盗賊の死体から金目のものを剥ぎ取らせ(それも重要な収入源なのだそうだ)、私の荷物を馬に積ませる。 私の乗ってきた馬車は車軸が折れかけていたため、放棄することになった。
「俺の後ろに乗れ」
ヴォルフガングはそう言って、私を軽々と抱え上げ、自身の愛馬である巨大な黒馬の背に乗せた。 高い。 普段乗る馬車からの視点とはまるで違う。 彼の背中は広く、鋼鉄の鎧越しでもその逞しさが伝わってくる。
「舌を噛むなよ。飛ばすぞ」
彼が手綱を操ると、黒馬は雪を蹴立てて走り出した。 風が顔を叩く。 寒いけれど、彼の背中が風除けになってくれているおかげで、凍えることはなかった。
移動中、私は彼の背中にしがみつきながら、いくつか質問をした。
「ヴォルフガング様、あなたの傭兵団は、今はどこを拠点に?」 「様付けはやめろ。ヴォルフでいい。拠点はここから北へ半日ほど行った、古い砦跡だ。国境警備の放棄された砦を、国から安く借り上げている」 「人数は?」 「戦闘員が約三百。非戦闘員を含めれば四百ってところか」
四百人。 思ったより大所帯だ。 それだけの人数を養うには、相当な維持費がかかるはずだ。
「主な収入源は?」 「魔物討伐、商隊の護衛、たまに国からの戦争の助っ人だな。最近は魔物の出現が増えてるから、仕事には困らねぇが……」
ヴォルフガングは言葉を濁した。
「……金が貯まらないんだよなぁ。なんでだか知らねぇが、稼いでも稼いでも、右から左へ消えていく」
私は心の中で「やっぱり」と呟いた。 彼のような豪快なタイプは、入ってくる金は多いが、出る金も多い。 武器の手入れ、怪我人の治療費、食費、酒代。 おそらく、何も考えずに使っているのだろう。
「帳簿はつけていますか?」 「あ? 帳簿? なんだそれは。金の出入りなんて、金庫の中身を見りゃわかるだろうが」
――頭が痛い。 この男、まさか『どんぶり勘定』以前のレベルなのか? 金庫にある金が全財産で、無くなったら稼げばいいと思っているタイプだ。 四百人の命を預かるリーダーとして、あまりに無責任すぎる。
「到着したら、すぐに全ての帳票類を見せていただきます。それと、倉庫の棚卸しも行います」 「お、おう……手厳しいな、新入り軍師様は」
ヴォルフガングは苦笑したが、私は笑えなかった。 これは私の生存に関わる問題だ。 この傭兵団が破綻すれば、私も路頭に迷うことになるのだから。
やがて、吹雪が止み、雲の切れ間から青白い月が顔を覗かせた頃。 前方の小高い丘の上に、石造りの古びた砦が見えてきた。 崩れかけた城壁。 補修された跡が痛々しい塔。 お世辞にも立派とは言えないが、質実剛健な佇まいは、いかにも『鉄の牙』の拠点らしい。
「着いたぞ。あれが俺たちの城だ」
ヴォルフガングの声には、誇らしげな響きがあった。 門番が私たちに気づき、慌てて重そうな木の扉を開ける。
「お帰りなさい、団長! ……って、その前に乗っけてる女の人は?」 「新入りだ。今日からウチの軍師様になる。丁重に扱えよ」
門番たちが驚愕の表情で私を見る中、私たちは砦の中へと足を踏み入れた。
――そして、そこで私を待っていたのは、想像を絶する『地獄』だった。
◇
砦の中に入った瞬間、鼻を突いたのは、強烈な『異臭』だった。 汗と、油と、酒と、腐った何かが混じり合ったような、表現し難い悪臭。 私は思わず袖で口元を覆った。
「……なんですか、このにおいは」 「ん? 男所帯なんてこんなもんだろ」
ヴォルフガングは気にした様子もなく、馬を降りる。 私も彼の手を借りて地面に降り立ったが、足元の感触に違和感を覚えた。 雪ではない。 何か、ぬるりとした泥のようなものが、地面を覆っている。
よく見ると、それは泥ではなかった。 食べ残し、排泄物、汚水、ゴミ……それらが雪解け水と混ざり合い、ヘドロとなって中庭を埋め尽くしていたのだ。
「ひっ……!」
私は悲鳴を上げそうになるのを、必死で堪えた。 不衛生だ。あまりにも不衛生すぎる。 王都の下町でさえ、もう少しマシだ。 こんな環境で生活していたら、疫病が発生するのは時間の問題だ。
「おい、野郎ども! 帰ったぞ! 宴会だ!」
ヴォルフガングが大声を上げると、砦のあちこちから薄汚い格好の傭兵たちがわらわらと出てきた。 彼らは手に手に酒瓶や骨つき肉を持ち、すでに出来上がっている者もいる。
「団長、お帰りなさい!」 「今日は大漁でしたか!?」 「おっ、いい女連れてるじゃねぇか! ついに団長も嫁をもらったか!」
彼らは私を見ると、下卑た視線で舐め回すように見てきた。 口笛を吹く者、卑猥な言葉を投げかける者。 ヴォルフガングは彼らを制することなく、ガハハと笑っている。
「おう、嫁……じゃねぇ、軍師だ。エリスだ。仲良くしてやれよ」
軍師、という紹介に、彼らは一瞬キョトンとし、すぐに爆笑した。
「軍師ぃ? この嬢ちゃんがか?」 「ベッドの上での作戦指揮なら歓迎だぜぇ!」 「おいおい、団長も冗談がキツイぜ。こんな細腕の女に何ができるってんだ」
嘲笑と侮蔑の嵐。 予想はしていた。力こそ正義の傭兵団において、魔力もなく、剣も握れない女など、足手まとい以外の何物でもない。 だが、今の私にとって、彼らの嘲笑などどうでもよかった。 それよりも許せないのは――この環境だ。
「……ヴォルフガング様」
私は低い声で彼を呼んだ。
「あ?」
「これは、どういうことですか?」
私は中庭の隅に山積みになったゴミの山を指さした。 そこには、食い散らかした骨や腐った野菜だけでなく、排泄物の入った桶まで無造作に放置されている。ハエがたかり、ネズミが走り回っている。
「どういうことって……ゴミ捨て場だが?」 「なぜ居住区の真ん中にゴミ捨て場があるのですか!? しかも、あれは排泄物ですよね? なぜ処理をしていないのですか!?」 「いや、冬だし凍ってるから大丈夫だろ……」 「大丈夫なわけありません! 春になって溶けたらどうするつもりですか!? 地下水に染み込んで、井戸水が汚染されますよ! コレラや赤痢が発生したら、部隊ごと全滅です!」
私の剣幕に、ヴォルフガングは少し怯んだように後ずさった。 周囲の傭兵たちも、突然キレた私に呆気にとられている。
「そ、それに、男所帯で手が回らねぇんだよ。掃除なんて女の仕事だろ?」
誰かがボソッと言ったその言葉が、私の導火線に火をつけた。
「女の仕事? 笑わせないでください。これは『軍隊』としての基本です!」
私は一歩前に踏み出した。雪と汚泥が跳ねるのも構わずに。
「いいですか、よくお聞きなさい! 戦闘における死因の第一位を知っていますか? 敵の剣ではありません。病気です! 不衛生な環境による感染症、腐った食事による食中毒、不潔な傷口からの破傷風! あなたたちは、敵と戦う前に、自分たちの出したゴミと排泄物に殺されるつもりですか!?」
私の声は、砦の中庭によく響いた。 傭兵たちはポカンと口を開け、誰一人として言い返せない。 ヴォルフガングでさえ、目を白黒させている。
「……そ、そこまで言うこたぁねぇだろ……」
「言います! 私が軍師として契約した以上、あなたたちの命は私の管理下にあります。無駄死には許しません!」
私は彼らを睨みつけ、宣言した。
「今からこの砦の『大掃除』を始めます! 全員、武器を置いて掃除用具を持ちなさい! ゴミの分別、汚物の埋め立て、床磨き、煮沸消毒! 今日中に終わらせなければ、晩ご飯は抜きです!」
「はぁ!?」
全員の声がハモった。 最強の傭兵団『鉄の牙』が、たった一人の令嬢に掃除を命じられる。 前代未聞の事態だった。
「ふざけんな! 俺たちは戦士だぞ! 掃除夫じゃねぇ!」 「そうだそうだ! 女の指図なんか受けられるか!」
反発の声が上がる。 当然だ。彼らはプライドの高い荒くれ者たちだ。 一触即発の空気。 誰かが剣に手をかけた、その時だった。
「……やれ」
低く、地を這うような声が響いた。 ヴォルフガングだ。 彼は腕を組み、面白そうに私を見ていたかと思うと、部下たちに向かって凄んだ。
「聞こえなかったか? 軍師様の命令だ。つべこべ言わずに掃除しろ。……俺の女に逆らう奴は、俺が叩き斬るぞ」
黄金の瞳が、ギラリと光る。 その本気の殺気に、傭兵たちは「ヒッ」と息を呑んだ。 団長の絶対命令。これには逆らえない。
「ち、ちくしょー! やりゃいいんだろ、やりゃ!」 「おい箒持ってこい!」 「バケツの水汲んでくるぞ!」
彼らは渋々ながらも動き出した。 その背中を見送りながら、私はふうっと息を吐いた。 どうやら、第一関門は突破できたようだ。
「……すげぇな、お前」
ヴォルフガングが感心したように呟いた。
「あいつらを口先だけで動かすとはな。やっぱりお前を拾って正解だったわ」 「まだ終わっていませんよ、団長」
私は彼に向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「次は『帳簿』です。あなたの部屋にある金庫の中身と、これまでの支出記録を全て出してください。……さっきの様子だと、相当ひどいことになっていそうですからね」
ヴォルフガングの顔が引きつった。 剣を向けられても笑っていた男が、今は借金取りに追われる小市民のような顔をしている。
「あー……それはまた後で……」 「今すぐです」
私は逃さなかった。 こうして、私の傭兵団での生活は幕を開けた。 剣と魔法の世界で、私が武器にするのは『掃除道具』と『計算機』。 華やかなドレスも、煌びやかな舞踏会もない。 あるのは泥と汗と、男たちの怒号だけ。
けれど、不思議と嫌ではなかった。 飾られただけの虚構の世界よりも、この泥臭い現実の方が、私には合っている気がしたからだ。
――見ていなさい、フェルディナンド。 あなたが捨てた私が、この野良犬たちをどう変えていくか。 そして、いつか必ず、あなたたちを見返してやる。
私は汚れたスカートの裾を払い、前を見据えた。 ここからが、私の本当の戦いだ。
◇
その日の夜。 大掃除を終え、疲れ果てた傭兵たちの前に出されたのは、いつもの硬くて酸っぱい黒パンと、具のない薄いスープ……ではなかった。
大鍋から立ち上る、食欲をそそる濃厚な香り。 ニンニクと香草、そして肉の脂が溶け込んだ、温かいシチューのようなスープ。 そして、カチカチだった黒パンは、スープを吸って柔らかく煮込まれ、美味なる『パネード(パン粥)』へと変貌を遂げていた。
「な、なんだこれ……うめぇ!」 「黒パンが……柔らかい!? しかも味が染みてて最高だ!」 「おかわり! おかわりくれぇ!」
食堂に歓声が響く。 涙を流してかき込む者までいる。 私がやったことは単純だ。 硬くてそのままでは食べられない安い黒パンを、野菜屑や肉の端切れと一緒に長時間煮込み、塩とハーブで味を整えただけ。 貴族の家では『貧民の食事』と見向きもされない料理だが、素材の味を活かせば、これほどのご馳走になる。
何より、温かい食事は士気を高める。 冷え切った体と心を溶かす、一番の薬だ。
「……悪くねぇな」
ヴォルフガングもまた、大皿に盛られたパネードを豪快に平らげ、満足げに腹をさすっていた。
「エリス、お前の勝ちだ。掃除もメシも、文句のつけようがねぇ。……これからは、お前の言うことを聞くよ」
彼はニカッと笑い、私にジョッキを掲げた。 周囲の傭兵たちも、次々と私に杯を向ける。
「軍師様に乾杯!」 「うめぇメシをありがとうな!」 「次は何を作ってくれるんだ!?」
そこにはもう、侮蔑の色はなかった。 あるのは、胃袋を掴まれた男たちの、単純明快な好意と信頼だけ。
私は少しだけ照れくさくなって、視線を逸らした。 悪くない。 この単純で、乱暴で、けれど温かい場所は、意外と悪くないかもしれない。
窓の外では、まだ雪が降っている。 けれど、砦の中は熱気と笑い声に満ちていた。
私の新しい人生が、ここから始まる。 まずは、このマイナスからのスタートを、どうプラスに変えていくか。 腕が鳴るというものだ。
――だが、私はまだ知らなかった。 この砦の財政状況が、私の予想を遥かに超える『壊滅的』な状態であることを。 翌日、ヴォルフガングから渡された金庫の鍵を開けた私は、その中身を見て絶句することになる。
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